紙の本
心の奥深くに横たわるような一書
2021/04/22 21:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『私の人生のすべてのことは、ひとつとして意味のなかったことはなかった』・・入院を経験した著者が言い放ったこの言葉。本書の数多のエピソードを纏め上げる総括として意味付けられていると言えます。『私の~』となっていますが、これは著者だけに当て嵌まるものではありません。
本書の内容は多岐に亘っていて、どれも有難い内容でした。人生に関する参考書を読んだ感覚を味わえた気がします。
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「ひとつとして意味のなかったことはなかった」と自らの人生を振り返り、ときにはユーモア交えて語る著者の生き上手ぶりに感銘を受けた。
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遠藤周作のエッセイ。
ホメオパシーが肯定的に語られているので注意。
大きなお世話をする人を善魔と名付けている一方で、
生きざまという言葉はないと怒っている。
遠藤は自分の知らないところで言葉がつくられるのが嫌いらしい。
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読了。
内容は遠藤周作らしい本。生きるとはこういうことか、生きているとはこういうことなのだ。死ぬとはこういうことなのだと、ユーモアを交えながら語られる。
熱心なクリスチャンではないといいながら、どこか彼の考え方は宗教的なところもあり、深く心に残る。
実はこの本は20年以上前に読みながら、もう一度読みたいと思ったものの、タイトルも内容も忘れてしまい、ただ「偶然と加護」「同時性」という言葉だけを頼りに遠藤氏の本を隅から隅まで読み漁ってやっと辿り着いた本。
おかげで、今まで知らなかった遠藤氏の本もたくさん読むこととなった。
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「善魔」という言葉が気になって手にとった。
死と生に対して、とても考えさせられる本。
善魔は悪魔よりもタチが悪い。
善魔とならないよう気をつけないと。
そして、書かれた時代背景。
書かれた時代は心療内科が出来始めた時期だったのですね。
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遠藤周作は小説を読んできた。
エッセイが小説ではない文章がこんなにも心地良いとは思わなかった。
遠藤さんの小説は独特の表現と展開する風景がゾクゾクとする。小説の楽しみの真髄たるものがあるが、こちらのようなエッセイでは違う角度から教えて下さることばかりだ。
これはこう思わないかな?こうしてみると良いよ。
こんな事があったよ。こう感じたんだよ。
この人のこれが好きなんだ。
人の感想や意見なんて読んでも面白くない、そう思っていた私は幼かった…
感想でも意見でも、書き手の伝え方によっては本当に心に染みて、もっと知りたいと思ったり、血肉になっていくと実感した。
著者のキリスト教との関わり、キリスト教を知っているから故の仏教との違いも、嫌な感じがしないのは遠藤周作の言葉だからなんだと思う。
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タイトルを見て、なかなか手に取ることができなかった1冊です。主に1980年代に遠藤周作が新聞や雑誌に寄稿したエッセイ等を1冊にしたものです。読み始めると、狐狸庵先生らしくユーモラスにおどけて書かれたところもあれば、彼のあたたかいまなざしを感じることができるところもあります。
遠藤周作自身が書いたあとがきは1991年1月。
単行本が発行されたのは平成3年(1991年)3月。
文庫は1994年4月に第1刷が発行されています。
カバーは丹阿弥丹波子。ネットで検索したところ、銅版画を描かれている方のようです。白黒の細やかな絵が本作品とマッチしています。
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死について深く語る序盤、身近な人も含め死を意識してしまう。その後は生上手な面が台頭する展開に。遠藤氏は大きな病と戦っている経験から常に死を意識しながら生き急ぐあまりなんにでも興味を持って取り組まれた方だったのだろうと解釈する。冒頭、読者に引かれるような言葉をわざと持ってきて実は興味深いことをお教えくださる文体も好み。
作者の積極性ある深い生き方を見習いたい。
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延命医学に対する疑問は共感できる。
ただ、自分が当事者になったとき、特に延命対象が自分自身ではなく、親や兄弟、子供が対象になったとき、「延命不要」と言えるか…。私は「命がある」ということに拘り、そこに望みを見出だしてしまうと思う。
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随時集は短文の集まりでも、その作家なり人となりがにじみでるのだけれど、この集はちゃんと人生論になって、上手く一冊の本にまとめられている。作家があちらこちらにお書きになるとき、そうしようとてその意識がおありだったのかも。
「老年というのはふしぎなもので若い折の肉体や壮年時代の知性はたしかにおとろえていくが、ある種の触覚・感覚はとぎすまされていく。そのとぎすまされていく間隔をシュタイナーは次なる世界への媒介感覚といった。」
氏60代ころの文だけど、わたしの年齢でちょうどいい、よくわかる。
としをとるほど見えてくる、もう一つの世界への旅立ちの準備。
「自分の救いは自分のなかにある」
「余白のなかの完成」
「生活の挫折は人生のプラス」
「よく学び よく遊ぶ」
「すべてのものには時季がある」
目次を並べればなるほど、ごもっとも、なにしろ文章がうまいから。
氏ほど病に苦しまず、世間にも知られていないけど、この心境は共感できる。
「死ぬときは死ぬがよし(良寛)」の言葉がお好きだそう。
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遠藤周作という人の魅力を知れるエッセイ集。新聞や雑誌に寄稿したエッセイが収録されている。
キリスト教徒だから聖書のことばとかがたくさん出ているのかと思っていたら、仏教も学んでいて、むしろお坊さんの名言のほうがたくさん載っている。
お茶に、将棋にと多趣味で交友関係も広くて、通算して3年の辛い入院生活も「無駄ではなかった、役に立った」と言い切る。
それでいて、押しつけがましい感じもなく、やさしさがにじみ出る文章。
今読んでも時代を感じさせないやわらかな言葉が心にすっと届く、そんな一冊。
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愛の第一原則は「捨てぬこと」です。
人生が愉快で楽しいなら、人生には愛はいりません。
人生が辛くみにくいからこそ、人生を捨てずにこれを生きようとするのが人生への愛です。