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読んだ作品も多かったが、江戸時代、遭難した漁師が日本語学校の教師としてロシアで暮らす様子を描いた「ペテルブルグの漂民」、なぜか古びた女雛に特別の愛着を示す少女が不思議な「女雛」、イギリスでの行楽を楽し気に描いた表題作「緑色のバス」、学生時代に出会った、ドガの画の女に似ているという喫茶店で働く娘と、その回りにいた人間を思い出す「ドビン嬢」、終戦間もない時期に銀座の楽器店で出会った、サロオヤンをわれわれの誇りと言うアルメニア人兵士とのやり取りを描く「エツグ・カップ」、井伏鱒二など先輩、友人との東北旅行の思い出を記す「片栗の花」、これらは初めて読んだ。
アンソロジーにも良く選ばれる、書痴の恐ろしさを描いた「バルセロナの書盗」などの有名な作品を始め、ミステリー色の強いものや歴史もの、大寺さんものなど、良く言えばバラエティーに富んだ収録作品が並んでおり、小沼作品が好きな読者にとってはお買い得な一冊。