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『環境問題の基本のキホン――物質とエネルギー』(志村史夫、ちくまプリマー新書、2009年)
本書は「環境問題の基本」と題うっていますが、たとえば温暖化のメカニズムやオゾン層破壊などの環境問題の解説ではなく、実際は化学や物理の入門書といえます。
電子とは何か、電池とは何か、など。最後のほうに、太陽光発電や風力発電、原子力発電などの「再生可能エネルギー」の解説があります。図や化学反応式などの式もわかりやすいです。
高校生向けにかかれたものといえますが、大学生で化学や物理を学んでこなかった人にもいいかもしれません。
(2009年3月30日)
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前半は、環境問題を考える上で最低限必要な物理学的・化学的知識を記してあり、後半では、前半で記したエネルギーの分類に応じて、各エネルギーを考察している。
前半部分は、自然生態系や、エネルギー保存則などを分かりやすく説明してくれていて、「物理?意味不明」な人にはとても分かりやすい。後半部分は、各エネルギーの概要を説明してくれている。例えば、核エネルギーでは簡単な概要から、利点・問題点を触れている。
全般的に、すっきりとし、例も多く、読みやすいものである。ただ、がっつりしたものを読みたい!もしくは、ある程度勉強している人には、読みごたえはあまりないと思う。
なので、環境問題の導入として読み、巻末の参考文献に移っていくのがいいのではないだろうか??
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請求記号:501シ
資料番号:020198941
装丁:クラフト・エヴィング商會
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物質やエネルギー,さらにエントロピーについて,やさしく解説しようとする著者の思いはよく伝わる。イラストが手書きで,もしやと思ったら,やはり著者自身が描いたもの。意欲的なこともよくわかる。
ただ,その内容は本当に分かりやすいのか。また,環境問題を考える助けになるものなのか。そこのところは疑問に感じる。たとえば,物質について,この本に書かれていることを理解すると,環境問題をどのように科学的に捉えることができるのか。環境問題の基本のキホンというならば,そこが重要だと思うのだが,極端な言い方をすれば,科学の基本についての解説は,著者の自己満足に終わっているようにも思う。
環境問題については,たとえば,地球温暖化の原因はCO2ではないというように,著者は批判的な立場である。マスコミで取り上げられることは,科学的には間違っているというのが,著者の思いであるようだ。しかし,その点を科学的に解説はしているとは思えない。何だか中途半端で気持ちが悪い。
環境問題に対して,過剰と思える反応も多いだろう。しかし,著者の主張は,その対極にあるようで,同様に信じがたいものがある。科学的な解説になっていないので,何とも批判のしようもない。このような内容が,若者を対象にした新書のシリーズであるちくまプリマー新書に入っているのが不思議なくらいだ。ただ,ちくまプリマー新書には,池田清彦「環境問題のウソ」もあり,編集部の考え方なのかとも思える。わたしにとっては,考え方が違うからこそ意味があるが,これらの本しか読まない若者がいたらと心配になる。環境問題について考える上で,最初に読むべき本とは決して思わない。
最後に,具体的な批判を1つだけ。原子力発電については,かつてのわたしは絶対反対であった。しかし,反対運動のある中でも,徐々に発電量が増えていった。それが実現できたのは,賛成派が多数だったからだと考えるしかない。その結果,原子力発電はなくてはならないものになった。その現実は受け入れなくてはならない。
ただ,著者の次の記述には一言言いたくなる。
「先にも述べました原子力発電の事故の究極の原因はいずれも,この自己制御機能の不備でした。原子力発電自体は基本的には安全なのです。」(P.143)
何が安全なのか。これで安全と言い切るところが問題なのではないか。制御機能に問題があり,そのために事故が起こるなら,そのシステムは安全と言えるのだろうか。最終的には,人が操作するとしたら,人によるミスだって考慮したシステムでなくてはならない。
何も100%を求めているわけではない。100%ではないことを自覚することと,それをしっかりと伝えた上で運用することが大切なのではないか。事故を隠すような状況では,最低限の安全性ですら保障されていない。そのようにわたしは考える。
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「環境問題の基本のキホン 物質とエネルギー」
というタイトル通りの内容でした。
「環境問題の基本」そのものではなく、それを考える上で必要なキホン(物質とエネルギー)を解説した本です。
キホン、とは言っても、元素記号や同位体、カロリーやジュールといった言葉が出て来ます。中学や高校で科学や物理がさっぱり…という人にはかなり難しい内容かと思います。
とはいえ、全体を流し読みするだけでも、環境問題を科学的に考えることの大切さは伝わってきます。
福島の原発事故前の本だということを踏まえた上で、原子力利用についての項目も読みました。危険性や廃棄物処理の問題点をあげつつも、科学者として高速増殖炉の完成を願う姿勢には、なんとも複雑な気持ちになりました。
科学的な根拠やデータが記載され無いままの筆者の意見もちらほらあったので、そこは少し気になりました。入門書ということであえて数値データや科学的な詳細な説明をのせず、分かりやすさを狙ったのかもしれませんが。
科学的な思考も大切ですが、本能的に人間が原子力・放射能を恐れる気持ち、それを安易に切り捨ててしまって良いものなのか…。
これをきっかけに他の環境関連の本も読んでみたい。
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志村文夫氏の本は何冊か読んでおり、特に『こわくない物理学』には非常に感銘を受けた。
今回、『環境問題の基本のキホン』を読んだのは、著者が志村氏だったからという理由が大きい。
目から鱗が落ちたのは次の記述だ。
「温室効果のおよそ90%は水蒸気の貢献です。(中略)『地球温暖化』の元凶にされている二酸化炭素の比熱は水の比熱の5分の1です。しかも、大気中に占める二酸化炭素の割合は、水蒸気の100分の1ほどの0.035%です。このような二酸化炭素の増加が『地球温暖化』の主因になり得るのでしょうか。私は、さまざまな科学的見地からも歴史的事実からも断じてあり得ないと思います」
温暖化対策として世界的に二酸化炭素削減の流れがあるが、果たして志村氏の言っていることが正しいのか、やはり二酸化炭素が原因なのか、もう少し勉強しよう。
そして、志村氏が原発に強い期待を持ち、安全を謳っていることには、がっかりした。
「原子力発電自体は基本的に安全なのです。また、原子力発電は化石燃料の燃焼時に不可避的に排出される二酸化炭素や窒素化合物のような大気汚染ガスの排出を伴いません」
また、原子力規制委員会からの勧告を受けて、廃炉の方向に向かうかどうかが注目される「高速増殖炉もんじゅ」に関しても以下の記述がある。
「日本が『国家プロジェクト』として開発し、福井県敦賀に設置された高速増殖炉『もんじゅ』がプルトニウム燃料の核分裂の連鎖反応が続く状態、“臨海”に達したのは1994年の4月のことでした。(中略)原子力委員会が高速増殖炉懇談会を設置してから30年間、関係者が待ちわびていた瞬間でした。この間、純粋に科学・技術的な挑戦のほかに、社会的『雑音』に対しても筆舌に尽くせぬ努力を続けて来たことは疑う余地がありません」
2009年の出版された本だが、あまりにも期待を込めた文章である。
科学者ゆえに、原発や“夢の原子炉”と言われた「もんじゅ」に期待したい気持ちは分かるが、主観が入りすぎているように思う。
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身近にあるエネルギーがどういう仕組みか、みたいなことが書いてある。文明の発達とエネルギーの消費が比例するのは、そうだよなぁと思った。だからこそ、これからの社会でどうしたらいいのか、考えるきっかけになった。