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この本を読んだきっかけは、「森見登美彦」の名に惹かれたからです。 きっかけは、それだけでした。
私は、「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」の幻想を彼に求めていました。早くあの京都の夜を、またあなたの幻想と共に見せて欲しい。あなたの幻想なしでは、もう私は現実を直視できない。その想いから、先日バイト先から振り込まれた金を、大学のATMから手に取り、書店へ向かいました。
1980円の本を手に取り、ワクワクした気持ちで読み初めました。
読み始めてから30ページ、もはや中盤に差し掛かるまで「つまらない」「停滞している」「もう学生ではない彼に、あの軽快で軽薄、テンポの良さを求めるのは酷かもしれない」 そうとまでも思いました。
しかし、それは見当違いも甚だしかった。確かに、求めていたテンポの良さや、胡乱な文体、妙ちきりんな自信から詭弁を振りかざす登場人物はない。
私が先に述べた過去作を読んでいたのは中学生の頃で、コレが芯を食っている批評なのかは担保を致しかねる。しかし、私はこの文章に惹かれていた。それが記憶の混濁と共に脳内で改竄され本の内容が薄まっていこうとも、私はコレが好きだった。
私は、森見登美彦の作品で読めていないものもある、「ペンギン・ハイウェイ」、「熱帯」・「太陽の塔」などなど、むしろ私は彼の何を知っているのだろう。私など、彼の織り成す京都の夜の幻想に焼かれた田舎者である。
その上で、その上でだ、彼について語らせてほしい。
彼の文体から失われたものと、新しく得たもの。
過去作。自由さから投影される、将来への無頓着さと現実への焦り、現在の怠惰へ忠実ながらも打ち込むものを探し、自己を確立しようと藻掻く姿は中学生の私の胸をうつものだった。
しかし、「シャーロック・ホームズの凱旋」からは昔のような古めかしく、煙に巻くような文体は見られない。見られるのは、作中に出る科学者、探偵のように現実を見つめた言葉だった。がっかりした。
ただ、ただ、待って欲しい。ここで戻らないで欲しい。
私はこの本に、ガッカリなどしていない!
そう叫んでいる私がいる。彼の夢想、幻想は形を変えていただけだった。どう足掻いても彼の夢想に魅了されている事を読み終えてから気がついた。
友達に読んで欲しい、みんなにも読んで欲しい!でも、この夢を他人に渡したくない。そう思う文章を毎回、森見登美彦は見せてくれる。読み終わってからしみじみおもった。
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待望のモリミーの新作は、摩訶不思議な“森見版ホームズ譚”でございます。
さぁ、どんな仕上がりになっていることやら・・とワクワクして本を開きました~。
舞台はヴィクトリア朝京都。
洛中洛外に名を轟かせた名探偵シャーロック・ホームズ。
その栄光が、ホームズ氏の次のようなつぶやきで砂上の楼閣のごとく崩れ去ります。
「どうもおかしいな。天から与えられた才能はどこへ消えた?」
さて、大スランプに陥ったホームズを、彼の友人であり“記録係”でもあるジョン・H・ワトソンは救う事ができるのでしょうか・・。
モリミーワールドをこよなく愛する私・・・基本的に星(★)は“評価”というより“好み”でつけていますし、ことさら森見氏に関しては“激甘”ですので、そこんとこヨロでやんすw。
と、お厳しそうな(?)シャーロキアンの皆さまからの予防線を張ったところでww・・いやぁ、ホームズin京都ですよ!で、意外と合うんだなこれが!(※個人・・というか個モリミーファンの意見です)。
ホームズは寺町通221Bに、ワトソンは下鴨界隈に暮らしていますし、京都警視庁(※京都府警ではなくて)に“スコットランドヤード”というルビがふってあったり、他にも鴨川(≒テムズ川)、宮殿(地理的に御所?)などと、強引なようで何気にしっくりくる世界の中で繰り広げられる、ちょいとトンチキな物語。
まぁ、言うたらワトソンがホームズのスランプ脱出の為に東奔西走する展開でして、一応洛西にある貴族の館での謎(その館にいくのに“嵐電”に乗っていくワトソンとモリアーティ教授というのがまたw)がキーにはなってはいるのですが、ミステリとはまた異なるのであしからず。
そして、ホームズの奇人っぷりや、モリミーワールドお馴染みの“詭弁論部”などといったお約束フレーズを楽しみつつ、あちこち迷走していく展開に喜んで振り回されながら読みました。
第5章からは「ロンドン」が舞台になって、「京都」との入れ子メタ構造という迷宮っぽい感じが、他の方のレビューでもありましたが『熱帯』のテイストを思わせますね。
この章ではちょっとダークな展開になるので、ここで書かれるホームズやワトソンの苦悩に森見氏の苦悩も重なっているのかな・・と思わせるものがありました。
そんな訳で、どう収集つけるのか心配になったものの、エピローグでは憑き物が落ちたようなほのぼのムードに着地するので、読後感は大文字山にピクニックに行ったような(?)爽やかさが残るので良き良きですな。
・・てな感じで、色んな要素が多すぎるせいか、私も何を描いているのかよくわからなくなってきましたが、とりま、モリミー×ホームズワールドをまるっと楽しませて頂いた次第です。
で、結局大切なことは「ワトソンなくしてホームズなし」ってこと!(テストに出ますよ~!)
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何とも言えない世界観。両方が好きだから読み進めるのに苦労しました。しかし、途中からは割とスラスラと読めて、最終話はかなり苦しめ。やっぱり好きすぎるとどちら側からもこれじゃないんだよな〜と苦手意識を持つのかな?
最後は綺麗に着地したので良かったです。
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大好きな森見さんの新作。
今回はヴィクトリア朝京都を舞台に、シャーロック・ホームズがスランプに陥り迷走するという内容。各章を読み進めていくうちに物語の雰囲気が変わっていき、第五章でやられます。
多くを語るとネタバレになってしまうので控えますが、この作品は森見さん流のコメディ・ファンタジー・ミステリー要素を全部盛りにしたような作品です。あえて、ホームズの迷走と掛けて、森見さんも迷走しているように描かれたのではないか…。とにかく、ファンとしてはとても楽しませてもらえた作品でした。
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(ネタバレしかないので注意)
森見作品がとてつもなく好きであり、シャーロック・ホームズもとてつもなく好きな人間だが、冒頭は正直「なんのこっちゃ」と思いつつ読んでいた。もちろん森見先生の書く文章そのものが好きなので、この言い回しが好きだとかこの比喩は最高にイカしているだとかそういう楽しみ方をしていた。冒頭ではホームズという要素への面白みを見出せていなかった。
「はいはいホームズが京都にいたらって設定ね」と軽い気持ちで読んでいたが、モリアーティ教授がスランプ仲間になったところで、いろんなホームズ物を見てきたけれど好きな展開だ、とそこから物語にのめり込んだ。モリアーティ教授が仲間になるというのが違和感を覚えるという場合もあるかもしれないが、私は好きな登場人物たちがわいわい楽しくやっている世界観が楽しくて仕方がなかった。
その中でも抜群にアイリーン・アドラーが魅力的だった。アイリーン・アドラーといえば妖艶で誰も暴くことができない女性として描かれているイメージだったが、この作品における彼女はとてつもなく可愛らしく、同時に力強く芯の通った女性として描かれている。底知れぬ謎に出会ってしまった彼女が狼狽える描写や、ホームズを失うことへの拒絶の描写は本当に愛らしく思った。彼女の物語をもっと読みたいと思うほどだった。
読みはじめたときから「この物語自体が作中における誰かが描いている物語なのだろう」と多少推測して読んでいたが、まだまだ森見節を理解できていないなと胸が躍っている。終盤はかなり慌ただしく展開していくが、その混乱に自分も参加している感覚になり、読み終わったときには心地よく疲れていた。
自分の目がおかしいのかもしれないが、京都の世界線とロンドンの世界線でなんとなくフォントなのか文字の大きさなのかが違っているように見える。書いていてかなり半信半疑なのだが、そういうわけでない場合はそれだけ世界観ががらりと変わっているのかもしれない。ロンドンのページはどことなく角ばった薄暗い雰囲気を感じ、突然別世界に迷い込んだ感覚があった。逆に京都のページは柔らかく明るい雰囲気を感じた。自分が物語にのめり込みすぎているのかもしれない。新鮮な感覚だった。
私事ではあるが、久しぶりにちゃんと活字を読んだので読み落としているところが多々あると思う。どこをとっても好きな文章表現しかないので、また改めてじっくり読み返したいと思う。いつも素敵な物語に出会わせてくださる森見先生には感謝しかない。
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どこかからか面白くなってくるはず…とひっぱった結果…サンクコストの概念をおさらいすることになりました。これは厳しい。森見さん、スランプ以降当たり外れ大きい
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いつもの感じで大変面白かったのですが、登場人物の名前が外人だと、だれがどの人なんだか迷ってしまいます。とりあえず一気に読んで安心した後、もう一度ゆっくり読むのがいいかも。
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しばしばパリの街に例えられてきた京都がまさかのシャーロック・ホームズの活躍?の場に。京都とロンドンの街並みが物語ではナチュラルにまぜこぜになってて楽しいったらない。ヴィクトリア朝京都、寺町通221B、この響きだけで期待は高まる。
登場人物が次から次へとスランプを訴えるのだけど、全員森見先生にみえて笑えるやら心配になるやら。なんかだんだん自分にも身に覚えがあるかんじになってきて「ちょっとそのグダグダの集まり混ぜてくんないかな」と声をかけたくなったり。
物語が進むにつれ謎は謎を呼び、物語が幾重にも重なって歪んで何度もひっくり返る。ストーリーの屋台骨がグラグラ揺れるのに不安を覚え、「もしや熱帯の続編に迷い込んだのでは」と錯覚しそうに。だんだん夜行のような不穏さも漂って、どうなるのかと思ったら凄まじい力技できれいに畳まれていった。まだキツネにつままれたような気分でこれを書いている。
一癖ある探偵小説なんて生易しいものではなく、魔訶不思議な怪作というほかない。
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ホームズはヴィクトリア朝京都寺町通221Bに住んでいます。
ワトソンの診療所は下鴨神社界隈です。
ホームズはスランプに陥っています。
そこへ、元舞台女優で探偵のアイリーン・アドラーや霊媒のリッチ・ボロウ夫人、モリアーティ教授などが現れます。
リッチ・ボロウ夫人が水晶玉で心霊現象を視ると少女が現れます。
それは12年前失踪したマスグレーヴ嬢でした。
心霊現象対×推理。
ウィリアム・マスグレーヴ家の秘密を伝えているという『竹取物語』。
ロバート・マスグレーヴの月ロケット計画。
<東の東の間>の秘密とは…。
書いていて、これでは読まれた方さっぱりわからないのではないかと思います。
読んでいて面白かったのですが、私は何をいっているのかわからない場面が多々ありました。
ホームズが好きな方にはちょっと変わったホームズ譚として面白く読めると思います。
また、京都の街並みやロンドンの街並みが好きな方にも楽しめると思います。
結局なんの話だったのか、私にはよくわかりませんでした。
わかったのは「ワトソンなくしてホームズなし」ということです。
あと、本の装丁のイラストがとてもいい雰囲気なので星5にしました。
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2024年4作目
圧倒的森見ワールドに誘われて、1冊持ち込みOKのブックカフェで読みきれなくて買ってしまった。本を閉店時間までに読み切れなかったのも初めてだが、結末気になる、、、!レポートが手につかない!と思ってレジに走ったのも初めてだった。
近々京都に行く予定があるのだが、そこでホームズの、ワトソンの、モリアーティの痕跡を探してしまいそうだ。
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読み始めると止まらない止まらない。
「熱帯」が最高傑作かと思いきや、それを上回る快作!
シャーロックホームズ、いや、森見ワールドにどっぷり浸れる至福な時間でした。
京都から始まり、「熱帯」で描かれた「今どの世界にいるの?」の錯覚を何度も体験。
シャーロックホームズ小説はなんとなくですが、カンバーバッチのドラマファンだったので、「こう来たか!」と登場人物の森見キャスティングも見事。
これなら世界中のシャーロックホームズ・ファンも納得のはず!
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Amazonの紹介より
「天から与えられた才能はどこへ消えた?」
舞台はヴィクトリア朝京都。
洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが……まさかの大スランプ!?
謎が謎を呼ぶ痛快無比な森見劇場、ついに開幕!
目次
プロローグ
第一章 ジェイムズ・モリアーティの彷徨
第二章 アイリーン・アドラーの挑戦
第三章 レイチェル・マスグレーヴの失踪
第四章 メアリ・モースタンの決意
第五章 シャーロック・ホームズの凱旋
エピローグ
まずこの作品を読む際は注意は必要です。
それは、世界観です。物語の舞台はヴィクトリア朝京都ということですが、
「なぜホームズが京都に住んでいる?」
「なぜ京都に時計塔が?」
といった疑問がわくのですが、そういった現実的なことは捨てて読んでください。当たり前のように京都の町を紹介しながら、ホームズが駆け巡ります。現実的に考えると、色んな矛盾が生じるのですが、そういった世界なんだということで、物語を楽しんでください。
ホームズが住んでる所は京都⁉︎というなんとも摩訶不思議な世界観でしたが、森見さんならではのテイストが上手い具合に調和されていて楽しめました。
シャーロック・ホームズの作品は、なんとなくしか知らず、作品自体は未読なのですが、(名探偵コナンで知識を得たぐらいです。)純粋に楽しめました。
森見さんが手がけるミステリーというと、結末があやふやといいましょうか、はっきりとした答えを示さないまま終わるのが印象的でしたので、今回はどうなのか正直不安でした。
読んでみると、ハッキリしていない部分はあるものの、それより優る壮大なストーリーさや驚き、面白さがあって、良かったです。
ホームズが登場するから、事件を解決するのかなと思いきや、スランプ状態。しかし出来事は発生するのですが、別の人が推理をするといった具合に、主役となるホームズが活躍していません。
いかにして、ホームズはスランプを脱出するのか?ミステリーというよりはアドベンチャーを読んでいるかのような印象でした。
次々と起きる出来事にどう立ち向かっていくのか?聞いたことのある登場人物が現れたりして、ずっとワクワク感がありました。
まさかここまで壮大な話になっていくとは驚きでした。気づいたら、色んな伏線を張っての後半だったので、構想が凄かったです。
構想といえば、京都の町を舞台にした設定も面白かったです。京都の土地や特色を生かしながら、物語に溶け込んでいて発想が面白かったです。
途中、実際のホームズ作品も登場したりするので、思わずwikiで調べました。そういった楽しみもできたので、色んな意味で遊び心があるなと思いました。
ホームズと京都。繋がることのない要素が、森見さんの手にかかると、こういう壮大なストーリーになるんだということで、今までの森見作品の中でも上位に入るくらい印象深く、面白さもありました。
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ホームズなのに京都が舞台っていうのもあるが何とも不思議な世界観のお話でした。
原作を知らないまま読んだので100%理解出来ていないだろうな思います。
ちょっと勿体なかったなと反省。
原作を読んでみようと思います!
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森見世界健在ー!詭弁だらけのホームズだー!って読み進めていったらファンタジーな超展開になって勢いのまま巻き込まれて終わった感
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名探偵コナンからしかホームズに関する知識を得ていない私でも楽しく読めた。京都とロンドンの街々の名称が飛び交いなんだかちぐはぐな世界観だけど森見先生にしか保てないバランスで面白おかしくストーリーが展開されている。森見登美彦濃度100%!