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大河ドラマ便乗商戦として書店に平積みになっていたのを見つけて購入。いや~、期待以上に面白かった! みやびな文語と京言葉と現代口語が入り乱れる文体に、最初は面食らったけど、読み進むうちにハマってきた。著者の阿岐有任という名前は性別不詳、見返しのプロフィール欄にも詳細は書いていないし、ググってもデータがほぼない。この小説は『源氏物語』同様、男には書けない気がするのでたぶん女性だろうが、いくつくらいの人なんだろう?
受領階級の女性として最強の勝ち組人生を送った大弐三位/藤原賢子のことはずっと以前からいくつかの歴史小説や解説書のたぐいで知ってはいたのだが、この小説が一番リアルに感じられて面白かった。賢子本人のエピソードは4章のうちの最終章、しかも他の章より分量的にはやや少ないくらいなのだが、初めの3章で斎院の女房(同じ受領階級)、公卿の正妻(藤原家の中でもトップクラス)、皇孫の女王(身分的にはさらに上だが政治的には本流から外れている)の人生を描き、彼女らの人生を第三者としてじっくり観察していた賢子が自らの意思で勝ち組人生を勝ち取っていく様子が鮮やかで胸がすく。きっと実際の賢子も、紫式部と藤原宣孝のいいとこ取りの娘だったのだろうな。
中毒性のある文体と扱っている時代・題材の面白さに惹かれて、同じ作者の旧作も取り寄せて読んでいるところ。表紙のデザインがダサいのがちょっと残念な気がするが、むしろ狙ってそうしているのかもしれない。