投稿元:
レビューを見る
額賀さん初の児童書。
コンクールで金賞を取るために、厳しい練習が続きギスギスしてしまった合唱部クラブ。
そして、ゆるっと自分のペースで楽しむ半地下合唱団。
どちらがいい悪いではなく、それぞれのスタイルを選べて認め合えるようになったらいいんだろうな。
でも、子どもに対しては、「目標に向かって仲間と全力で頑張る」という姿を求めてしまいがち。
みんながそうできる訳ではないことを、改めて考えさせられた。
投稿元:
レビューを見る
きっと娘がこれから経験していく世界。指導者で雰囲気や結果が大きく変わる頃。難しいけれど、頑張ってくれ、と思う。先生も生徒も。いわゆる「くすみカラー」というのは小学生でもまだまだ流行中らしい。選択肢が多い事が羨ましい。
投稿元:
レビューを見る
雰囲気がピリピリしている合唱クラブ。
指導者や先輩の言い方にトゲがあり、辛い思いをしている人がいる。
賞をとるには、上達するためには仕方がないことなのか?
自分がノーミスでも、先生は「リーダーなのだから、みんなのことを気にかけて。責任感を持って」という。
朔くんは、あんなにキレイなソプラノを歌えるのになぜ合唱クラブに入らないの?
歌うのが好きで才能のあるやつがみんな合唱クラブでスパルタ練習したいと思うわけではない。
今の合唱クラブは、「楽しく歌を歌う」ではなくて「怒られないように頑張る」だ。
いつも緊張感に包まれている。
「みんなで目標に向かって頑張ろう」という空気。
できない子に対して、誰かがものすごく怒っていたり、悪口を言ったり、ひどい言葉で傷つけたり。
楽しいはずのクラブ活動、部活動をきっかけに友人関係が壊れてしまった子、学校に行けなくなってしまった子もいるかも。
「みんな」にはいろんな形があって「頑張る」にもいろんな形がある。
自分の考える形を絶対だと思わず、相手の形を知ろうとしたり理解したり、受け入れようとすることが、
本当の意味で「みんなで頑張る」につながるのだと思う。
そこにこそ学びがあると思う。
課題図書になりそうなくらい良い本。
主人公は小学生。高学年だが、
中学校の部活にも同じことがたくさんあり、
中学生も共感できるはず。
朔くんがいい子。
話の途中にちょいちょい出てくる
魚住ミートのコロッケも
おにぎり庵のおにぎりも美味しそう。
投稿元:
レビューを見る
こんなことなかったかな?と反省させられる。楽しいが一番大事、は今ならわかる。一生懸命な小中学生に読んでほしい。
投稿元:
レビューを見る
楽しむこととがんばらないことは同じではない。
間違ってはいないけど正しくはなかった。
胸にスッとくる言葉がたくさんあった。
がんばることって、「頑張ってる自分」に誇りを持ったり、他の人より頑張ることで優越感を感じたりできるから、気づかないうちに暗い方へ向かっちゃう。特に合唱という1人ではできないものだと、「こんなに私は頑張ってるのに何でみんな頑張ってくれないの?」という気持ちになりがちだし、そう考えている自分が正しくも感じてしまう。
目標の達成にはある程度のしんどさは必要かもしれないけど、しんどくなることや周りを傷つけてまで行う頑張りは本当に嫌だよね。
投稿元:
レビューを見る
額賀さん初の児童書は「今年こそ金賞を」の重圧と厳しい練習で崩壊寸前の合唱クラブを描いた物語。
児童書と侮るなかれ、とても刺さった。
大人が読めば過去の体験を思い出すだろう。
現在、部活を頑張っている小中高生が読めば共感する事が多いと思う。
「好き・楽しい」から始めたものが、先輩部員や顧問の厳しい言葉で嫌いになっていく。
ピリピリとした雰囲気の中で合唱部員達が怯え葛藤する姿がリアルだ。
誰の為の何の為の部活なんだろうと首を傾げずにはいられなくなる。
心を壊してまで続ける部活に意味はない。
子供達の繊細な心に寄り添った一冊。
投稿元:
レビューを見る
主人公の真子は、ラベンダー色のランドセルを持っている6年生の背の高い女子。歌うことが好きで、合唱部の強豪校でアルトパートリーダーをしている。
コンクールの金賞を逃し、卒業する先輩たちに「次こそ金賞を!」と夢を託された新6年生。プレッシャー、うまくいかない焦り。上から押さえつけることで状況を打開しようとする、2年目の顧問、部長。当然、反発する部員もいるし、委縮してしまう部員もいる。歌はまとまらず、ますます部長は焦るし、雰囲気は最悪。悪循環のなかにある。
部長のやり方に違和感を覚えても、真子は何も言えず。自分には何もできないと思ったり、もっと部の雰囲気を悪くしてはいけないと思ったり。対立することを恐れている。何より、自分自身の抱える気持ちを言葉にすることができない。
気がつけば、歌うことが楽しくなくなってしまう。そんな中、アルトパートの5年生・優里が不登校になる。優里の幼馴染、朔に出会う。朔の両親が経営するバーで、商店街の人たちがいる小さな半地下合唱団に誘われる。
合唱団は、トランスジェンダーではないけれど制服のスカートをはきたくない女子中学生や同性カップルのおにぎり屋さんなどが、普通に登場し、日常に溶け込んでいて、新しい世代の小説なのだと感じた。
朔の美しいボーイソプラノと半地下合唱団での大人たちとの出会いが真子を成長させる。
半地下合唱団で和気藹々と歌うことは楽しい、一方で、真子は「きびしい練習をすること、きびしい指導をされること、それらを全部否定したら、わたしたちはきっと、ほしいものを何も手に入れられない。」ことに気がついている。合唱部が楽しくなくなってしまっても、練習には欠かさず出るような頑張っている子が言うと説得力がある。
「先生だって人間だもの。生まれたときから〈先生〉って特別な生き物だったんじゃなくって、真子ちゃんと同じ、ただの子どもの延長上にいるんだよ。」
保健室の南先生の言葉。真子はびっくりする。「大人は絶対で、賢くて間違えない。」そう思っていた自分の生真面目な子供時代と重なった。真子が、南先生にかぎらず、出会えてよかったと思えるような大人たちに会えてよかった。
歌を楽しむ合唱団と、コンクールを狙う合唱部。優劣をつけるものではない。どちらが正しいかということもない。いよいよ終盤になって、真子はコンクールで金賞を取りたいと猛進する部長に意見する。でも、否定はしない。でも、このままじゃ、合唱が嫌いになっちゃうと訴える。それぞれの〈正しさ〉が違うだけで、ぶつかり合ってる。ぶつかっても、離れなければ、絆は強くなる。遠慮して何も言えないよりずっといい。
半地下合唱団の活動がバレて、お母さんと真子が話す場面も泣ける。
こんな風に自分の思うことを言葉にできる小学生って稀有な存在なんじゃないか?と思う。
お母さんは、ステレオタイプに、学校の部活の方を頑張れって主張するけど、お父さんは思うようにやってみろって言ってくれる。良い家庭だと思った。
装丁のラベンダー畑で歌う真子と裏面の微笑む朔が爽やかで優しくて素敵だ。