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・あらすじ
1976年のアメリカ、ミズーリ州が舞台。
黒人差別が色濃くのこる田舎町で暮らす15歳のボーディ。
学校にも馴染めず、母親とも距離がありいつも一人で孤独に過ごしていた。
そんな中、町を牛耳るハルコム一族が工場長を務めるライク工業に新たに黒人の工場長が就任し、一家はボーディの隣に引っ越してくる。
一家にはボーディと同い年の男の子がおり、二人は徐々に共に過ごすようになる。
謎の隣人ホーク、ライク工業の黒人女性の失踪事件、過激な白人至上主義団体…一夏の少年の成長譚。
・感想
この手の回顧録的な作品めっちゃ好き…解説にもあったけどまさに私の大好きなロバートマキャモンの少年時代と同系統の話ですごく楽しんで読めた。し、ラストは泣きながら読んでた…。
既視感のある設定だから目新しい驚きとかは無いけど安定したこの「少年の成長譚」というテーマに求める要素はほぼほぼ入ってた。
夏、12−15歳の少年(16歳までいくと守備範囲外、あとできれば少年がいい。少女だと冒険的要素が少し減らされるイメージがある)、友情、危機的状況に立ち向かう、淡い恋、家族との絆、大事な人の喪失…
私が大好きな要素が詰まってた。
ボーディたちが危険な場所に向かっていくたびに「危ないからやめなさい!」って大人な自分は思いながらハラハラドキドキしながら読むんだけど、この「危ないからやめなさい」を振り切って突進する少年たちを見るのが好きだからこの手の作品が好きなんだろうな〜。
アレンエスケスの作品はこれが初めてで、解説を読んでボーディのその後を知って驚いた。
絶対に他の作品も読む。
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あの名作の3作品を読んだあとにこちら!
自伝的な小説かと思ってたら
違うようで、
でもあの、切ない劇的さは健在で。
解説に書いてあった通り
36章の最後の文章に尽きる!
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ボーディは田舎町で暮らす15歳の少年。父を亡くし母親と寂しい日々を送っている。高校に馴染めず、友達は一人もいない。静かすぎるその町で最近大事件が起きた。町最大の企業に勤める黒人女性が不審な失踪を遂げたのだ。捜査中の保安官が、ボーディが慕っている隣人のホークを訪ねてきた。女性はかつてホークの部下で、ふたりのあいだには噂があったという。思いがけない事件が、ボーディの日常に不穏な影を落とす――。現実に悩みながらも、少年は鮮やかに成長する。『償いの雪が降る』の著者による心震える青春ミステリ!
翻訳四作目。今回も良作。少年たちの一夏の冒険記かと思いきや、そうではありませんでした。
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実は私は、人種問題だの差別問題だのを扱った小説は、読まない。
楽しくないのだもの。
「差別はいけないことだと思いました」
「2度とあってはならないことだと思いました」
そんなギフンにかられないとならない感じ、とりあえずそう言っておけばよい感じが、とにかくイヤなのだ。
こちとら、いい加減、学校で読まされたのだ。
とうにいっぱいいっぱいだ。
もう読みたくない。
なのだけれども、これは面白かった。
面白いのかつまらないのかわからないが、なぜか、つい読み進んでしまう話というのがある。
『あの夏が教えてくれた』は、まさにそんな感じで話がはじまる。
主人公は ボーディ・サンデン、ミズーリ州の田舎町で暮らす15歳の少年だ。
時は1975年・・・・・・といってもピンとこないだろうが、カセットテープが普及しはじめる頃である。
カセットテープが最新のトレンドで、かっこいい、とがった、まだ恵まれた人しか持てないような代物であった時代だ。
ボーディ・サンデンってどこかで聞いたような名前・・・・・・
アレン・エスケンスの本をいくつか読んだ、勘と記憶力の良い方ならお気づきだろう。
えー、あの?!
あの作品、この作品に出てきた、あのボーディ・サンデンが主人公なのである!
・・・・・・
・・・・・・
申し訳ない。
実は私はすっかり忘れていた。
そういえば、そんな人がいたような? という、見事なうろ覚え状態で読み進めたのだ。
えーと、えーと、ボーディって、たしかあんな人だったようにうっすら記憶しているけれど、ふーむ、人には歴史があるのねーと、描きようにうなずきも感心もしたのである。
さすがアレン・エスケンス、うまく描くなあと感心したのだが、それもそのはず、作者が20年の歳月をかけて書いた話なのだ。
『わたしは本書、『あの夏が教えてくれた』を、(・・・・・・)一九九一年に書きはじめました。(・・・・・・)この小説を棚上げにしたのは、二十年、取り組んだ後のことです。(・・・・・・)ついにこの小説を書けて、本当によかった。』 (冒頭)
「では、他の作品を読んでいないと、面白くないのではないの?」
当然の疑問だが、心配ない。
初めて読む作品がこれでもいっこうに障りなく、面白い。
たしかに、他作品を知っていればさらなる楽しみがあるだろう。
「へー、あの人にこんな過去がねえ」
「え、あの人もこの話に!」
「こんな場面、あの話でもあったような・・・・・・」
そんなこんなは、後で他作品を読んだ時におぼえればいい楽しみだ。
現に、見事なうろ覚えの私が、非常に面白く感じた1冊なのである。
初めてアレン・エスケンスを読むにもよい1冊だ。
さらに私は、私にしては非常に珍しい表現も加えて、この本を薦めようと思う。
『高校生の読書感想文におすすめ』
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これまで読んできた作品に比べ、甘め。ミステリ要素よりも、少年の夏がじわじわ滲みる青春小説の側面が強いです。彼らが聴く音楽とか過ごし方とか、そうだよなと思わせるものばかりでこちらも郷愁に浸りました。大人へと歩みを進める少年の足跡が目に見えるよう。そしてホーク、、、泣けちゃうよ。また、ブラックの方々が置かれている状況のあまりの厳しさに目を覆いたくなります。カントリーサイドの話だとはいえ、これは酷すぎる。小説を読まなければ知ることができない現実、まだ今もあるのでしょう。
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二人の少年が仲良くなるきっかけがドゥ―ビーブラザースだった。ちょっと前に読んだ「ザ・ロング・サイド」でも高校生バンドがドゥ―ビーのカバーをやってた。ある世代には圧倒的に支持を集めていことが想像できる
で、内容の方は文句なし。
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著者アレン・エスケンスは、元は弁護士であったが後に作家となった人である。2019年翻訳され話題となった『償いの雪が降る』から四作目となる本書は、ダブル主人公で描かれた第三作『たとえ天が墜ちようとも』で主人公の一人を務める弁護士ボーディ・サンデンの少年時代を描いたものである。
冒頭に作者による注記があり、この作品は1991年に書き始められたが完成を見ず、その後既存の5作品(邦訳は3作品のみ)の後に、再度チャレンジして書き上げることができたという、ある意味、作家人生を賭けた渾身の力作であり難作であったらしい。
本書の主人公は前期の通り少年時代、つまり15歳のボーディ・サンデンである。と同時にこの作品の主人公はボーディの暮らす田舎町ミズーリ州ジェサップであるのかもしれない。最近、アメリカの古い時代を描いた小説のほとんどは人種背別や偏見をテーマにしているのではないか、と思われるくらい同じ課題にぶち当たることが多いのだが、本書はその中でもかなり先鋭的なくらい人種の壁や偏見を重視しているヘイトクライム小説と言って良いかもしれない。
主人公ボーディ自ら知ってか知らずか、偏見を心の中で温めて育っていたことが言動から垣間見られるが、本心は優しい少年である。彼は父を事故で亡くし、母と二人暮らし。飼い犬と隣人のホークという老人が少年の家族のような存在であり、自然たっぷりの田舎町で本来は幸せな少年時代を過ごしているが、学校の教室に唯一いる黒人少女へのクラスメイトの悪戯をきっかけにボーディは偏見との対立をスタートさせる。
同時に改装の進む向かいの空家に黒人一家エルギン家が引っ越してきたことがボーディの人間性をさらに複雑に進化させる。その一方でボーディは敵対的存在となるクラスメイトその他の集団の威嚇に苦しめられるようになる。大人たちの対立、家族単位での犯罪や、依存する地元企業での配置転換などが絡んで、ボーディは差別や対立という構図をさらに深く考え悩むようになるが、村のヘイト集団はその時間を許さず彼とエルギン家にじわじわと攻撃の手を伸ばしてくる。
物語の発端で語られる女性の失踪事件は、物語の進行にどう関わってくるのか中盤まで不明なのだが、後半部になるとその事件の実態も進展がありジェサップという田舎町の見えざるヘイト・クライムやその背後にさらに重なる利権や汚職の問題と絡み合ってボーディの日常を不穏に変える。
最初は弱々しい主人公であった少年が、隣人のホーク老人に導かれるようにして、母を守り助ける存在として、そして黒人少年トーマス・エルギンとの友情を深めることによって人種対立と闘い、成長してゆくのが本書の根幹である。
『全体はミステリ色でありながら、ほとんど冒険小説と言っていい。男の矜持。気位。そして人生の傷の深さと、再生へ向かう意志と友情。そうした人間的な深き業と逞しさとを含め、時にダイナミックに、時に静謐に描かれた、相当に奥行の感じられる物語である。最近、冒険小説の復権を思わせるこの手の小説が増えてきた。シンプルに喜ばしいことだ、とぼくは思う』
自分で書いたこの作家の���ビュー作に関する感想が、実はその後のどの作品にも当てはまるので、本書にもこれを記しておきたいと思う。本書の15歳の少年は、その後の作品で法廷弁護士として主人公を勤めることになるが、そのきっかけになったのが本書の事件である。とりわけエンディングは読みどころである。熱い血の通ったこのような小説を、一人でも多くの世界中の読者に読んで欲しいと願ってやまない。
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『償いの雪が降る』に登場する弁護士ボーディ・サンデンの高校時代を描く青春ミステリ。
公民権法が制定されて間もない、まだ人々の意識に人種差別が色濃い時代。田舎町に住む少年ボーディの向かいに都会から越してきたのは、ボーディ家よりも裕福な黒人のエルギン家。一家の息子トーマスはボーディと同い年の少年で、彼よりも経験豊富で洗練されている。当初は衝突した二人だが次第に交友を深めていく。
ある日キャンプをしていた二人は、山林の中で行方不明になっていた女性の死体を見つけ、それが近頃話題になっていた横領事件の渦中にあった女性ということを知る。
時を同じくして、コープスと呼ばれる白人至上主義集団がエルギン家や彼らと親密なサンデン家を攻撃する事件も発生する。容疑者と思しき男を告発するも、その一族は地元の有力者ということもあり保安官はまともに取り合わない。
殺人事件の真相と憎悪犯罪が次第に重なり合っていく。
少年たちの青春の煌めきと人種差別の暗い影。他者を排斥することで纏まろうとする愚かしさや理不尽さ。ボーディ少年の視点で語られることで、様々な感情が綯い交ぜになる。自分の過ちに対する贖罪としてサンデン母子を見守るホークの生き様が胸を打つ。
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〜偏見はあるに決まっているんだ。大事なのは、その本能を理解し、それと闘うことなんだよ〜
驚いた!
先日読んだ月村了衛さんの『対決』にも似たような言葉が書いてあった
方や日本人作家が女性差別について書いた物語、方やアメリカ人作家が人種差別について書いた物語
まず闘うべき相手は自分自身なのだ
2つの物語はそんなことを訴えているのではないだろうか
誰の心にも「差別」は潜んでいるのかもしれない、それはある意味自分を守るところから発しているとも言えるからだ
自分といや自分たちと違うものを恐れ遠ざけるために過剰に攻撃的になっている
そんなところから「差別」は生まれているかもしれないのだ
「差別」を憎み、「差別」を無くすためには、誰の心にも「差別」の種はあると認め、それがムクムクって育ってきそうになったときに、それと向き合い闘うことが大事なんじゃないだろうか
もし、闘い方がわからないと言うならばこの物語を読めばいい
後に冤罪者を救う弁護士となる15歳の少年ボーディが闘った夏が教えてくれるはずだ
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「償いの幸が降る」などの著者の邦訳4作目のミステリー。前作の主人公ボーディの少年時代、1970年代のミズーリ州の小さな町が舞台。黒人女性の横領失踪事件を皮切りに、ボーディ少年は陰謀の中に巻き込まれていく。一部の権力を持つ白人とそれに与する保安官。公然と黒人差別思想が渦巻く中、フェアの立場を貫く人々への嫌がらせが始まる。真実に目を向ける様、諭す隣人、引越してきたトーマスとの関係など、成長小説としても面白い。痛ましい事件を乗り越えたからこそ、その後のボーディになり得たと納得。沢山の教訓が詰まった一冊。タオルを準備して。
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★5 アメリカの田舎町、知恵と勇気を振り絞りながら生き抜く学生の成長と経験 #あの夏が教えてくれた
■あらすじ
1976年頃のアメリカ田舎町、主人公のボーディは高校一年生。彼は高校生活に馴染めず、いつも同級生から迫害を受けてしまっていた。そんなある日、街で黒人女性が失踪してしまう事件が発生してしまう。保安官は頼りにしている隣人ホークを怪しんでいる様子。不安になったボーディは失踪事件を調べ始めるのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 いい話やったわ…
本作はどこにでもいそうな高校生の成長を切り取った物語です。
彼は街の権力者の子どもたちに目をつけられてしまっており、うまく学園生活に馴染めていない。しかも田舎特有の差別意識が高く、よそ者や黒人たちへの迫害も酷い時代や地域。それにも関わらず、彼は黒人の少女を手助けしてしまったことから、より圧力がかけられてしまうことになるのです。
彼なりに知恵と勇気を振り絞りながら、日々生き抜いてゆく。しかしまだ世の中のことを理解できていないのに、街の事件や問題に巻き込まれてしまうのです。誰しも一度は感じたことがある人生の壁。そして気づき。彼は成長することができるのでしょうか。
本作はストーリーテリングが素晴らしい。序盤から最後まで、じっくりと、でも抑揚をつけながら物語が進行していく。背景にある差別意識の表現も、芯を突いてくる書き方で痛烈。薄っぺらな正義感なんか、簡単に吹き飛んでしまいます。
特に同級生たちとやり合うシーンは、アメリカで本当にありそうなダークな学園風景を切り取られている。日本での学園ヒエラルキーやイジメとも似た陰湿な空気が感じられてたまらなく辛い。
それでも隣人ホークや、引っ越してきた友人トーマス、家族との関係性に救われる。ホント誰と一緒にいるかというのは、人生において大切なんですよね。
そして物語の中盤、パーティで女性と関わるシーンがあるのですが、もう胸が張り裂けそうですよ。このシーンだけでも、この本を読む価値があるってくらい脳天が割かれました。今までだったら決してできなかった行動を彼は起こすのですが、はー…私も自分の高校時代を思い出してしまいました。
終盤には少女失踪、そして主人公パーティにとって重要な秘密が明かされる。怒涛の展開にはなるのですが、真相自体は決して派手ではない。読み終わると、涙がでてしまっていましたことに気づきました…
■ぜっさん推しポイント
人が犯罪を犯してしまう根本的な原因は3つしかなく、幼年期の愛情不足、青年期の成長不足、成人期以降は貧困であると言われています。
主人公パーティがこの街に住み続け、愛のある人からの助けもなく、そして邪な仲間たちとも懐柔していたら、果たしてどんな人生を送ることになったのだろうか。犯罪に手を染めることになってしまうのは、想像に難くない。彼にとって「あの夏が教えてくれた」ものは、どんな宝石よりも価値のあるのでしょう。
私の息子たちも、いま青年期をむかえています。知恵や知識は学校で教えてくれますが、��きることについてはまだまだ経験不足。私に何ができるか分かりませんが、いつも近くにいて、話を聞いてあげることが重要なんだと思いました。
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地方の保安官が自分の管轄区内で起きている集団による人種差別を放置し、みずからも助長するような言動で差別に反対する人々を苦しめている。C.J.ボックスのジョー・ピケットシリーズの初めに出て来る悪徳保安官もそうだったけど選挙でえらばれる公務員っていったん悪いほうに行くと歯止めが利かなくなるのかな?
ミステリではなく追想の青春小説だった。
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田舎町に暮らす少年ボーディ。その街で一人の女性が失踪する事件が起きる。そして近所に黒人一家が越してきて、その家には同い年の少年トーマスが。
あらすじが難しい。失踪事件があり、トーマスとの友情譚があり、隣人ホークの過去話がいろいろと絡み合って・・・なかなかに興味深い。いや面白いんですけどね。黒人差別的なものがそこかしこにでてくる。白人至上主義の過激団体とか。そして差別的な人物はことごとく悲惨な末路をたどるわけで。なんだろうな、説教臭さみたいなものを感じてしまった。この手の差別問題とか、あと環境問題とかを物語に持ち出すとものすごくわかりやすく単純に善悪がはっきりするのであんまり好きじゃない。「面白い」お話じゃなくて「正しい」お話をしないといけないみたいな窮屈さを感じる。特に最近の海外文学では。
いやまあそれを抜きにしても面白い話ではあったんですけどね。なんでもこの作品の主人公ボーディくんは別の作品では成長した姿でまた主人公を務めているんだそうで。機会があったら是非読んでみたいと思います。
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CL 2024.9.1-2024.9.3
1970年代、いまだ人種差別が色濃く残るアメリカの田舎町が舞台。作者の他の作品にも登場するボーディが少年の頃のひと夏の成長譚。
終盤、一気に多くの人が死んでしまうのが重すぎる。
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正直前半は青春モノの色が濃いので怠く感じてしまったが中盤からグッと物語が進み出すのと前半に丁寧に描かれた主人公とその周囲の人との関係が変わり、明るみになることで一気に読み進められた。
著者の作品はこれまでも成長物語としての側面が強かったけれど、今作は主人公の年齢が低めなこともありそれが最も濃いし「なるほどあんな立派な人物になるわけだ」と過去作を読んでると納得させられる。