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紙の本
文学の素養がないのに書評をしてみる。
2015/11/30 19:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやぁ、困った。私には文学の知識や教養がないから「3人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。」っての覚悟で書きますよ。どんな本かと言うとですね、
「現代社会の中で「幼さ」は単に矯正されるべき障害なのではなく、むしろ人を生かす力を生み出している。で、そのことを主に作家や詩人の表現を通し考察」する本です。
小説の世界では、モブ・ノリオさんの『介護入門』から「介護ネタ」が多くなっています。非対称な関係からくる不安定や葛藤のある世界ってのは、頭や理性で支配できない「世界」です。
私の卑近な例で考えると、介護や看護の世界では「高齢者をおじいちゃん、おばあちゃんって呼ばずにちゃんと名前で呼びなさい」って教えがあります。子ども扱いに聞こえるし、稚拙で未熟で依存的という印象を与えるからっていう理由です。そうしたものは矯正されるべきワードとして扱われます。
「ちゃん付け」することで幼児性や未成熟を相手が感じて、それはマイナス要因であるという常識的見解からそう言われます。
でも、背中が曲がってコンパクトでかわいらしい「おばあちゃん」ってご近所にいません?でもこうした「かわいい」から「ちゃん」って言いたくなる愛情を示すのがそんなに敬意を欠くものなのかしら?
阿部さんの「かわいい」の解説にある通り、その人を人間として下に見ているんじゃなく、「あらあ、かわいいわねぇ」には、自分の態度の積極的な「表現」があり、「自分がかわいい」と思う慈愛の気持ちの表現です。「私は幼いものにきわめて好意的に反応する人間」である表明があります。
大人になっても未成熟な「幼さ」の部分はつきまとうけど、現代の活動が分業化(介護とか育児とか)してまさに「幼さ」を強制され、未成熟さを強調されてきました。だから「あなたは大人ですか?」との問いにちょっと戸惑いがある人が多い。
とはいえ、社会は秩序に基づいた理解が優先されるので「おばぁちゃん」という非対称な敬称に対し、嫌悪を抱く人がいるわけです。「人間扱いしろよ!」って。
当の「おばぁちゃん」が不快に思っていなかったら、いいんじゃないですか?だって、かわいいじゃない。こっちが笑顔で接したくなる呼称がそんなに悪いの?って、ま、こんなこと私はリアルじゃ言いませんよ。私は「立派な大人」ですから。
阿部さんは、こうした私のつたない問いに「老いの中の幼さ」という章で語りかけてきます。
成熟が絶対価値として見られてきたけど、幼さ(弱さや不安定さ)そのものに独立した価値を置くと、はたして成熟が不要になるか?っていうところにも小島信夫等をあげて思考します。
このぼんやりした日常で私たちは、多くのトレードオフ(あちらが立てば、こちらが立たず)につき合わされています。人によってはパイを増やすことに集中したり、トレードオフな世界がない場所に行こうとする人もいたり、そもそもトレードオフに「もっとはっきりしろよ」と他罰的に怒る。そんな20年だった気がします。
阿部さんは『老人力』や『トレイス』もあげて、力の抜けた空気やゆったりした安心感、老いと幼さには、そうした弱さから豊饒な物語の源泉について「こういう文学もあるよ」と声をかけるわけです。
つーことで、あとは文学的素養のある人、書評、頼まぁ。
紙の本
立ち読みチラリで、即買いでした
2015/11/17 20:59
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投稿者:Chocolat - この投稿者のレビュー一覧を見る
阿部公彦氏の文章は、読みやすいですね。元々英米文学者だけれど、やはり、「言葉」の研究者、日本語使いにも基準が感じられます。引用作品に村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると…」や、太宰治の「人間失格」、武田百合子の「富士日記」など、その他にも自分が読んだことがある作品が多く使われていたので、より、内容が解り易く、最後まで楽しく読めました。他人に解り易く説明できる人が、本当に頭の良い人なんだろうなと、つくづく感じます。
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