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不妊治療には様々な種類と、様々な段階がある。
多分その中でも子どもを望む親にとっての最後の砦が凍結胚移植だろう。保険の適用に回数制限もある。
これでダメなら諦める、そういう治療法。
それはいろんな問題を含む。医学的な、社会的な、そして倫理的な。きっちりと決められているわけではない、その壁。だからこそ生じるグレーゾーン。
そのすべてを承知してなお、子どもを願う親たち。
子どもにとって、自分が望まれて生まれてきたのか、親に愛されてきたのかというのは切実な問題。普段は意識することもないであろうことだけど。
自分の存在を、誕生を、ただ一人だけでもいいから肯定して欲しい、そう思うこともあるだろう。
父親と母親の間から、望まれて生まれてきたというそれだけにすがることもあるだろう。
18歳のつむぎの家庭は複雑だ。事故で早くなくなった両親の代わりに育ててくれた遠縁のヒト。義母との借りものような生活。そこにあるのは当たり前の愛情ではない、別の何か。
自分のルーツを求めるつむぎの心の旅。
あまりにも深く大きくいびつなその現実をこの先も抱えて生きていくのだろう。将来自分が子を持ちたいと思ったとき、その現実はまた別の形でつむぎの前に現れるのだろう。乗り越えて欲しいと思う。真摯に受け止めて欲しいと思う。
ただ、どうしても18年前の決断が正しかったとは思えない自分がいる。
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本作の主人公、18歳のつむぎは幼い頃に両親を亡くし、義母の奈緒と二人暮らし。
義母はパニック障害の持病を抱えており、つむぎは家の中でも絶えず気を張って生活している。
互いに他人行儀で、家庭の温かさは微塵も感じられない。
ある日、義母の奈緒が倒れ、病院へ駆けつけたつむぎに明かされた真実は残酷だ。
タイトルのー196℃は凍結胚を保つ為の温度で本作の鍵となる。
性暴力による望まぬ妊娠もあれば、妊娠を切望する女性もいる。
不妊治療に一縷の望みを託す、切なる思いが伝わって来た。
それでも尚、つむぎのルーツには疑問が拭えなかった。
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個人的には、家族とは何かというより、母とは何かを考える作品。ラスト1/3あたりから涙が止まらなかった。こんなにぼろっぼろ泣いたのはいつぶりだろう。涙を拭くのが追いつかない。でも読後感が良くて、雨上がりの空みたいなすっきりした心もちがした。