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1587年(天正15年)秀吉の九州平定とバテレン追放令。日本史で習ったが具体的な内容までは知らなかったので、本書を読んでその具体的内容や背景事情等を詳しく知ることができて、大変勉強になった。
本書のメインとなるのは第Ⅱ部のバテレン追放令に収められた論考。バテレン追放令に関する文書としては、次の2点が知られているとのことで、
A 天正15年6月19日付「定」五か条
B 天正15年6月18日付「覚」十一か条
この2つの文書の対象、日付けの意義、文書の出された背景、主要な各条文の解釈、両文書の関係等について、著者は考察を進めていく。
秀吉と日本副管区長コエリュとの対面、やり取りにより秀吉がイエズス会の日本布教の姿勢について理解に達し、キリスト教国家に対する対抗宣言として、A文書の第1条、有名な「日本ハ神国たる処、きりしたん国より邪法を授候儀、太以不可然候事」に至ったものとする。
著者の立論に賛否を唱える能力はないので何とも言えないが、著者は自らの論拠を具体的に説いてくれるので、立論の筋は良く理解できる。
この時点では、キリスト教の布教は禁止、貿易は秀吉の統制下で行うということだったのだが、その後「鎖国」に至る歴史は知っての通り。
ただ著者の考え方にやや違和感を持ったのは、この時代日本ではキリスト教国家と異なり信仰の自由が認められていたというのだが、それは奈良仏教の六宗と密教の二宗に限られ、権力に抵抗する一向宗や不施不受派まで認めていたのではないから、日本との対比を強調するのはどうかと思った。
いずれにしても、このバテレン追放令が、成功しつつあると思われていた日本におけるキリスト教布教の大きな転換点だったことを良く分からせてもらえた。