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戦後最大の未解決事件として知られる下山事件。
本書はその真相、少なくとも真相の輪郭をもたらしてくれるものだ。
要人一人の生命とその家族の命運を、「その程度」のことで奪い変えてしまえる思想が恐ろしい。吉田茂の言葉も背中を冷やすほど冷酷だ。これは明らかに(大義のためなら小さい義を犠牲にしても構わないという)マキャベリズムの限度を越えている。そもそも大義にすら至っていないではないか。この種の冷酷さをかの国が持ち得たのは、黄色人種が相手だからではなかったか。
夜中から読み始め、明け方までの4時間弱で一気に読了した。明日も仕事があるというのに、大人げない私・・・
執筆者である記者の、隅々まで行き渡る実証的態度、裏付けの徹底ぶりに舌をまいた。邂逅の妙もまた、そのように人事を尽くした結果だろう。素晴らしい成果である。
さて、少し仮眠をとるとしよう・・・
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下山事件 封印された記憶 (単行本)
木田滋夫
1,870円(税込)送料無料
商品情報
発売日
:
2024年10月08日頃
:
木田滋夫(著)
中央公論新社
発行形態
240p
ISBN9784120058400
内容紹介(出版社より)
他殺説を封じる強い意思──。「戦後史最大のミステリー」と称され、今なお語り継がれる下山事件。自殺か他殺か謀殺か、さまざまな憶測と情報が飛び交う中、警視庁捜査一課が主導する捜査本部は事件後まもなく「自殺ありき」で結論づけていた。他殺説が封印された構図とはいかなるものだったか。捜査に従事した東京地検の検事による手記、事件の鍵を握る“元憲兵”が出入りしていた「小菅の町工場」をめぐる証言など、約20年にわたって取材を続けてきた新聞記者が発掘した新事実に基づき、事件の糸口を探る。保阪正康氏推薦。
内容紹介(「BOOK」データベースより)
他殺説はなぜ封じられたのか。75年を経て明かされた検事の手記、事件の鍵を握る“元憲兵”が出入りしていた「小菅の町工場」をめぐる証言ー。
目次(「BOOK」データベースより)
プロローグ 小菅の町工場/第1章 初代国鉄総裁の失踪/第2章 発見された「ガリ版資料」/第3章 「下山白書」の欠落/第4章 元検事の「捜査秘史」/第5章 元旋盤工による新証言/第6章 謎の元憲兵、宮崎清隆/第7章 「他殺説」封印の構図
著者情報(「BOOK」データベースより)
木田滋夫(キダシゲオ)
読売新聞記者。1971年神奈川県藤沢市生まれ。大学卒業後、情報業界を経て、99年に読売新聞社入社。横浜支局(神奈川県庁担当)、東京本社社会部(環境省担当)、中部支社社会部(愛知県警担当)、千葉支局デスクなどを経て2019年より東京本社教育部。23年に同部次長
以上楽天ブックスより引用
感想
昭和史のなかでも有名な事件すぎて、つい最近までさほど興味がなかったが、数年前NHKスペシャルの帝銀事件を見たことにより占領期の未解決事件への関心が俄然高まってきてしまった。
本書の読書に至る前に下山事件関連の本も基礎知識として何冊か読んできたが、昨年読売オンラインで下山事件の新資料を駆使しての記事があがっていて、興味深く読んでいた。
それが本書のベースになり、加筆されて刊行されたのでほぼ一気読みした。
最近の他殺説では実行犯が亜細亜産業関連の組織だったのではないかというのが有力で、関係者の子孫柴田氏がルポや小説を出しており、今回のは実際の犯行現場が、ライカビルと綾瀬の荒井工業だったのではないかという論。
柴田氏の説を補完する説となっている。
現役の新聞記者さんが、まだ下山事件に関心を抱いて20年以上追っていることを知り、まだまだ素晴らしいジャーナリストも存在することをしってとてもうれしく思った。
新資料の発見も記者の人脈からたまたま手繰り寄せられてきたもので、真実をつかむのは、調査力もあるが、運に恵まれる必要もあるのだなと思う。
ただその運は簡単に引き寄せられるものではなく、記者が長年人脈を温かく築いてきたからに他ならない。
AI時代に突入しても人と人との交流が築くものには勝てないのではないかと思った。
下山事件は関係者が皆没してしまい、永遠に未解決になってしまうかもしれない。それでも真実を知りたいと思わせずにはいられない事件と思う。
満足度★★★★+0.9
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今、現役の新聞記者が
1949年のこの事件を
辛抱強く長く追ってらしたのが
素晴らしいです。
確かにA社、怪しい。
そして卑劣なシベリア抑留の間は
共産主義の刷り込み教育も
これほど徹底されてたとは!
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下山病もこの一冊で最後とします。朝鮮戦争前夜の悲惨な事件。アジアの中の日本が共産化されるかもしれない恐怖から起こった出来事なのかも知れない。