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みんなのレビュー4件

みんなの評価4.5

評価内訳

  • 星 5 (2件)
  • 星 4 (2件)
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4 件中 1 件~ 4 件を表示

途中まではロシア社交界を舞台にしたきらびやかな男女の駆け引きで、まるで「少女小説」風。後半は、狂信的な異端宗派の血塗られた犯罪小説。理知的な娯楽のための……。

2006/02/13 00:32

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「魂を漁る女」とはいやはやぐっとくる表題で、「私のことじゃありませんことよ」とおちゃらかのひとつも飛ばしてみたいところだが、そういうババァ根性は控えさしておいて……。先ごろ出た『聖母』にも驚かされたけれども、精神病学者クラフト=エービングが呼び始めたところの「マゾヒズム」——ひとり歩きして性遊戯の代名詞となってしまったその言葉の源というイメージからはかなり隔たった「ザッハー・マゾッホ」という鬼才の本領が遺憾なく発揮された、ものすごく面白い小説のご紹介。
 訳者・藤川氏はマゾッホを理性の人と評し、「啓蒙家としてはまぎれもないニーチェの同時代人」と位置づけている。哲学者ジル・ドゥルーズの評価も高いということでネット上で調べてみれば、東大の中澤英雄氏が、「作品全篇がハンガリー=オーストリア帝国の少数民族問題、国籍問題、革命運動の問題の影響をとどめている」というドゥルーズの記述を解説に引いていた。
 そういうアカデミズム世界での定評を掲げてしまえば近寄り難いイメージで、かえってSM趣味の人が引いてしまうとしたら残念。何が残念だか本当のところよく考えちゃいないが、スプラッター・ホラー的なものには堪えられないという繊細な人をのぞけば、会話のやりとりもリズミカルなら、わけの分かりにくい凝った表現技巧もなく、読み易い。そうジェーン・オースティンぐらい読み易く、その少女小説的平安な地平から一気奈落の底、「狂気」「流血」「裏切り」の地獄へ突き落とされる体験は、「本から覚めてよかった」と思えるほどの興奮をあらゆる人に保証してくれるのではないかと思える。
 「魂を漁る女」が実際のところ何を指すかは伏せておくとして、その当の美女の名が「ドラゴミラ」——これもまた相当な名で、古今東西、たとえば「ぐりとぐら」のように濁点の響きにつきまとうどこか妖しげな感じがたっぷり。小さな村で母とふたり修道女のようにひきこもって暮らしていた彼女が、幼なじみの青年士官の一時帰郷を機にキエフに居を移し、社交界に打って出、容姿端麗で地位も財産も極めつけ、そして放埓奔放、光源氏のような伯爵の前をちらつき始めるという展開である。
 青年士官、伯爵というカードが揃ったところ、妖婦ドラゴミラと対をなす可憐で正義感の強い少女アニッタも登場する。このトランプの絵札のごとくきらびやかな男女を中心に、趣向を凝らした夜会、オペラ、そり遊び、狩りといった貴族の暮らしの描写に目を奪われていくのだが、覆いかぶさる影のように徐々に異端信仰集団の工作は進んでいく。
 狂信的カルト集団と女教祖を扱った『聖母』がコンパクトにまとめられていたのに対し、こちらはそれをさらにグレードアップした内容となっている。ロシア貴族社会に代表される西欧文明に寄生していく東欧的神秘主義の図式が次第に明確化していく。それが最終的には、貴婦人見習のアニッタと妖婦ドラゴミラの人命を賭けた戦いに絞られていくのだ。
 盲信的な信仰ゆえ、自分のエロスを駆使して、それに魅入らせられる男女の犠牲、つまり死を呼び寄せていくドラゴミラは、「快楽」「官能」を超越した「冷血」として自他共に認める存在である。それが一分の魂「愛」に少しばかり心を揺らす様子は、線路の上で一瞬の逡巡を見せたアンナ・カレーニナの姿をかすめさせる。
 あでやかな世界を描き、且つ派手派手しい流血の犯罪を盛り込んで充分な娯楽性を訴えながら、そのような名作文学としての情趣もこの小説はすくいとっている。

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女性の妖しい魅力

2007/08/04 14:25

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:sanctusjanuaris - この投稿者のレビュー一覧を見る

狂信的教団の中心的女性であるドラゴミラ。彼女の
幼馴染ツェジム・ヤデフスキー。ツェジムを愛する少女
アニッタ。どんな女性でも己のものにできる完璧な貴公子
でありながら、アニッタとドラゴミラに叶わぬ愛を抱く
ソルテュク伯爵。
おもに彼らを中心にストーリーが展開される。
ドラゴミラの属する教団は、神父アポストルのもと、
荒廃した生活を送る人々を誘拐し、残酷な手法で
殺害する組織だ。この物語では、ソルテュク伯爵の殺害を
目的としてドラゴミラがキエフに送り込まれる。
だが狂信的テロリストによる連続殺人の物語を
期待してはならない。もっとも、殺害のシーン、奇妙な
儀式などは描かれるが。
むしろマゾッホは、ドラゴミラという
サディスティックな女性を描くのだ。ドラゴミラの
冷たくて謎めいた、それなのに甘くて薫り高い
魅力を描くためにこそ、その他すべての描写がある。
これほどまでに魅力を持った完璧な女性像は
おそらく他にないだろう。

読み進めるうちに、読者の頭には、ドラゴミラの幾多の、
目のイメージが浮き上がってくるだろう。

毅然として敵と信奉者たちを見下ろす厳格かつ誇り高い
女王の目。神の意思を試し、ライオンの前に立つ狂信の目。
神と救済の教義を説き、茨の信仰の道を貫こうとする
絶望的信念の目。そしてマゾッホがあまりにも華麗に描く
ドラゴミラのめまぐるしい変装は、魅力を最高潮に
引き上げている。殺害ターゲットに近づくために男装したり
看護婦に成りすましたり、ドラゴミラは様々に変装を遂げる。
仮面舞踏会にスルタンの妃の姿をして現れ、艶やかに
ツェジムとソルテュクの心を一挙につかみ放さない。
その色とりどりに変装する女策士の狡猾で妖艶な目。

これら相容れぬいくつかの目を持ったドラゴミラは、必ずしもその信仰や目的に向けて一貫した思考と信念で行動していないことは明白である。艶やかに着飾ること、ソルテュクを誘惑することを楽しむ遊び心がある。ドラゴミラの冷たい目の魅力を構成しているのはそういった成分だろう。

ドラゴミラは、荒涼とした信仰の茨の道を永遠に歩き続ける。だがそれにも関わらず、七変化する彼女の行動は、トルコのエキゾティックなオリエントの情緒、音楽と謎めいた香りを引き起こしてくれる。

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2006/10/19 21:11

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2007/05/01 12:46

投稿元:ブクログ

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