投稿元:
レビューを見る
森の奥で人目を避けて暮らす父のクーパーと娘のフィンチ。森での静かな生活がだんだんと脅かされることが起こって…。
なかなかクーパーが過去に犯した罪が明かされず先が気になった。
愛する人を失ったこと、兵士時代のフラッシュバック、罪と罰といった暗い背景のあるサスペンスだけど非常に読みやすかった。
森の生活は厳しさもあるが森の静謐な様子、動物たちの描写が美しい。
父の娘に対する深い愛情に胸を打たれ、ラストにはしんみりした。
投稿元:
レビューを見る
訳あって、幼い娘と戦友所有の森のキャビンで隠遁生活を送るクーパー。隣人のスコットランドが稀に顔を出す以外ほとんど下界との接触がない生活を送っていた。森で見知らぬ少女を見かけた翌日、亡くなった戦友の妹がクーパーを訪ねて来た時、それまで暮らしてきた世界が崩れていく。
穏やかな筆致で描かれているが、最終局面は意外な展開。
投稿元:
レビューを見る
いやぁ、ラスト泣けちゃいます。とにかく娘であるフィンチちゃんが可愛くて愛おしいと思わせる描写が上手い。
ただ全体的に濃厚な物語とまではいかず、描写や表現、ひとつひとつの要素は意外とあっさりした味付けです。
ですが、ラストはやっぱり泣いてしまった&好きな終わり方なので高評価です笑
投稿元:
レビューを見る
キミ・カミンガム・グラントの初訳。デビュー作ではないようで。
ある罪を犯して逃亡中の父クーパーと、何も知らずに森で暮らすその娘フィンチ。一年に一度だけ、親友のジェイクが物資を運んでくれるのだが、約束の日に来なかった。最後の手段として、近くの街へ買い物に出かけるが。。。
非常に読みやすい。そしてそこまで長くないので、サラッと読める。雰囲気というか、ジャンルとしては『ザリガニの鳴くところ』や『われら闇より天を見る』の系統。ただ重厚感は全くなく、その2作をかなりライトにした感じ。
ミステリ要素もほぼなく。親子の成長譚。ちょっと色々ご都合主義のところはあったが、そこを踏まえてもラストは良かった。
結構誤字脱字が多かったけど、次の版で直って欲しい。
投稿元:
レビューを見る
ゲームクリエイター小島秀夫さんが帯で語るようにこの作品には「現代人が背負うべき罪と痛み、そして育むべき恵みがある」し、ラストの手紙を読んで無償の愛について深く感じ入った作品でした…!
作中でも触れられていますが、主人公の過去をとある人物がアメリカン•プロディガルと表現しています。このプロディガルはルカ福音書にあるイエス・キリストの放蕩息子のたとえ話で「どんなに罪を犯した人でも神様は愛してくださる」ということを語った内容です。
これを読み終えたときにまさにアメリカンプロディガルだなと強く感じました。
主人公も過去に罪を犯し、雄大なアパラチア山脈の使われていない友人の別荘に逃げ潜みます。そこで様々な人々から手を差し伸べられるのですが、主人公は自分の罪に囚われてその手を払い除けたり疑ったりしてしまいます。
そんな主人公がとある事件をきっかけにし、無償の好意を受け入れられるようになっていく物語です。
いつも迷惑をかけても変わらず手を差し伸べ、声をかけてくれる友人や周囲の人たちをもっと信用してもいいのかもしれない。そしてより深い感謝と共にその手をとり、声に耳を傾けていこうと読後は強く感じました。
あとがきで名言されてないですが、イエスの弟子ペトロのニワトリの話がベースなのかな?と個人的には思いました。いずれにしても主人公が冒頭でニワトリを殺したときのような憐憫の情ではなく、無償の愛についての話なのが本書なのでしょう。
【好きなフレーズ】
p378
恵みというものは、それを受けるに値するかどうかは関係ない。自力で勝ち取るものでもない。ただ受け入れるだけだ。あるいは拒否するか。
投稿元:
レビューを見る
過酷な軍人体験の後、秘密を抱え、密やかな森の中で生活する親子の話。どこかで読んだことがある感じもするけど、何か読書のさわやかさが後味で残る良作。
1年分の生活資材をウォルマートまで買い出しに行く様子がなんだか楽しかった。金はあるし、でかいクルマもあるし。そういう点では苦労はない。
生活感あふれる物語が綿々と続いたなかで状況が大きく変わったときに物語が動く。その結果何が起きたか。愛と救いと自己犠牲の物語。
投稿元:
レビューを見る
本を開けば美しい景色がそこにある。そう期待して読み始めたけれどそれは期待以上だった。
鳥の鳴き声や静けさまでもが行間から滲み出てきて、自分の周りを大自然が取り囲む。
そして、その美しい自然と絡み合うのがサスペンス。
真逆とも言えるその要素は決して異物ではなく、上手く溶け合っている。
ジェイクが亡くなり、妹のマリーがやってきたことで、保っていた均衡が崩れてゆく。
心に溢れる想いがクーパーを変えてゆく…。
やはり人は人に救われるのだと言うことなのだろう。
最後はちょっとキリスト教の要素が強く、理解が追いつかないが故にちょっぴりしらけてしまった感も否めないけれど、とても面白く読めた。
投稿元:
レビューを見る
https://yoshimor.hatenadiary.jp/entry/2024/06/04/053000
投稿元:
レビューを見る
罪と罰と愛と苦悩の物語
社会が求める姿に適応するべき?余計な雑音を避けて人間元来の生活を続けるべき?本当の幸せって何だろう…
一般的な家庭とは明らかに違っていたとしても、間違いなくフィンチは惜しみない愛情を注がれていることが分かるのがとても良かったです。文章も詩的な表現が多く美しい描写が好きな人には特に刺さりそう
巻末に訳注や後書き以外に、著者インタビュー、ボーナスシーンの他、読書会のための論題などが付いているのも面白いですね。あまり見たことなかった(実は有名なのかな)のですが、物語を深掘りする手助けになるし、他の作品でもこういう付録が欲しいな
投稿元:
レビューを見る
本書は、わけあって森で隠遁生活を送っている父と娘の物語。前半はほぼ森の生活の描写に費やすが、父と七歳になろうとする幼い娘との森の中の隠遁生活はメルヘンのようだ。不思議な独り暮らしをする森の隣人以外、誰もいない世界で父は娘を育てている。
それにはもちろんわけがあって、主人公は特殊部隊の兵士という過去を持ちその経験は誰にも言えない。当時の部隊仲間だった友人ジェイクだけが年に一度膨大な食糧や生活必需品を携えて彼らのキャビンを訪れる以外、人に会うことはない。7歳になろうとする娘の生きるパワーと父娘の愛情、そして森という生命に満ちた舞台そのものが作品の前半を組み立てるが、ミステリー的要素はさほど感じないまま、ただただ不穏な父の胸の内が明かされぬまま、美しくも孤絶した日々が過ぎてゆく。
主人公である父の独白で続く本書は、時に過去を振り返る。中東の戦争に特殊部隊チームとして加わってきたこと。その悲惨な結末から帰国してきた地で巡り合った女性との恋。未婚のうちに娘が生まれ結婚を予定していた時に妻にならぬまま失われてしまった女性の命。残された娘とその定まらぬ定めへの反抗から、犯罪行為を起こしてまで連れ去ってしまう父親。彼と娘が選択したのは戦友の持つ森の中のキャビンとそこでの隠れた生活だけだった。
以上のアイディアと徐々に証されるその真相がまた凄いのだが、この森の生活という静かな日々にある事件が持ち込まれるところから父子の生活が壊れてゆく雪崩のような後半部が凄い。彼らの生活に紛れ込んできた写真好きな少女と、森に育った娘が出会ったことから父と子の秘密の生活は崩れてゆく。ゆったりとした森の日々を描く前半部のたゆたいのようなリズムから一転して、後半部は一気読みに近い形で最後まで読み切れてしまう。波濤のような心と状況の変化に、父と娘は運命の翻弄に身を任すことを余儀なくされる。
どっちに転ぶのかというスリリングでデリケートなプロットももちろんだが、それに至る前半の仕掛けも素晴らしい。さらに仕掛けは仕掛けとしてそれを上回ってゆく父と子の葛藤とあまりに深い愛情や心の繋がりがたまらない。なるほど『ザリガニの鳴くところ』のイメージ。ネイチャー派の作品としての共通項はあるかもしれない。少女小説という意味でもどこか。ただ、先述したように、父の独白文体やそこで使われる<おれ>という一人称からも暴力に携わってきた過去を持つ危険な印象を持つので、どこでそれらが爆発するのだろうかという導火線的意味合いを感じさせる点は『ザリガニ……』に比べると取り扱い注意であるぴりぴりした雰囲気が強いと思う。
しかしクライマックスで見せる父、子、さらに意外な人物の意外な決断という読者をいい意味で裏切ってゆくエネルギッシュなエンディングは冒険小説読者であるぼくのような人間にはある意味、見どころである。しかし、何よりもそこまで引っ張ってゆく丁寧で美しい文章によって綴られた作品密度が素晴らしい一冊であるとも言える。予想のつかない作品であり、予想のつかない感動が最後に待っていることを請け合いたい。
最後の最後���章のみ一人称の書き手が変わる。大切な転換点と言えるので、ページ飛ばしの先読みは絶対に厳禁。そして読後の感慨は、作者のあまりに豊か過ぎるサービス・ページでさらに増幅するということを約束します。
投稿元:
レビューを見る
主人公クーパー視点で描かれた親子の物語。生活の描写が細かく、そこに自分が居るかのような感覚になれました。人物が少ないので誰が誰だったか分からなくなる人にはオススメ(私は外国人の名前を覚えるの苦手…)。
ミステリー要素は少なめにかもしれませんが、最後の急展開は読者を引きずり込みます。父親は必読。
投稿元:
レビューを見る
【2024年読了ー7冊目】
元軍人のクーパーは過去に犯した罪から逃れるように、山奥の一軒家で8年間、一人娘のフィンチと共に暮らしている
フィンチは8才だが、もちろん学校に通うこともなく、父親と森で生きていく術を身につけ、本を読み日記を書く聡明な少女…
電気もなく狩りをして暮らす自給自足の生活だったが、二人は森での生活に安らぎを感じていた
そんな二人の元に年に一度だけクーパーの親友のジェイクが物資を届けるためにやってくる
しかし、その冬はいくら待ってもジェイクが来ない…
そしてあることから二人の生活に変化が…
文明社会を捨ててまで人目を避け、二人が森で暮らす理由はなんなのか?
大自然の美しい描写やフィンチのかわいさにページを捲る手が止まらない
それと同時にクーパーの過去が少しずつ明かされ、父親としてのクーパーの苦しみに胸が熱くなる
ラストは予想もしていなかった展開に涙がこぼれた
ハードボイルドであり、ミステリーであり、人間ドラマでもあり…
素晴らしい作品でした!
投稿元:
レビューを見る
本屋で猛プッシュされていたので手に取ったものの、冗長すぎる…
劣化版「ザリガニの鳴くところ」…といいたいけど、明らかな誤植があったり、唐突にフォントが変わったり(こちらはわざとだろうけど)、没入を妨げる要素がちょくちょくあって残念。
これがなければもっと一気に読めたかも。そしたら劣化版とは思わなかったかも。
投稿元:
レビューを見る
★5 父と娘の愛おしくも苦しい物語、ラストの台詞はきっと涙が止まらない… #この密やかな森の奥で
■あらすじ
アフガニスタンで従軍していたクーパーと、その娘のフィンチ。彼らは静かな森の奥でひっそりと暮らしていた。仲睦まじく暮らしている二人だったが、クーパーが過去に罪を犯してしまったことから、表立った生活はできなくなっていたのだ。ある日、森に見知らぬ少女が現れ、二人の隠れ家が明るみになる危険性が出てしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
森が目の前に広がる…太陽の木漏れ日、爽やかな風の音、動物たちの鳴き声、樹木と草の香り。そんな人気のない山奥が舞台にした、父と娘の物語です。
はぁ~この二人の関係性が尊すぎるよ。娘の安全ためなら全てを犠牲にして守り抜く父親と、そんな父を尊敬してやまない娘。シンプルに書くとこれだけなのですが、ページをめくるごとにその愛情の深度が増してゆく。まるで休日の公園で仲睦まじい家族をみているようで、優しい気持ちになれるんです。
登場人物がまっすぐすぎるのよ。
まず娘のフィンチの透明感。彼女の素直さとちょっと生意気になり始めたところの引力ったら、そりゃこんな子のパパになったら溺愛しちゃう。
そして過去に後ろ暗いことに手を染めてしまった父のクーパー、しかし彼が生きてきた背景を思うとよく頑張ったと思う。こんなにも一人の女性とその娘を愛せるなんて、うらやましい気持ちでいっぱい。しかし彼女の好奇心に手を焼く姿を見ていると、私が子どもの頃に母を心配かけてしまったことを思い出してしまいました。
そんな二人の物語も、中盤から一気にサスペンス感が増してくる。二人の背景には何があったのか、今の生活が侵されてしまう危険性が迫ってきて…
特にクーパーの娘を想う気持ちがあまりにも鬼気迫っていて、でも深淵には愛があるのも分かる。そして終盤の展開は涙なしでは読めない。例のシーンはマジ泣いたよ、もう勘弁してってくらい。
そして物語は想像もしなかったところに着地する。人間はただひたすらに生きているだけなんだけど、生き物として発展するためには何が必要であるか。当たり前のことを深く学べる作品でした。
■ぜっさん推しポイント
私が若かりし頃、妻との結婚を決めた時のことを思い出す。大した能力も稼ぎもなく、幸せな家庭を築いていけるのか不安でいっぱいでしたが、自分なりに勇気をもって気持ちを伝えたのです。人生に真摯に向き合い、覚悟を決めた時こそ尊いものはありません。
本作でも何人かの「覚悟」を見ることができます、カッコ良かったです。
投稿元:
レビューを見る
MGS生みの親、小島秀夫監督のおすすめから手に取りました。
父子の物語、家族の物語ではあるものの、特筆すべきは大自然で暮らす描写の素晴らしさ!
まるでパノラマ映像を観ているかのように、かと思えば耳元で薪がはぜる音が聞こえるかのように、ありありと情景が浮かびます。
ストーリーラインもしっかりと組み立てられており、退役軍人である主人公のPTSDや家族の歪さ・生まれの貧富による差別など、さまざまな要素が丁寧に掘り下げられていました。
ラストはやや強引なハッピーエンドに感じましたが、登場人物みんなの豊かな心に親しみを持てました。
大切な人と道徳心どちらをとるか?という問いかけが形を変えていくつも提示され、考えさせられる部分がたくさんあったのもよかった。
また、『読書会のための議題』を載せてくれている文庫本は初めてだったので、サービス精神に驚き!
著者がこの作品を大切にあたため、育て、世に生み出してくれたことが伝わってきます。
あとがきまで十二分に楽しませてもらいました。
他の作品も翻訳が待ち遠しいです◎