投稿元:
レビューを見る
衝撃の上巻最終シーンを受けて、ひたすら重い下巻。恐ろしいのはあれほど心揺さぶられた上巻が、下巻の“フリ”だったということだ。下巻は上巻の諸々をどっかり受け止めて、さらなるドラマの展開を図る。重いが読むのが憂鬱ではない。期待を裏切らないとはこのことだ。読むべし。
投稿元:
レビューを見る
その2・バベル オックスフォード翻訳家革命秘史(下)
この本の紹介は「バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 上」をご覧下さい。
2025/01/20 更新
投稿元:
レビューを見る
アヘン戦争前のイギリス、清から連れて来られた主人公の物語。翻訳が魔力を生み出す世界。最初は戸惑うが、青春物語としても奴隷の物語としても面白く読めた。
投稿元:
レビューを見る
人間同士の意思疎通がどれだけ困難なことかを思い知らされた
しかしその「翻訳」がいかに無駄であっても、双方が生きる世界を行き来するために必要な努力として、その地位は保たれる
立場や境遇が違うために、たとえ生活を共にしたとしても価値観が揃うことはなく、分かってくれないことへの恨みや憐れみで武力を行使しだす
その苦痛を味わったことが無い者には想像すらできず、ただ我儘なだけに思えてしまう
人間の考えを変えることはとても難しく、正確な意思疎通を取ることも不可能に等しい
何とも虚しく悲しい話だった
未来を手にするためには行動を止めてはならず、死という誘惑に抗って進み続けなければならないのだ
投稿元:
レビューを見る
下巻に入ると、上巻で語られていた4人の“学生生活”はすっかり消え失せ、清の持つ銀を狙って戦争を仕掛けようとする陰謀が焦点となる。歴史改変ものでもあるため、史実からどこまで外れていくかも読みどころだ。
想定外の展開が多かった割には彼らの抵抗の行方は大体想像通りだったけれど、希望を感じさせるエピローグがよかった。
全体を通して振り返ると、スチームパンクの世界観に補強として銀と言語(翻訳語)を用いた魔法をかぶせ、魅力的な4人の学生を配置した感じかな。ハリポタほど魔法色は強くなかった。
投稿元:
レビューを見る
以下ネタバレしてます!!!
架空歴史学園ファンタジー? いやいや、これは、革命史。そう、タイトルは「バベル オックスフォード翻訳家革命秘史」後書きによれば、英語タイトルでは「バベル、あるいは暴力の必要性 オックスフォード翻訳家革命秘史」だそうで、助長なので「あるいは暴力の必要性」は削られたそう。読後に知ったけれど、たいへん的を射たタイトルだと思った。
上巻は楽しい。でも、ひたひたと変化が追ってくる緊張感を感じていた。ゆっくり澱が形成されていくように。生い立ち、血のつながり、搾取、差別、被支配、暴力、孤独。
上巻の終わりにそれまで澱のように沈んでいたものが撹拌され、衝撃的かつ決定的な事件が起こり、どうなるんだこれ?と、下巻に入る。
下巻はもう、心が痛かった… 時間は戻せない。
大英帝国の搾取と差別に対抗しようとする「ヘルメス結社」との関わり、個々の立場や想いが交差し、ドラマティックに描かれる。
そして、この本は「革命秘史」だったねと納得がいった。そして、「暴力の必要性」にも。
「暴力」が根底に流れるテーマだと読みながら思っていた。そもそもこの物語は「暴力」で始まっているのだし…ロビンの人生自体が帝国とラヴェル教授の搾取という暴力から発生している。
抵抗と革命のあたり、革命とは暴力的で個人的なものなのだな、と思った。わたしには賛同できる事よりできない事のほうが多かった。それは、どうにもできない状況に怒りを感じていたため。他に方法はなかったのかなと。自分がその立場ならどうするか、彼らはなぜその行動を選んだのか。考えさせられた。塔に残った人、去った人はそれぞれ自身をどう納得させたのか。描かれなかった人々の心情も思う。
結末は予想のできる事だったけど、そこに至るまでは少し長く感じた。最期は非常にエモーショナルな美しい描写だった。
ここから更にネタバレ↓
ラミーがもし生きていたら、たとえレティと分かり合えなくとも、状況は変わったのではとも思う。だけど、どんなに考えても、ラヴェル教授の殺害と死体遺棄をした時点で、詰んでいるように思えるんだ。
殺害を事故に擬装する事はできなかったのか、酌量の余地を考えなかったのか、相談できそうな支援者はいなかったのか。でも彼らが搾取される翻訳機械であると思えばそれもなかなか難しそうで。
ロビンは生きるための何もかもを失ってしまったと絶望したし、時間も状況も待ってくれなかった。
作者は最後の塔の破壊とロビンの自己破壊とあの呪文を揺るがないものにするために布石を打っていて、どうにも救えない。
有色人種で女性という帝国で非常に不利なヴィクトワールが希望を繋いでくれたのが救いだった。
投稿元:
レビューを見る
上下巻で価格違うくらい厚さも違うって珍しくね?その割に厚くて高い上巻は若者たちの成長物語が続いてオッさんはちょっと引きかけてたんやけど、上巻の最後からかなり畳みかけてくる怒涛の展開。いわゆるスチームパンクともちょっと違うんやろうけど、「屍者の帝国」とかあのあたりの時代の話ってええよね。元を辿ればホームズなんかな。
投稿元:
レビューを見る
CL 2025.4.7-2025.4.10
本書の原題が「バベル、あるいは暴力の必要性ーオックスフォード翻訳家革命秘史」であることを考えれば、このラストはある意味そのままで、予測できるけど。それでも下巻はなかなかに厳しい状況ばかりで切なくもある。
19世紀のイギリスの傲慢すぎる帝国主義、今に残る白人至上主義。決して過去の話ではない。
こういう作品が日本の若い人にももっと読まれるといいのにと思ってしまう。
投稿元:
レビューを見る
もし原題のうち省略された部分(バベル、もしくは〇〇)を知っていたら、どういう読書になっていたのか考えてしまう。しかも創元の紹介HPのファンタジーっぽい登場人物イラストとかの騙し要素に完全に誘い込まれたし。で、下巻からは怒涛かつ想定できる厳しい展開で、まさかこうなるとは正直思ってなかった。帝国主義のイギリスに翻弄される革命家たち。4人それぞれの避けられない運命は胸を打つ。現実と虚構を取り混ぜたスケールの極めて大きな異世界が構築されており、素晴らしい小説。この類の読書を習慣とする者は必読だと思う。
投稿元:
レビューを見る
評判は高いようだが、結局、アヘン戦争なんてどうでも良いので話に乗れなかったし、銀のパワーや語源、翻訳の話も響かなかったか。
投稿元:
レビューを見る
下巻は息をのむ展開の連続で、まさに「凄絶な青春」だった。言葉は単なる伝達手段じゃなくて、生きるための武器であり、祈りであり、それこそ魔法みたいなものなんだと思い知らされた
投稿元:
レビューを見る
物語は佳境に入り、登場人物がどんどん死んでいく。
バベルの塔を占拠しストライキを決行。ラッダイトやチャーチストと同盟し、議会の中国との戦争決議を阻止しようとする。同盟がすぐに結ばれるのは聊か安直。
「翻訳とはー他人の話に耳を傾け、自分の偏見を越えて、相手が言おうとすることをわかろうとすること。自分自身を世界に示し、ほかのだれかが理解してくれることを期待する。」
投稿元:
レビューを見る
アヘン戦争や産業革命の時代の英国を舞台にした魔法使い(翻訳家)たちの物語。中国との戦争を止めるため植民地に出自をもつ魔法使いが中心となってクーデターを起こす。
すでに銀を触媒にした魔法は英国のインフラとなっておりストライキによってそのメンテナンスをしないことで混乱を拡大させていく。すでにインフラとなったインターネットやこれからなるであろうAIに置き替えると、職業が失われることがどういうことか、寡占的に起業に技術が集中し資本や政治と結びつくことで権力がどう暴走するのかということを考えさせられる。
物語として面白いけど前半の丁寧な前提の描写に対して登場人物が簡単に死にすぎだなと感じる。