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名著……!
三点リーダーと、エクスクラメーションマークに、万感の思いを込めたい。
名著……!
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内容紹介
そういうことだったのか!
富野アニメを見ていた少年期の自分が膝を打ち、
富野アニメを書いていた脚本家の自分が納得する
富野監督解体新書でした。
――大河内一楼(脚本家)
『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』『Gのレコンギスタ』……。なぜその作品には強烈な個性が宿るのか。日本を代表するアニメーション監督の創作の謎を解き明かす!
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「演出の技」と「戯作者」。この二つを入り口にし、その相互関係に迫ることで、アニメーション監督・富野由悠季の姿に迫ることができるのではないか。(「はじめに」より)
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『鉄腕アトム』での経験/ストーリー主義をめぐるジレンマ/「アニメにもこれだけのものができるんだ」/方向性のコントロール/『機動戦士ガンダム』第1話の何がすごいのか/進行する状況の中へ/キャラクターを作るセリフ/アニメは「映画」でなくてはならない/『イデオン』で掴んだテーマ/自我と科学技術と世界/なぜ『逆襲のシャア』が代表作か/「根なし草」の限界と失敗/身体とお祭りと大地??
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キャリア60年に及ぶ軌跡と全監督作品を徹底解説。映像と膨大な制作資料に基づいてその思想をすくいあげ、新たな富野由悠季像を浮かび上がらせる画期的評論、ついに刊行!
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目次
はじめに 「アニメーション監督」としての富野由悠季を語りたい
第1章 富野由悠季概論――「アニメーション監督」とは何か
第2章 演出家・富野由悠季の誕生――出発点としての『鉄腕アトム』
COLUMN 富野監督作品全解説1 1968~1979
第3章 確立されていく語り口――『無敵超人ザンボット3』まで
第4章 一つの到達点――『機動戦士ガンダム』第1話
第5章 ニュータイプとは何か――戯作としての『機動戦士ガンダム』
COLUMN 富野監督作品全解説2 1980~1988
第6章 科学技術と人間と世界――『伝説巨神イデオン』で獲得したテーマ
第7章 変奏される主題――『聖戦士ダンバイン』から『機動戦士Zガンダム』へ
第8章 演出と戯作の融合――詳解『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
COLUMN 富野監督作品全解説3 1991~2022
第9章 運動と人間性――『機動戦士ガンダムF91』以降の演出術
第10章 失われる言葉と繋ぎとめる身体――『海のトリトン』から『新訳Zガンダム』へ
第11章 大転換、大地へ――『Gのレコンギスタ』への道のり
おわりに
人名索引
主要監督作品メインスタッフリスト
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富野由悠季に対して、ある程度の神性を見出している自分のような人間はいかにも偏った目線で氏の作品に触れざるを得ない。
本書は、もちろん富野由悠季を肯定的に捉える前提はありつつ、アニメーションの演出の技巧、そして戯作者としての存在感に焦点を当てている。
もとより富野由悠季に興味をもつ人間でなければ本書を手に取らないのでは、という制約はありつつ、富野由悠季について俯瞰的に、客観的に、世間と相対化しながらその性質と成果を評価しようという試みには最大限の敬意を評して向かい合うほかない。
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アニメ評論家である著者が演出家・戯作者という観点から富野由悠季を分析した一冊。確かにガンダムをはじめとする作品よりも(特にテクノロジーの進化が目覚ましい近年は)その思想面から語られることが多い富野を敢えてその演出術から語るというのは灯台下暗しというか盲点で新鮮だった。どの章も読み応え抜群。本書のためのインタビュー取材は実施せず(ただし著者は過去に富野への取材経験はある)あくまで作品や過去の文献・発言から富野由悠季という人物に客観的に迫ろうとする試みはまさに評論家の面目躍如。ベクトルや方向性の演出論なんかは一般的によく知られた話ではあるものの、富野作品を例に出しながら説明されると理解も感動も一入。また、執筆時期を考慮すると偶然と思われるが『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』が大きな話題を呼んでいるこのタイミングで『ガンダム大地に立つ!!』を徹底的に分析した第4章の価値が出版時期に高騰している現象までもが面白い。