『踊る大捜査線』より深い闇
2010/09/23 12:04
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
道警不祥事をめぐる一斉配置転換のあおりで、強行犯係の捜査員から一転、単身赴任の駐在勤務となった巡査部長の川久保。一見すると平和で健全な田舎町で起こる微かな異変に、彼の元刑事としての勘が反応した・・・「犯罪発生率、管内最低」の実態は、「犯罪が発生しない」ということではなく、「犯罪が表沙汰にならない」ということだったのだ!
川久保は制服警官という立場から、独自の「捜査」(本来は権限外)に乗り出す・・・・・・
駐在の聞き込み情報を軽視する所轄の捜査員や、よそ者を嫌い犯罪や不祥事を隠蔽しようとする地元有力者に苦しめながらも、僅かな手掛かりを基に、地道かつ執拗に事件の真相を追及する主人公の(派手さとは無縁な)泥臭い奮闘が眩しい、極めてリアルな警察小説。
「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」とは、『踊る大捜査線』で本庁の傲慢なエリート意識と無責任な官僚主義に憤る所轄の青島俊作巡査部長(湾岸警察署刑事課強行犯係)の名言であるが、本作では所轄署に翻弄される駐在という、更に下のレベルでの悲哀が描かれている点(警察ものではあるが刑事=捜査員が主役ではない点)に最大の特質がある。また日本的ムラ社会に潜む腐臭という舞台設定も巧妙である。
連作短編形式となっており、最後の中編では、これまでの短編での不完全燃焼ぶりを晴らすかのように川久保が見事な活躍を見せ、爽快な読後感がある。
4人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カラス - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編集だが、
二つ読んだところでやめた。
なぜなら、ワンパターンだからだ。
平穏に見える田舎の町が実は
事件に満ちていた。
ただ、それだけのワンパターン。
大衆文学はワンパターンの文学に過ぎないが、
これもその例にもれない。
同じような話をいくつも書かれても
飽きてしまうし、
文学的にもおもしろくない。
活字中毒者にはたまらないかもしれないが、
文学を魂の問題と考えている人間には、
ちょっとどうでもいい作品だった。
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この頃読みかけで放置してある本が多いです。
とりあえず片付けていこう、と読み始めました。
この方の短編集を読むのは初めてです。相変わらず緻密で隙のない物語運び。この作品を読んでその地に住まう人間達と警察と言う組織の意識の差が出ててなるほどなあ、なんておもいました。犯罪をなくしたい、犯罪者をなくしたいという思いは一緒でも違うんだな、と。罪と罰って難しいなあとも思いました。警察に捕まる事件ならば罪で捕まらないような事は罪ではない。真実を暴くだけで丸く収まるのだろうか?隠蔽することにより事態は解決するのだろうか?難しい問題だな、と思いました。
面白かったです。
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1).目次
省略
2).筆者の主張
省略
3).個人的感想
テーマは地味だが一つ一つのストーリー内容が秀逸。よくできた本だと思う。
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面白かったです。堪能できました。5作品からなる連作短・中篇集です。駐在勤務の警官にスポットを当てた一見地味な印象ですが、とんでもないです。リアリティありすぎです。一気に読んでしまいました。
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「笑う警官」と同じく、稲葉事件(本作ではそのまま名前が出てくる)を下敷きにした設定。
捜査権限のない駐在(つまり、制服捜査)を主人公に、田舎町で起こる事件を描く。
駐在とはいえ川久保は捜査経験があり、嗅覚は鋭い。淡々と、ツボを押さえた任務をこなしていく。
最初の「逸脱」で、川久保が上杉を死なせたような気がしたのが引っかかって、なかなか入り込めなかったが、
結局面白く読んでしまった。
特に、大工の大城の話と、最終話が印象的。
『被害者を出さないことじゃない。犯罪者を出さないことだ。それが駐在警官の最大の任務だ。・・・田舎町ってのは、なにより犯罪者を作ってほしくないんだ。それが田舎だ。・・・ときには町の側についてでも、犯罪者を出さない世に努めなければならないのさ』
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先に紹介した「暴雪圏」の前巻。
北海道道東の駐在さんのお話。閉鎖された村社会の中で、町から来た元刑事の駐在さんの苦悩が克明に描かれています
短編集ですが一編一編中身が濃く、読み応えがありました。どの話も詳しく書き込めば長編になりそうなストーリーばかり。面白かったです。
最後の「仮装祭」で「警官の血」につながる伏線が出てきたりして、ファンにはうれしいストーリーもあります。
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最後の「ゴゴゴゴゴゴ」感は好きだが、
やや間延び。
各回の背景にある「理不尽さへの憤り」は好み。
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今年最後の読みきりの本かなーーー。
おもしろかった!
北海道の田舎に駐在してる巡査の話で、直接逮捕とかはできないんだけど、街の人との交流を通じて、捜査。犯人を見つけ出す。
そしてその犯人にぐさりという言葉を投げかける。
短編で読みやすい。
特に、ひきこもりの子と、前科もちの男(出稼ぎに来た)を車上あらし犯人にして出て行かせちゃうような話しが印象的。
人の心もしっかり反映されているそんな話でした。
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佐々木譲氏初読み。短編連作で面白かった。最初の一編の衝撃で終わりまで読みとおせる感じ。
6千人規模の町で起きる事件にしては無理が?と思いはしたものの、現実にも実は・・・っていうことはあるのかもなと思いながら読んでいた。最後の一編でそうした疑問にもあぁ、なるほどと一応納得出来る。着任前からガラスは割れ始めていた、と。
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札幌の刑事だった川久保篤は、道警不祥事を受けた大異動により、志茂別駐在所に単身赴任してきた。十勝平野に所在する農村。ここでは重大犯罪など起きない、はずだった。だが、町の荒廃を宿す幾つかの事案に関わり、それが偽りであることを実感する。やがて、川久保は、十三年前、夏祭の夜に起きた少女失踪事件に、足を踏み入れてゆく―。警察小説に新たな地平を拓いた連作集。
田舎ならではの風習ってあるよなぁ・・・・
という感想と、制服を着た駐在さんのような方は事件を捜査することはできないんだ!
と今回初めて知りました。。。
いやー
学びだなぁ。。。
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ずっと気になってた1冊。制服警官が捜査するって組織上ジレンマがあるから、どういう風に描くんだろうなぁ~と思ってたら、全然違和感なく読める。
まず、主人公の川久保篤が元刑事であるということ。北海道警の不祥事で駐在所に単身赴任してきた。だから駐在警官らしからぬ、刑事目線で街の出来事を眺めている。ただ巡回するだけでなく、街の人たちに聞き込みをしたりもする。警察小説を読んでいる人には馴染みのある文章運びなわけだ。
時には、所轄の刑事たちの捜査方針にも意見を言う。駐在警官であるからこそ、地元の人たちから見える部分がある。なかなかその意見が通ることはないが、最後には必ず真実を突き止めようとする。
事勿れ主義でない点も魅力的。駐在ともなれば、地元の人となあなあになる部分があることも否めない。だが、本当に軽微の微罪は見逃しても、事件にすべきものはきちんと事件にする。例え、閉鎖的なコミュニティで噂がつきまとうような街でも、本当に悪質な犯罪者を野放しにすべきではない。そんな姿勢がうかがえる。
5編の短編集だが、それぞれの終わり方がまたうまい。事件の解決までや関係者のその後を全部書かずににフェイドアウトしたりして、良い意味で後味の悪い印象を残したりする。
とても良かった。続編が楽しみである。
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この作者の本は三冊目。一気に読んだので、若干飽きてきたが、やはり面白い。今後、警察小説を読んでみたいと思わせる程に、楽しめた。
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常識や正義。
これらは状況で変わるものなのだろうか。
自分の「正義」を持っていても、周りの人にとっては「悪」となってしまう。こんなこともないとは言えない。
他の地域から離れた田舎。
しかも、そこに住んでいる人同士もほとんどが知り合い。
こんな中に飛び込んで、周りの人とは違う「正義」を持ち続けられるのだろうか。
それはとても難しいことのように感じた。
そんな中で諦めなかった主人公の川久保さんは本当にすごい。
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気持ちよく解決しているのは最後の作品だけで、あとは「何なん?!」って感想を持ちました。
警察の現実の姿なのかもしれませんが、せめて小説の中でくらい、解決してほしいテーマが多かったので、星1つです。