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女性皇族の役割の重要性:
本書では、特に「女性皇族の存在がクローズアップされるようになった決定的な出来事」として、1959年(昭和34年)4月10日の現上皇と美智子上皇后のご成婚を挙げています。
これは、それまで皇族と結婚するのが皇族や華族の女性に限られていた中で、「まさに平民の家である」日清製粉創業者の三男の娘である美智子上皇后が皇太子と結婚したことで、「開かれた皇室」の象徴となったと述べています。
このご成婚以降、「美智子上皇后に対する国民の関心は高かった。その動向は、さまざまな形で取り上げられてきた」。
女性皇族、特に美智子上皇后や雅子皇后は、「開かれた皇室」のイメージ形成において決定的な役割を果たしてきたと強調されています。雅子皇后は、美智子上皇后から「開かれた皇室の担い手として、ずっ と重要な役割を果たしてきたこと」を受け継いでいると述べられています。
愛子内親王が女性であることも、そのカリスマ性を高めることに貢献している可能性が指摘されています。
皇位継承問題:
皇位継承は「危機に陥った」とされており、皇室継承が「男系男子に限定される」ことへの問題提起がなされています。
国民の間では、「愛子天皇」を望む声が高まっていることが示唆されています。
2019年11月にNHKが行った調査では、「女性が天皇になるのを認めることに賛成か?」という問いに対して、賛成が71%という結果が出ており、「開かれた皇室というあり方は、国民からの支持も集めている」。
「女系天皇」についても、国民の意識が十分ではないとしながらも、「『女系』天皇を認めることに賛成か?」という問いに、賛成が71%と高い割合を示しています。
保守派は女性天皇に反対し、女系天皇を認めようとしない傾向がある一方で、女性皇族が「開かれた皇室の担い手として、ずっ と重要な役割を果たしてきたこと」が、こうした国民の支持に大きく影響していると分析しています。
皇位継承の不安に対する「女性宮家」創設案についても触れられています。
皇位継承順位にある悠仁親王が、小説の中で「皇籍離脱」する可能性に言及されており、これは「愛子天皇が誕生する経緯」に関わるとされています。
歴史的に見ても、皇位継承を巡る悲劇や、皇位継承資格者が複数いる危険な状態が存在したことが述べられています。
皇室と国民の関係:
皇室は日本国憲法において「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」とされていますが、天皇が果たさなければならない「国事行為」の重要性が強調されています。
国事行為には、内閣総理大臣や最高裁判所長官の任命などが含まれ、天皇が不在になれば「日本国はその瞬間に機能しなく」なると指摘されています。
皇族は、国民と接する機会が多くあり、その動向が注目されています。特に、美智子上皇后は積極的な公務を行い、国民との距離を縮めたと評価されています。
悠仁親王が成年皇族としてデビューし、国民は今後の悠仁親王の動向に注目していることが述べられています。
近年、メディアによる報道、特に週刊誌の見出しなどによって、国民の皇室に対する印象が大きく変わる可能性があることが示唆されています。眞子さんの結婚を巡る報道は、「『いじめ』という言葉の波紋」を生んだと表現されています。
歴史的視点からの皇室考察:
平安時代の皇族の姿や、摂関政治における藤原氏の役割、そして「院政」や「女院」といった制度が解説されています。
歴史上の女性天皇の時代についても触れられており、特に孝謙天皇・称徳天皇の時代に焦点が当てられています。称徳天皇が道鏡を皇位に就かせようとしたことなどが記述されています。
伊勢神宮の斎王となる内親王の道のりが説明されています。斎王は伊勢神宮に奉仕する役割を担い、皇室と密接な関係を持つ存在でした。
皇室の教育についても歴史的な視点から考察されており、学習院が皇族や華族のための教育機関として設置された経緯や、明治以降の天皇の教育方針が述べられています。特に、昭和天皇が生物学を研究するようになった背景に、歴史を深く学びすぎると特定のイデオロギーに染まることを危険視する西園寺公望の考えがあったことが記されています。
江戸時代の天皇の勤めとして学問が挙げられていたこと、そして「禁中並公家諸法度」に「天子諸芸能のこと、第一は御学問なり」と記されていたことが紹介されています。
象徴天皇制の未来:
象徴天皇制は、「形成期の終焉」を迎えていると示唆されています。
第二次世界大戦後、天皇が「現人神」であることが強調されていた時期を経て、天皇や皇族に対するタブーがなくなりつつある現状が述べられています。
保守派は男系男子による皇位継承に固執しているが、現在の皇室が抱える危機を増幅させていると批判的な視点が示されています。
国民の意識の変化や、皇族の公務のあり方などが、今後の象徴天皇制のあり方に影響を与えることが示唆されています。