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はじめに
- 王子さまの行動と悔い
王子さまは、彼が出会ったバラを小さな星に置き去りにしたことを悔いている。彼は、そのバラが他のどのバラとも異なる特別な存在であることに気づいたが、その理由は彼がそのバラを育て、守ってきたからである。
- 責任の自覚
王子さまは、自分が愛していたバラを置き去りにしたことに対する責任を認識し、再び小さな星に帰る必要性を感じる。この物語は、責任を引き受けることの重要性を示している。
- バラに対する王子さまの感情
王子さまは、当初バラに対して不愉快さを感じていたが、彼が地球で出会ったキツネからの助言を受け、バラとの関係を再評価することになる。これは、彼が自分の感情と責任を見つめ直すきっかけとなった。
第一章: 自己責任論の構造
- 強い責任と弱い責任
本書では、責任の主体を「強い存在」として捉える自己責任論が紹介されているが、これだけでは不十分であり、他者との関係から切り離された理解は適切ではないと主張されている。
- 責任を引き受けることの意義
責任を引き受けることは、他者との密接な関わりが必要であり、これにより責任の理解が深化する。自己責任論の限界を認識し、他者との連帯感を重視する必要がある。
第二章: 決定論と自由意志
- 決定論の影響
決定論は、自由意志の存在を否定する可能性がある。人間の行動が因果的に決定されるとする見解に対し、自由意志の概念は他行為可能性を伴わなければならない。
- 実験と論理的矛盾
リベットの実験などを通じて、自由意志が脳内の変化に先行していることが示され、これが決定論の支持と見なされる。しかし、この実験は決定論を必ずしも証明するものではない。
第三章: 二階の欲求説
- 欲求の高階化
二階の欲求説は、欲求が無限に高階化する可能性を探るが、人格の破壊を防ぐためにはどこかで歯止めをかける必要があるとする。
- 自己統制方針の導入
プラットマンによる自己統制方針の概念は、自己の行動を長期的に見据えた目標に基づいて調整することを提唱し、自由意志の理解を深める。
第四章: 物語的責任概念
- 行為の意味づけ
行為が行われた後にその理由が解釈されることが重要であり、物語的責任は行為の理由を問われることによって成立する。
- 悪の陳腐さと訂正可能性
アーレントの考えに基づき、物語の訂正可能性は倫理的な側面を持ち、過去の行為に対する解釈が変わることで責任が再評価されることがある。
第五章: 許しと約束の概念
- 活動と許しの関係
許しは、人間の活動が生む予見不可能性を制御する手段であり、他者との関わりが重要であると強調される。
- 約束の重要性
約束は未来に対する安定性を提供し、物語の訂正可能性に対する指針を与える。
第六章: 物語の核
- 物語の同一性と訂正
人生の物語には「堅い核」があり、予想外の出来事が発生した場合に物語の同一性がどう変わるかが論じられる。
- 科学哲学との関連
クー��のパラダイム論が人生の物語の訂正にどのように当てはまるかを探求し、科学的な探究の変化を通じて物語の理解を深める。
おわりに
- 王子さまの成長
王子さまは、地球での経験を通じて自分の行動を見直し、責任を引き受けることの重要性を学ぶ。
- 物語の再解釈
彼の経験は、愛されるに値しないバラとしての再解釈を導き、彼が持っていた自己理解を深める要因となる。
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本書は、人がどのように責任を引き受けられるのかを、自身の人生を「物語」として解釈することで考察する。
責任を引き受けるとは、ある行動をした結果形成された現状を、他責にすることなく受け入れることである。ではある行動をする事を自由意志で選ぶために、我々はどのような判断を行うのだろうか。
筆者は、判断を行う指針を、自身の人生=物語とすることで、その中心にある核を主人公、つまりはその人自身とする。自分の物語の主人公が自分であることで、人は責任を引き受けられる。責任は、自分の物語の核があるからこそ、成り立つのだ。
ただ個人的に思うに、各々の物語とは、様々な要因から成り立っている物語であり、その物語をベースして判断したものは全て責任を持つことができるのだろうか?
人は様々な側面を持っており、おそらく物語を使い分けている。仕事での自分と家庭での自分は、果たして同じ判断基準で選択して、責任を引き受けられるのだろうか。
誰もが何かしらの責任が課せられる立場にある世の中、一度本書で自身と責任の距離感を測るのも良いだろう。
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筆者の新書で紹介された「弱い責任」という概念提起から、彼の専門とする責任論に興味をもったが
おそらく先人を掘り下げた専門書の類よりかは、本著が広い範囲をすくっていて導入として適していた。
厳密な論証のもとで本著のような読書的満足感はそうそう得られないだろうし、そもそもよく生きるという前提のもとで語られる哲学講義がどれほど蓋然性があるのかとニヒリスティックに傾く面もあるのだが、一時期脚光を浴びた正義論のような世間にインパクトを与える哲学的な主義主張の中で、責任論という分野はより注目を浴びてもいいのではないかと思われる。
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責任という概念へ解像度が上がり、面白かった。文章は簡潔かつ納得感があった。自分の人生が本書の言う通りかなあと気になる。
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「物語」と「責任」がどう紐づくのかを楽しみに本書を読み始めた。
一段一段検討を積み上げていく方式で、最初から順番に読まないと書いてあることがわからなくなるので注意が必要。
概ね趣旨は理解できたが、後半の「物語」の議論があまり腹落ちしなかった。
おそらく自分の物語というものがイメージつかなかったからだと思う。
とはいえ全体の流れは納得するところが多く、責任が自暴自棄につながる一方で、自己肯定感にも寄与するという説明は、漠然と自由には責任が伴うがだからこそ自由なのだと思っていたこともあって、特に共感した。
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図書館新刊コーナーより。
『星の王子さま』を扱いながら責任を論じるというのが面白いと感じ、借りてみた。
読み始めると、王子さま部分はほとんどなく、「責任」の解像度を上げていく文章だった。
そこまで興味が無かったので、流し読み&最後の部分だけ時間かけて読んだ。
「責任をとる」って、「こうしたら許してあげる」というのがないと、成り立たないのかなと思った。