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5件
光炎の人
著者 著者:木内 昇
日露戦争の行方に国内の関心が集まっていた頃。徳島の貧しい農家に生まれた少年は、電気の可能性に魅せられていた。電気で人々の暮らしを楽にしたいという思いを胸に、少年は大きな一歩を踏み出す。
光炎の人 下
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2017/06/30 00:23
かなしいなあ、トザ
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんとも、そうなるかあという結末。音三郎、最後の最後まで不器用だった。彼は悪い人ではないんだ。純粋で、自分の仕事が大好きでそれを世間に認めてもらいたいと切に願っている。だから日夜、なんというか人間として大切な心すら置き去りにして研究して実験してを繰り返し年を重ねてきた。人を疑うことを知らないあまりに、自ら不幸な結果を招いてしまう。でも彼はそれに気づきもしない。研究者、技術者の悲哀を見事に書ききったなあ、木内さん。素晴らしいです。音三郎、がんばったよ。本当に。時代に翻弄されてしまった無線馬鹿の物語。お見事。
2017/06/29 09:33
トザ、行け!
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
徳島出身、煙草農家の三男、機械、電気に魅せられ自分の行く道を模索している青年音三郎。明治から大正、まだまだ簡単に情報が入ってくる時代ではない。世相への嗅覚を鋭くし、いかに能動的に動けるか。何かを成し得ている男はだいたい貪欲だ。音三郎は少し違う。完全に研究者。好きなことだけずっと考えていたい。彼には驚くほどの出会い運がある。だから研究に没頭していても、向こうから出会いがやってくる。最高に幸運な男だ。上巻ではまだ何も成功していない。準備段階。下巻ではどのように抜け出していくのか。とても楽しみ。トザ、やったれ。
光炎の人 下
2016/10/01 08:50
茗荷谷の猫を感じさせる出来映え!
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近の木内さんの作品はどれも良かった。
一途に生き続ける人間ドラマが上手く描かれていた。
本作も貧農の三男坊から独学で学び考え技術者の道をつかみ取る音三郎が主人公。
しかし、本作は物語に漂う空気が違います。
父親の言葉や兄達の空々しい態度から音三郎の出生にも秘密が感じられるが、音三郎は気にせず機械の開発に没頭しながら物語は進む。
チャンスを掴むため学歴を偽り出世し、自分の出生に関わるミツ叔母との東京での同居。
音三郎の誰も成し遂げられていない開発を世に出したいという夢とチャンスをつかみたい欲望と実体のない生き方が、読者を不安な気持ちにさせる。
不安、恐怖、怒りなど様々な感情を揺さぶられながら読み進められた読後感は「茗荷谷の猫」に通じるものがある。
最近の品行方正な物語に人間の奥底に潜む毒々しい卑しさを漂わせ、人間ではない何か得体の知れないものが主人公として描かれている。
木内さんの今後も楽しみです。