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11件
スタープレイヤー
著者 著者:恒川 光太郎
路上のくじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた斉藤夕月(34歳・無職)。そこで10の願いが叶えられる
「スタープレイヤー」に選ばれ、使途を考えるうち、夕月は自らの暗い欲望や、人の抱える祈りの深さや業を目の当たりにする。
折しも、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていく。
光と闇、生と死、善と悪、美と醜――無敵の力を手に、比類なき冒険が幕を開ける!
鬼才・恒川光太郎がRPG的興奮と神話世界を融合させ、異世界ファンタジーの地図を塗り替える、未曾有の創世記!
ヘブンメイカー
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2019/08/21 10:08
危険な出発点
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
始まりはなんとなく小金井あたりから。
いやまずいって、くじ引きで古賀亮一が一等を引いてたらどうするんだい!?
三津田信三(武蔵名護池→武蔵小金井)がたまたま外出してたらどうする気だい?
エルフばかり出現させて星十個使い切っちゃったり、アレとソレを無闇に出してヒタッヒタッ、ペタペタとうごめかせてしまうよ。
震えるほどの完成原稿で惑星を埋め尽くして、股間のバッジがはなはだ反応したり、暗闇をあれがひたひたと動き回り「マキオさんがいないと話が珍道中になってしまう」と書きながら珍道中にしてしまうよ。
だけど主人公が斉藤夕月(女性・無職・34)だから、自分が主役のメタフィクションに書き換えられる心配はないよ。
石松君もただのプログラムだから全然いやらしくないよ。安心だね。
既に定評がある作家だけれども、人物の視点から世界を構築する手法はそのまま、一見ぶっ飛んだSFかと思わせておいて、国籍不明のハイ・ファンタジーに一気に引きずり込まれる。
自分の脚を切った男とのやり取り、前夫との諍い、それを招いた小僧との火遊びに興じた懊悩。
全能に近い力を手にしながらそれによって破滅し、望んで出現させた世界に飽いてしまい自らを消し去るプレイヤー。
カプリマルグの独白は強烈だった。
「一人だけ真実を知っているってプレッシャーに耐えられなくて、怖くって、オメーを呼びつけて、相談したってわけだ。」
こうしたセリフ回しや動機付けがうまく、妙な現実感と重たさを持たせている。
適度な緩急と、冗長にならないよう配慮された構成もあって、読み進めるのは苦にならないどころか、一気に読み終えてしまうのではないだろうか?
フルムメアは世界の創造主なのか?かつてこの問題をめぐって、小野不由美も犯した手痛い失敗。
本作ではそれ自体を詮索しても意味のない存在にされている。
それこそ、honto.jpが物理的にどこのサーバーに格納されているか?なんて聞くようなものだ。
まだ見ぬ大都市"ヘブン"を見る日はくるのか、続刊をお楽しみに。
2019/10/04 22:45
全能の神、その視座を手に入れる機会
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『スタープレイヤー』の続編だが、作中時間は四半世紀以上も遡る。なお、どちらからお読みになっても問題ない。
大学生の佐伯逸輝が綴る「サージイッキクロニクル」、死の記憶を留めたまま二度目の生を与えられた鐘松孝平、佐伯が旅の途中で出会ったレビ、殺人を働き日本から転生させられた二階堂恭一。
多数の人物の視点からなる複層的な構成は作者ならでは。容易に解けない厚みのあるファンタジー世界を構築している。
文庫版の解説では大森望が、宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー』を挙げているが、テリー・ブルックス『ランドオーヴァー』シリーズ、DWジョーンズ『ダークホルムの闇の君』、小野不由美『十二国期』シリーズも挙げておきたい。
愛妻を亡くし失意のどん底だった弁護士のベン・ホリデイと、漠然とだが検事を目指していた佐伯が重なって見える。
眼前に現れた異世界、遠大な砂漠から始まり移動距離は相当なものと推察される。
給油回数や道程の所要時間から逆算すると相当に広大だが、短編並みに挿話が圧縮されていることもあり、遠大な行程ながら距離感が掴めづらい部分がある。
さらなる長編に化ける可能性も感じさせるが、短編を得意とする作者でもあり惜しい部分だ。
死者の町「ヘブン」で新たな生を与えられた人々。
若く発展途上の町は未知の世界への畏れ、一方で新しい社会を築く活気に満ち満ちている。
現代の利器も持ち込みつつ独自の発展を続けるレゾナ島、他方で大陸に位置するイストレイヤは、多くの民族・部族を抱え未だ暗黒世界の臭いも強い。
虚構の聖典と聖存在(二十四神は十二神将から?)、作中の時間よりはるか古い祖を持つこれらもスタープレイヤーの創造に違いないだろうが詳細は明かされない。
「希望の鍵」なる隠喩は、「ノーゲーム・ノーライフ」的なカードゲームと、精神医学の権威M・セリグマンが提唱した「学習性無力感」を挙げてみる。
著作『オプティミストはなぜ成功するか』で「立ち直るためのカギは希望である。」と言った言い回しがある。平易な読み物も多くお時間があればご覧頂きたい。
成長していく人々と変わることを拒む人。その移ろいと機微が簡潔ながら丁寧に書かれているのだが、やはり駆け足で追従が難しい部分もある。時系列と章段構成が綿密なだけにもったいない。
終幕で佐伯が犯した致命的ミス、忘却の寸前で「なにが本物か」を悟った彼の悔恨は『滅びの園』の着想にもつながったようにも見える。
あらゆる事象を見通せる読者、フルムメアの代理を務めたご気分はいかがだろうか…。
ヘブンメイカー スタープレイヤー 2
2016/03/31 22:34
またまた続きが気になる・・・
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はんちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
待ちに待ったスタープレイヤー続編!ロールプレイング感満載のシリーズで今回も一気読みです。人間の本質って何?考えさせられると共にラスト予想外の展開にドキドキが止まりませんでした。恒川作品は金色機械も好きだけど、スタープレイヤーは若者向けで読みやすいと思います。