電子書籍
スタープレイヤー
著者 著者:恒川 光太郎
路上のくじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた斉藤夕月(34歳・無職)。そこで10の願いが叶えられる
「スタープレイヤー」に選ばれ、使途を考えるうち、夕月は自らの暗い欲望や、人の抱える祈りの深さや業を目の当たりにする。
折しも、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていく。
光と闇、生と死、善と悪、美と醜――無敵の力を手に、比類なき冒険が幕を開ける!
鬼才・恒川光太郎がRPG的興奮と神話世界を融合させ、異世界ファンタジーの地図を塗り替える、未曾有の創世記!
スタープレイヤー
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電子書籍スタープレイヤー
2019/08/21 10:08
危険な出発点
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
始まりはなんとなく小金井あたりから。
いやまずいって、くじ引きで古賀亮一が一等を引いてたらどうするんだい!?
三津田信三(武蔵名護池→武蔵小金井)がたまたま外出してたらどうする気だい?
エルフばかり出現させて星十個使い切っちゃったり、アレとソレを無闇に出してヒタッヒタッ、ペタペタとうごめかせてしまうよ。
震えるほどの完成原稿で惑星を埋め尽くして、股間のバッジがはなはだ反応したり、暗闇をあれがひたひたと動き回り「マキオさんがいないと話が珍道中になってしまう」と書きながら珍道中にしてしまうよ。
だけど主人公が斉藤夕月(女性・無職・34)だから、自分が主役のメタフィクションに書き換えられる心配はないよ。
石松君もただのプログラムだから全然いやらしくないよ。安心だね。
既に定評がある作家だけれども、人物の視点から世界を構築する手法はそのまま、一見ぶっ飛んだSFかと思わせておいて、国籍不明のハイ・ファンタジーに一気に引きずり込まれる。
自分の脚を切った男とのやり取り、前夫との諍い、それを招いた小僧との火遊びに興じた懊悩。
全能に近い力を手にしながらそれによって破滅し、望んで出現させた世界に飽いてしまい自らを消し去るプレイヤー。
カプリマルグの独白は強烈だった。
「一人だけ真実を知っているってプレッシャーに耐えられなくて、怖くって、オメーを呼びつけて、相談したってわけだ。」
こうしたセリフ回しや動機付けがうまく、妙な現実感と重たさを持たせている。
適度な緩急と、冗長にならないよう配慮された構成もあって、読み進めるのは苦にならないどころか、一気に読み終えてしまうのではないだろうか?
フルムメアは世界の創造主なのか?かつてこの問題をめぐって、小野不由美も犯した手痛い失敗。
本作ではそれ自体を詮索しても意味のない存在にされている。
それこそ、honto.jpが物理的にどこのサーバーに格納されているか?なんて聞くようなものだ。
まだ見ぬ大都市"ヘブン"を見る日はくるのか、続刊をお楽しみに。
電子書籍ヘブンメイカー
2019/10/04 22:45
全能の神、その視座を手に入れる機会
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『スタープレイヤー』の続編だが、作中時間は四半世紀以上も遡る。なお、どちらからお読みになっても問題ない。
大学生の佐伯逸輝が綴る「サージイッキクロニクル」、死の記憶を留めたまま二度目の生を与えられた鐘松孝平、佐伯が旅の途中で出会ったレビ、殺人を働き日本から転生させられた二階堂恭一。
多数の人物の視点からなる複層的な構成は作者ならでは。容易に解けない厚みのあるファンタジー世界を構築している。
文庫版の解説では大森望が、宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー』を挙げているが、テリー・ブルックス『ランドオーヴァー』シリーズ、DWジョーンズ『ダークホルムの闇の君』、小野不由美『十二国期』シリーズも挙げておきたい。
愛妻を亡くし失意のどん底だった弁護士のベン・ホリデイと、漠然とだが検事を目指していた佐伯が重なって見える。
眼前に現れた異世界、遠大な砂漠から始まり移動距離は相当なものと推察される。
給油回数や道程の所要時間から逆算すると相当に広大だが、短編並みに挿話が圧縮されていることもあり、遠大な行程ながら距離感が掴めづらい部分がある。
さらなる長編に化ける可能性も感じさせるが、短編を得意とする作者でもあり惜しい部分だ。
死者の町「ヘブン」で新たな生を与えられた人々。
若く発展途上の町は未知の世界への畏れ、一方で新しい社会を築く活気に満ち満ちている。
現代の利器も持ち込みつつ独自の発展を続けるレゾナ島、他方で大陸に位置するイストレイヤは、多くの民族・部族を抱え未だ暗黒世界の臭いも強い。
虚構の聖典と聖存在(二十四神は十二神将から?)、作中の時間よりはるか古い祖を持つこれらもスタープレイヤーの創造に違いないだろうが詳細は明かされない。
「希望の鍵」なる隠喩は、「ノーゲーム・ノーライフ」的なカードゲームと、精神医学の権威M・セリグマンが提唱した「学習性無力感」を挙げてみる。
著作『オプティミストはなぜ成功するか』で「立ち直るためのカギは希望である。」と言った言い回しがある。平易な読み物も多くお時間があればご覧頂きたい。
成長していく人々と変わることを拒む人。その移ろいと機微が簡潔ながら丁寧に書かれているのだが、やはり駆け足で追従が難しい部分もある。時系列と章段構成が綿密なだけにもったいない。
終幕で佐伯が犯した致命的ミス、忘却の寸前で「なにが本物か」を悟った彼の悔恨は『滅びの園』の着想にもつながったようにも見える。
あらゆる事象を見通せる読者、フルムメアの代理を務めたご気分はいかがだろうか…。
2016/03/31 22:34
またまた続きが気になる・・・
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はんちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
待ちに待ったスタープレイヤー続編!ロールプレイング感満載のシリーズで今回も一気読みです。人間の本質って何?考えさせられると共にラスト予想外の展開にドキドキが止まりませんでした。恒川作品は金色機械も好きだけど、スタープレイヤーは若者向けで読みやすいと思います。
2015/12/24 13:42
ファーマーの「階層世界」を越える世界観・宗教観
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タンポポ旦那 - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作では恒川作品としては違和感を感じたのは確か。しかし、SFファンタジーとしては良い出来だった。それが本作では、よりSFライクで、しかも「夜市」以来、読者を魅了してきた独特の恒川光太郎世界が感じられる作品となり、前作はこのシリーズのプロローグだった、と改めて気付かされる。
「金色機械」で新たなSFアプローチを目指している気がしていたが、ここに至って“恒川光太郎ジャンル”としてのSFシリーズが開幕したようだ。
異世界ともパラレルワールドともいえる著者が創造した世界は、開拓の魅力にあふれるとともに、多彩なスタープレイヤーを投入することで著者の世界観・人間観など多様なテーマが展開できる世界でもある。
本巻では、一種の宗教観が盛り込まれ、フィッリプ・ホセ・ファーマーの「階層世界シリーズ」を彷彿とさせるばかりか、今後、それにも勝る傑作シリーズとなりそうな予感さえ抱かせる。
紙の本スタープレイヤー
2017/09/20 23:34
これぞファンタジー!
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かな - この投稿者のレビュー一覧を見る
これぞまさにファンタジー!といった感じのワクワク感満載の1冊でした。海外文学にありそうなRPG要素を兼ね備えた展開で、あまり本を読まない人でもつい引き込まれてしまいます。続編も出ているそうなので、読むのが楽しみです。
紙の本スタープレイヤー
2017/08/31 15:39
人はなんでも出来る時に何をするのか?
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
初見の作家さんです。
とても読みやすい文章でした。
とにかくスラスラと読めてしまいます。
主人公を女性にしたことがとても重要で成功だったように思いました。
それは様々なことの選択の自由という意味で、これだけ男女同権とか言われて久しいけれど現実のこの世界ではまだまだ女性の方が制限が多くあるように私が感じるからです。
あと男性だと戦争の場面でもランボーみたいな超人的ヒーロー活劇になりやすいところを女性にしたことで、自分という個人の意思に関係なく巻き込まれる立場からの戦争や争いを描くことが上手くなされていたと思います。
ファンタジーとしてとても楽しい物語ですが、その中に込められた問いかけはとても根源的で大切なものばかりでした。
数が10と限られているとはいえ、全知全能の力・神のような力とも言えるもの与えられた時、人は何を考えどう行動すべきなのかを本当に真剣に考えることができるのか?
もっと現実に近づけて考えると「自由」とはどのようなことなのかを問われているように感じた作品でした。
2016/02/28 18:03
読みながらついつい考えてしまう
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まもり - この投稿者のレビュー一覧を見る
話がどんな風にも広げられて、基本なんでもありになってしまう難しさの中、沢山の人の思惑も予定通りにいかない不都合もあり、どういう展開になるのか気になって一気に読んでしまった。読書中もよく「私だったらどんな願いをするだろうか」と折々に考えては、考える度に混迷し、毎回「どんな願いをしていいかわからないなー」という結論に至った。よくまあこのような話を思いつくものだ!と前回同様作者に感心し、続きが出たら必ず読もう!と鼻息荒く思うのであります。
紙の本スタープレイヤー
2020/04/22 06:31
RPGのような?
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投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
何の前触れもなく異世界に飛ばされて、
10の願いを叶えてくれるという始まりで、
まずは自分の周りから世界を作っていく設定が
RPGのようでした。
電子書籍スタープレイヤー
2020/02/08 12:10
単なるRPG
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
「異神千夜」や「夜市」の作者であるだけに、新分野は同様な作品かと期待して読んだが、全くの期待外れ。
ご都合主義の単なるRPG。
紙の本スタープレイヤー
2019/08/22 13:27
たまに無理がある
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投稿者:じゅり - この投稿者のレビュー一覧を見る
はじめの方は面白かったけど
深みがちょっと物足りなかった。主人公もあまりすきになれないし思い入れもない笑。
この先少し内容含みます。
まず主要人物が日本人が多いことに無理があるかなと思いました。一番危うい所で幽が出てきてさらには日本人なところとかちょっと無理があるなあという感じ。
マキオも田中も日本人だし。ラナログともほとんど言葉通じてるし。
そして主人公もさほど魅力がなく思い入れが弱い。
普通の人がスタープレイヤーになったというところがいいのかもしれないが、なぜかゆづきはあまりすきになれない。
帯にイッキ読み!と書いてあったけれど、ぼちぼち読みました、
二作目はいいかなぁ。
紙の本スタープレイヤー
2019/04/15 16:57
行き当たりばったりで良くはない
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投稿者:えにぐま - この投稿者のレビュー一覧を見る
オープンワールドRPGを下敷きにしたファンタジー。
ストーリーは行き当たりばったりで、初めに設定した小説上のメタ設定はどんどん緩められていき、向こうの世界の原住民が出てきた時点で終わったと思った。
貴志祐介らの様なストラテジーものを期待するなら肩透かしだし、何でも願いが叶えられるという文言から広がる発想の自由さと物語の広がりはイコールではない。