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17件
第三の時効
著者 横山秀夫
殺人事件の時効成立目前。現場の刑事にも知らされず、巧妙に仕組まれていた「第三の時効」とはいったい何か!? 刑事たちの生々しい葛藤と、逮捕への執念を鋭くえぐる表題作ほか、全六篇の連作短編集。本格ミステリにして警察小説の最高峰との呼び声が高い本索を貫くのは、硬質なエレガンス。圧倒的な破壊力で、あぶり出されるのは、男たちの矜持だ――。大人気、F県警強行犯シリーズ第一弾!
第三の時効
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第三の時効
2006/04/02 20:51
人物描写とその視点が抜群に面白い捜査モノ連作短編集
13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
話題の作家横山秀夫の短編集である。今回は短編集といってもそれぞれに登場する人物は同じである点で今までの各々の設定を変えたものとは異なる。言うならば「F県警捜査一課事件メモ」とでもいう内容である。
F県警刑事部捜査一課には、強行犯捜査を担当する3つの班がある。この3班は互いに手柄を競い合う関係から、きわめて仲が悪い。班長3名も個性が強く、孤立しがちである。うまく捜査員を使っていくことが班長の使命でもある。
その甲斐あってか、この捜査一課の成績は連戦連勝である。こういう設定の捜査一課強行捜査班の活躍ぶりを描いたのが本書である。しかし、それだけならどこにでもある警察小説である。横山秀夫の真骨頂は、事件自体を描いているというよりは、むしろその人物を描いているというべきであろう。
三班それぞれの班長の個性を十分に描いている。そういう点ではこの班長たちが短編の主人公である。それだけならまだ他にもいくらでも類似した小説がある。さらに横山は上司である捜査一課長、刑事部長の行動や心理描写にも及んでいる。これだけ個性的な部下を持ち、いがみ合いもほどほどに抑えつつ、実績を残していくのは相当難しい。その捜査一課長は何を考えつつ、この班長たちを御していくのか。今まで置き去りにされてきた主人公の周辺、とくに上司にまで書き及ぶ点が横山秀夫の優れた個性なのであろう。記者時代の視点と経験が生かされているのかも知れない。
全6編であるが、あっという間に読み終えてしまった。横山秀夫の作品は人物を入念に描いているので、知らず知らずのうちにその主人公のキャラクターに親しみが沸いてくる。そういう点ではそのキャラクターを生かしてロング・セラーだって狙うことができるのだが、それをやらずに次々と新しい主人公を登場させている。
今までにも婦警シリーズの平野巡査、D県警警務部の二渡警視などテレビ化された有名なキャラクターも少なくない。今回のF県警強行犯捜査班は是非とも続きが読みたいところであるし、二渡警視や平野巡査だって続編が待ち遠しいのである。ところがそれをやらないところが憎いのである。
と考えていたら、解説記事には月刊誌で続編が発表されていると書かれている。班長3名のキャラクターと事件の深層を再度読むことができるようだ。ファンにとっては嬉しいことである。
第三の時効
2009/10/27 18:50
圧巻。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とまと - この投稿者のレビュー一覧を見る
「第三の時効」というキャッチーなタイトルで気になっていたので、2年前から本は持っていましたが、なぜか最初の5~10ページぐらいでいつも集中力が切れてギブアップしていました。が、読んだ今となっては、「もっと早く読めばよかった。」と激しく後悔した本です。
まずは一遍読み進めて行くと、もう止められません。全ての短編に無駄がなく、且つ洗練されていて、この本のように読んだ後に驚きと高揚感で満たされる本も少ないのではないのでしょうか。
小説中に「化けの皮を剥がしてやる。」というセリフがあるのですが、人には誰しも良い意味でも悪い意味でも「化けの皮」があるんだなと気づかされました。この小説では「真犯人の化けの皮」、そして「冷徹な刑事たちの本当の人柄」がうまく描写されています。
横山秀夫氏の本はこの本が初めてでしたが、他の本も絶対読んでみたいです。
第三の時効
2008/10/10 23:11
横山秀夫の最高傑作!
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たそがれ1212 - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白い!!その一言に尽きる!!横山作品は軒並みハズレがなくどれも面白いが、この作品は現時点で最高傑作ではないかと思う。登場するキャラクターのその作り込みにはただただ感心させられ、唸らされる。目の前に“宝物”があるといっても過言ではない。こんな素晴らしい作品が文庫で身近に携帯できる喜びを噛みしめつつ、横山ワールドを満喫しよう!ミステリーが好きな方はもちろん、ちょっと苦手…という方も、短編集で読みやすく一気に読破してしまうハズ…この至高の面白さに感謝!