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理不尽ゲーム
著者 サーシャ・フィリペンコ , 訳:奈倉有里
欧州最後の独裁国家ベラルーシ。その内実を、小説の力で暴く。群集事故によって昏睡状態に陥った高校生ツィスク。老いた祖母だけがその回復を信じ、病室で永遠のような時を過ごす一方、隣の大国に依存していた国家は、民が慕ったはずの大統領の手によって、少しずつ病んでいく。10年後の2009年、奇跡的に目覚めたツィスクが見たものは、ひとりの大統領にすべてを掌握された祖国、そして理不尽な状況に疑問をもつことも許されぬ人々の姿だった。時間制限付きのWi-Fi。嘘を吐く国営放送。生活の困窮による、女性の愛人ビジネス。荒唐無稽な大統領令と「理不尽ゲーム」。ジャーナリストの不審死。5年ごとの大統領選では、現職が異常な高得票率で再選される……。緊迫の続く、現在のベラルーシの姿へとつながる物語。
理不尽ゲーム
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理不尽ゲーム
2021/04/04 14:41
欧州最後の独裁国家ベラルーシの真実を小説という形で暴いた興味深い一冊です!
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ベラルーシのミンスク出身の作家サーシャ・フィリペンコ氏の作品です。同書は、欧州最後の独裁国家と言われるベラルーシの内実を小説の力で暴いた一冊です。内容は、群集事故によって昏睡状態に陥った高校生ツィスクですが、老いた祖母だけがその回復を信じ、病室で永遠のような時を過ごす一方、隣の大国に依存していた国家は、民が慕ったはずの大統領の手によって、少しずつ病んでいくという物語です。そして、10年後の2009年、奇跡的に目覚めたツィスクが見たものは、ひとりの大統領にすべてを掌握された祖国、そして理不尽な状況に疑問をもつことも許されぬ人々の姿でした。時間制限付きのWi-Fi、嘘を吐く国営放送、生活の困窮による女性の愛人ビジネス、荒唐無稽な大統領令と「理不尽ゲーム」が次々に暴露されます。ジャーナリストの不審死、5年ごとの大統領選では現職が異常な高得票率で再選されるという異常な国、ベラルーシの真実が同書の中にあります。
理不尽ゲーム
2024/02/27 15:49
理不尽に昏睡してしまわぬように
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
サーシャ・フィリペンコは、ベラルーシ出身のロシア語作家だという。2014年に単行本が出てロシアで文学賞を取ったときには、「こんなことあるはずがない」という批判を受けたそうだ。しかし今現在、この本が描いたベラルーシやお隣のロシアでは、それを凌駕するような理不尽な出来事が相次いでいる。
群衆事故で昏睡状態になった主人公が、奇跡的に回復して10年後に意識を取り戻したときに見た者は、かつて国民が選んだはずの大統領が権力の座に居座って強権を発揮し、国民は疑問を口にするのさえ許されない社会だった―。という物語。
1999~2012年ごろのベラルーシを舞台にした寓話だが、そこで描かれている理不尽の多くは、実際にあったことであるのが恐ろしい。
主人公の昏睡は、理不尽な出来事に対して眠っているかのような社会の隠喩だろう。
理不尽なことがあっても、気づかなかったり、スルーしたり、忘れていたり、ほかのことに気をとられていたり。要するに国民がうかうかしているうちに、国家権力はとんでもないことをし始めるのだ。
この本は、「欧州最後の独裁者」がいるベラルーシでは書店の書棚に並ばないそうだ。国立の図書館には、この本は配架しないよう厳重な注意喚起がなされているらしい。
日本には関係ないことのように見えるけど、本当にそうだろうか。自分の周りにある理不尽に気づくことから始めたい。