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リニア新幹線と南海トラフ巨大地震 「超広域大震災」にどう備えるか
著者 石橋克彦
政府の地震本部が「30年以内の発生確率が70~80%」とする南海トラフ巨大地震。その震源域は広大で、沿岸部のみならず内陸も激しく揺れる。活断層の密集地帯を走るリニア中央新幹線は無事でいられるだろうか? リニアは既存の新幹線より脆弱で、大部分が地下トンネルのため避難は困難をきわめる。そして、新たな複合災害を誘発する可能性が高い。地震学の知見に基づき、その危険性を警告する!
リニア新幹線と南海トラフ巨大地震 「超広域大震災」にどう備えるか
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リニア新幹線と南海トラフ巨大地震 「超広域大震災」にどう備えるか
2021/07/08 21:23
150年ぶりに南海トラフ巨大地震に襲われる
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は著名な地震学者であり、過去に『大地動乱の時代』(岩波新書)などの著作で地震災害に対して警告を発してきた。本書は第1部「リニアは地震に耐えられない」と第2部「ポストコロナのリニアは時代錯誤」の2部構成である。第1部では近い将来発生するであろう南海トラフ巨大地震により、活断層密集地帯を通過するリニア新幹線への影響についての解説である。一般に山岳トンネルは地震に強いといわれているが、地震規模が大きかったり、震源域に近かったり、断層破砕帯などの不良地山区間では、覆工コンクリートの剥落や断層運動によるトンネルのズレ破壊が生じたりする。またトンネル坑口付近の山体崩壊による災害が発生する可能性を指摘。また南アルプスは現在毎年4mm隆起しているが、巨大地震により逆に1m程度の沈降が起きる可能性があり、これは高い精度で設置する必要のある、リニアのガイドウェイの復旧にも大きな足かせとなるであろう。
第2部は、コロナ後の日本社会のあるべき姿について著者の考えが取りまとめられている。その考えは、次の著者の記述に集約される。<私たちは今、少なくとも過去五十万年以上にわたって淡々とくり返してきた南海トラフ巨大地震に、百五十年ぶりに襲われようとしている。その時間スケールに比べれば一瞬のような現代に、経済成長という観念に呪縛され、自然災害に弱い暮らしを拡大してきた。しかし、有限の地球上で無限の経済成長はありえないのだから、その呪縛を解き、成長の論理である「大規模・集中・効率・高速」といった価値観と訣別すべきであろう。それが、超広域大震災への最善の備えにつながると思われる。リニア中央新幹線建設の是非も、そのような文脈で考えるべきだろう。>
「あとがき」では、著者の祖父が東海道線丹那トンネル建設時の熱海建設事務所第二代所長を務めた土木技術者だったこともあり、リニア中央新幹線に情熱を注いできた技術者の方々を思うと、やや複雑な心境にもなるとも吐露している。
こうしたことからも批判のための批判の書でないことがわかる。
リニア新幹線と南海トラフ巨大地震 「超広域大震災」にどう備えるか
2021/07/12 07:39
後半以降はリニア記述がぐんと減ります
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
目下建設中のリニア式中央新幹線について、近い将来起こるであろう南海トラフ巨大地震を踏まえれば、建設は危ういことを、著者が必死に訴えている1冊です。
著者が「南海トラフ巨大地震は絶対に起こる」という考えのため、リニアより巨大地震の記述が多くなっています。特に、後半以降はリニアについての記述がぐんと減り、ほとんど巨大地震関連の内容です。