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聖なるズー
著者 濱野ちひろ
犬や馬をパートナーとする動物性愛者「ズー」。大型犬を「僕の妻だよ」と紹介する男性。七匹のねずみと「群れ」となって生活する男性。馬に恋する男性。彼らはときに動物とセックスし、深い愛情を持って生活する。過去に十年間にわたってパートナーから身体的、肉体的DVを受け続けた経験を持つ著者は、愛と性を捉えなおしたいという強い動機から、大学院で動物性愛を研究対象に選び、さらにズーたちと寝食をともにしながら、人間にとって愛とは何か、暴力とは何か考察を重ね、人間の深淵に迫る。性にタブーはあるのか? 第17回開高健ノンフィクション賞受賞作。
聖なるズー
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聖なるズー
2022/09/01 17:50
相手をリスペクトすること
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
開高健ノンフィクション賞を受賞して話題になっても、動物性愛についてのノンフィクションと聞いて、嫌悪感や忌避感から、なかなか手に取れずにいたのだが、文庫本が出たこともあり、興味か好奇か微妙な心持ちで購入した。
ドイツに渡り、ズーと呼ばれる動物性愛者たちの実像に迫った一冊だ。
結論から言えば、共感はなかなかできない。
しかし、ズーと呼ばれる人たちの印象はがらりと変わる。そして既存の価値観が揺るがされる。
彼らは生きとし生けるものに対し、人間と同じように性も含めて受け止める人たちなのだ。
人間は性愛について、さまざまな言葉を使って、意味を与えようとしているが、それは支配と被支配の関係を生んでいないか。多様な性への理解が進みつつある時代に人と動物を分けることをどう考えるのか・・・等々。
既存の常識の枠組みから抜け出すのは、なかなか難しいが、互いに命を持つ「相手」を尊重する、ということについて、思考を促す作品であることは間違いない。