- みんなの評価
10件
ラブカは静かに弓を持つ
著者 安壇美緒
【2023年本屋大賞第2位】
【第25回大藪春彦賞受賞】
【第6回未来屋小説大賞第1位】
【第44回吉川英治文学新人賞ノミネート】
深く潜れば潜るほど、主人公と自分を重ね、浅葉先生に救われ、突き刺される。
暗い深海で一筋の光にすがるように、どうか壊れてしまわないでと願いながら、一気に読み終えました。
限られた文字数では、語りきることなどできません。
この物語はこう紡がれ、奏でられるしかなかったのだと、心から感じました。
まだずっと、余韻が残響のように、自分の中で鳴り続けています。
――斉藤壮馬さん(声優)
その人は尊敬すべき師であると同時に、得がたい友人になった。
内向的な青年の冷めた視線に映し出された世界が、次第にみずみずしく光に満ちた世界に変わっていく。
たとえその前提が裏切り行為であったにしても。
――篠田節子さん(作家)
優れた演奏を聴き終えたかのような感動が胸に満ちてくる。
嘘を重ねる主人公にこうまで味方したくなるのは、
書き手の筆に嘘がないからだろう。
〈音楽の力〉によって結びつき回復してゆく人々を、
〈言葉の力〉で描ききった希有な小説。
――村山由佳さん(作家)
武器はチェロ。
潜入先は音楽教室。
傷を抱えた美しき潜入調査員の孤独な闘いが今、始まる。
『金木犀とメテオラ』で注目の新鋭が、想像を超えた感動へ読者を誘う、心震える“スパイ×音楽”小説!
少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。
ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。
目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。
師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り……
ラブカは静かに弓を持つ
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ラブカは静かに弓を持つ
2022/07/25 17:12
音楽は誰の物でしょう
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
音楽を聴く人、演奏する人、作る人、それをお金に換える人。
全員に音楽論があって、そこには意志がある。チェロを音楽教室で弾きに行って演奏する先人の遺産である音楽は果たして誰の物なのでしょうか。
私には分からない。でも今日も昨日も、そして明日も私は音楽を聴くでしょう。
著作権を取り締まる為に潜入する商業スパイ劇。007のような緊迫感とはまた違う緊張感がありました。
ぜひ、ショパンのエチュードを聴きなが一緒に読むと良いエッセンスになると思います。
2023/02/19 01:54
スパイ×音楽
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
2023年本屋大賞ノミネート
少年時代のトラウマを抱えた主人公が、著作権をめぐり音楽教室への潜入調査を任される。傷を想起する「チェロ」を通して人と触れ合う事で、沈み込んでいた深海から少しずつ引き上げられていく。実話から着想を得た、繊細な心の機微を奏でる「スパイ×音楽」物語。
「音楽」に救いを求める者、気付いたら救われていた者、丁寧にメロディを繋ぐ様に信頼が構築されていく様子と、秘めた任務との天秤の揺れがスリル満点。
主人公の性格を表した様な起伏の少ない滑らかな文体が心地好く、時に生じる波紋を際立たせるエフェクトを担っていた。
生真面目な主人公が「音」を語る時だけ抽象的な譬えを用いる所や、登場人物一人一人に「ここだけは」というブレない部分があり好感を持てた。
漠然とした不安を抱えていたり、感情表現が苦手な方に特に読んでほしい作品。
賛否あると思うけど、ちょっとBL風にも読めた所が良かった
ラブカは静かに弓を持つ
2022/05/08 14:49
ラブカはスパイをイメージする
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリーかと思ったが、違った。しかし、背景にずっとチェロの響きが聞こえるような物語だった。スパイというより潜入調査員が、経歴を偽り音楽教室に入り、そのコミュニティの暖かさに心の鎧がはがされる。ラブカとは深海魚の名前らしいが、暗い海の底で息をひそめて辺りを窺う姿が、スパイなのだ。チェロを奏でる喜びが表現されるとともに、裏切る苦しさが漂う。無数の信頼の重なりの上に、人間関係は構築される。もし信頼を失えば、……。その先をしっかりとイメージすることが、生きていくうえで重要だと思う。