- みんなの評価
22件
きみの友だち
著者 重松清 (著)
わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる――。足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない……。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作長編。
きみの友だち
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きみの友だち
2008/10/03 10:28
いやもう、素晴らしいとしか言葉が無い。
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
重松さんの作品は読むたびに、氏の最高傑作と思ってしまう。
でも本作に到っては「最高」とか「傑作」という言葉さえチープに感じる。
本当に色んな意味で、素晴らしい作品。
読み終わって涙がぽろりとこぼれた。でも何の涙か分からない。
嬉しいのでも悲しいのでも感動したというのでもない。
でもココロの奥からこぼれた涙。そんな気がした。
小説には、書評が書きやすい本と書きにくい本が確かにある。
では重松さんの作品はどうかというと、いつも作品を読みながら、
あふれるように言葉が浮かんでくる作品ばかり。
だから本作品も読みながら、思いつく言葉を書評として書き留めていた。
そしてそれは結構な長さになってしまったのだけれど。
作品を読み終わって、全て却下することにしました。
それなりに一生懸命書いたけど、この作品を評するのには、
あまりに言葉がチープ過ぎると思ったから。
読み始めは、子供たちが子供たちの、
それなりに理不尽で残酷なコミュニティの中でどうやって立ち居振る舞い、
乗り越え成長していくのか、を描いた作品だと思った。
それはそれで非常に興味深いが、
リアルに書くには非常に難しいテーマでもあるなと感じた。
ところがそれだけでは、全然無かった。
連作となっているそれぞれの作品の絡み合いも見事だし、
例えばヒロインの恵美ちゃんのそっけない態度とか、
ストーリーテラーになっている、子供たちを「きみ」と呼ぶ存在は誰か、
であるとか。作品中の?が最後に見事に説明される。
そして本を閉じた時、涙がポロリと毀れてしまう。
作品全体が、綺麗にすっと腑に落ちココロに染み込む。そんな作品である。
子供は思った以上に大変だ。そして、色々考え色々頑張っている。
選ばれる者と、選ばれない者。生きる者と、死ぬ者。
子供たちはそんな毎日を乗り越え日々成長し、
過酷だけど素晴らしい人生を、今日も歩いていく。
きみの友だち
2013/11/09 17:42
子どもたちだって一生懸命生きている。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未央 - この投稿者のレビュー一覧を見る
学校というのはとても狭い世界で、みんな自分の居場所を作ることに必死。そのためには自分の本音や本当の性格を犠牲にして。この小説は、そのような学校という狭い世界の中で必死に悩み、もがいて一生懸命に生きている子どもたちの姿がとても鮮明に描かれている。
それぞれの登場人物が抱えているものは、大人から見れば大したことないと思ってしまうような悩みでも、その子たちにとってはとても重大な悩みで・・・。この小説を読んでいると、小学生の頃の自分を思い出して、そうそう、子どもってそうなんだよね。と、内側にある感情が手に取るようにしてわかる。そして、この小説の何よりも好きになるところは、それぞれ登場人物である子どもたちが最後には悩みが消えたわけではないけど、自分なりに答えを見つけ、また歩き出す姿である。
今、人間関係に悩んでいる人、自分の居場所を見つけることができず、なかなか上手く生きれない人に読んでみてほしい。
きみの友だち
2020/10/08 14:31
「同級生だから友だち――嘘だと思う、絶対に。」
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本に出てくる恵美が本当に魅力的、堀田もとても好き。人間への愛が伝わってくる。一章ごとに感動の波が打ち寄せ、最終章ラスト数行で一気に涙腺が決壊。友達について優しくヒントをくれる泣けてあたたかい作品。
気になった言葉を拾ってみる。「きみは『ありがと』と言って、もっとちゃんとお礼をいったほうがよかったかな、あ、でも、逆に『サンキュッ』と軽かったほうがよかったのかな、その前に『ごめん』かな」「わたしは、一緒にいなくても寂しくない相手のこと、友だちって思うけど」「あのね、うつむいてから顔を上げるでしょ、その瞬間ってけっこう笑顔になってるの。なにも考えずにパッと上げたとき、ほんとに、笑顔が浮かんでるわけ」「『なんか俺らと似てるニオイするっていうか』と、ひどいいじめに遭って学校に行けなくなった中学生の男の子は言っていた。」「ボンタン飴は、きみは苦手だったが、お姉ちゃんの大好物だ。『うざったい友だちみたいな味だよね』とワケの分からない悪口みたいなことを言いながら、お姉ちゃんはいつもうれしそうに、懐かしそうに、子どもみたいにわざとねちゃねちゃと音をたてて食べる。」
中学の頃、自分は、この作品に登場する「みんなぼっち」だった。みんなの中は安心だけど不安がいっぱいだった。高校に入ってから、もこもこ雲な友達と出会えたような気がする。このことを大切にしたい、と、この本を読んで心から思った。中学2年生の息子にも、もうちょっとしたら紹介してみよう。