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4件
後白河院(新潮文庫)
著者 井上靖
朝廷・公卿・武門が入り乱れる覇権争いが苛烈を極めた、激動の平安末期。千変万化の政治において、常に老獪に立ち回ったのが、源頼朝に「日本国第一の大天狗」と評された後白河院であった。保元・平治の乱、鹿ヶ谷事件、平家の滅亡……。その時院は、何を思いどう行動したのか。側近たちの証言によって不気味に浮かび上がる、謎多き後白河院の肖像。明晰な史観に基づく異色の歴史小説。
後白河院(新潮文庫)
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後白河院 改版
2022/06/03 07:02
日本国第一の大天狗の生涯
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
井上靖といえば、昭和を代表する作家の一人だ。
昭和25年に『闘牛』で第22回芥川賞を受賞し、その後自伝的小説『しろばんば』『あすなろ物語』や『天平の甍』といった歴史小説、『敦煌』などの西域小説と、その活動の幅は広い。さらにいえば、井上は生涯詩を書き続けた詩人でもあった。
そんな井上に、2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で俳優の西田敏行が熱演している後白河法皇を描いた歴史小説がある。
それが昭和47年に刊行された『後白河院』とタイトルのついたこの作品である。
物語はそれぞれ証言者が違う四つの部で構成されている。
時代時代で後白河院の表情が違うように、ましては平家の時代から源家の時代に移ろうとする際の討つものがたちまち追われる側になるといった目まぐるしい采配をして、後に源頼朝から「日本国第一の大天狗」と揶揄されるほどの人物であるから、院を見る証言者の眼も様々といっていい。
証言者が違うものも、順にたどれば天皇になるところから法王として権力を握っていく過程、さらには武家の時代にはいったのちの崩御まで、院の生涯が巧みに描かれているのは、さすが井上の筆力の確かさをいえる。
特に面白かったのは、第一部で、ここでは若い後白河が歴史の渦に巻き込まれていく保元と平治の乱が描かれている。その渦が収まったあと、後白河が浮かびあがる姿が活写されている。
読み応えのある歴史小説だった。
後白河院 改版
2022/08/09 02:02
積読からの再チャレンジ
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:扇町みつる - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は結構前から積読していて、一回読もうとしたんですけど、ずーっと語り口調で鉤括弧のセリフが無い文体なので挫折したことがあり、今回再チャレンジで読了。
最初は後白河というよりも保元平治の乱についての昔語り。次に建春門院について、後白河院について、合計四部構成となっており、それぞれ語り手は違います。
やはり印象的だったのが第三部。
後白河の近臣が語るのですが、後白河のイメージが私の中では大河ドラマ「平清盛」や「鎌倉殿の13人」の影響で面白キャラというかエキセントリックというか、特異な人物になってるせいか、
ちょっと上げすぎじゃね?
という感想でした。
それだけ後白河への熱い思いがにじみ出ていたという事なんですけど、何せイメージが西田敏行になってしまっているので、院もお苦しみだったみたいなことが書かれていると、ブフッとなってしまい吉田経房卿すみません!という感じでした。
語り口調の文体で、改行も少ないので私のように慣れてない方は怯むかもしれませんが、保元平治の乱〜平家滅亡〜鎌倉幕府あたりの事が京の貴族や女房目線で描かれていて面白いです。
2025/02/15 16:43
後白河院
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みみりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日、司馬遼太郎の義経上下巻を読み終わったばかりなので、本書の中に知っている名前がここかしこに出てきておもしろかった。平信範、建春門院中納言、吉田経房、九条兼実が後白河院について語る形式をとっている。