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12件
苦役列車(新潮文庫)
著者 西村賢太
劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。(解説・石原慎太郎)
苦役列車(新潮文庫)
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苦役列車
2019/11/10 00:04
21世紀の私小説
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私小説作家として知られる西村賢太のいわゆる北町貫太もの。北町貫太は高校に進学せず、肉体労働をしながら一人暮らしをする。しかし稼いだ日銭は酒と女に費やし、先のことを考えられないような生活が続く。小説の中において、常識から外れたような行動を貫太は見せるが、西村曰く実際には風俗に行きたくて毎日まじめにバイトしていたというから、ある程度作りこまれているのだろう。
北町貫太ははっきりいってクズみたいな人間なんだけど、なぜか毎度読みに行ってしまう。
苦役列車
2023/02/02 10:10
鬼籍に入られたことが残念でならない
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
貫多という、港湾荷役で働く中卒の男、それまでの人生で何の努力もしてこなかった割にプライドだけは高く、すぐに人を上から見る、うまくいかなくなると「どうせ、俺には強姦をした父親の血が流れているのだ」嘯く。こんな男、現実にいたらいやだな、小説でよかったなと思っていたら、どうやら、私小説らしい、西村氏が「私は没後弟子だ」と崇拝する大正時代の埋もれた作家・藤沢清造の作品に出会う前、つまり20代前半の生活を小説にしたものが「苦役列車」なのだった、そして、「どうで死ぬ身の人踊り」「小銭をかぞえる」といった小説のとおり、藤沢清造の全集完成に心血を注ぐ、しかし酒乱で同棲している女性に対してDVを繰り返すダメ男へと成長?していく。こんなスタイリッシュでない現役作家なぞ彼しか存在しえなかった、鬼籍に入られたことが残念でならない
2025/04/29 23:05
独特な世界観
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のほ - この投稿者のレビュー一覧を見る
とても面白い小説でした。主人公とあまり良い人生ではない自分とを重ね合わせることもあり、共感できるところもたくさんありました。