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17件
レ・ミゼラブル
わずか一片のパンを盗んだために、19年間の監獄生活を送ることになった男、ジャン・ヴァルジャンの生涯。19世紀前半、革命と政変で動揺するフランス社会と民衆の生活を背景に、キリスト教的な真実の愛を描いた叙事詩的な大長編小説。本書はその第一部「ファンチーヌ」。ある司教の教えのもとに改心したジャンは、マドレーヌと名のって巨富と名声を得、市長にまで登りつめたが……。
レ・ミゼラブル(五)(新潮文庫)
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レ・ミゼラブル 改版 1
2020/03/28 10:11
社会の闇と正義の欺瞞を問う第一部
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:弥生丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一部ファンチーヌ。博愛の精神を持つミリエル司教の第一章から始まる。元徒刑囚ジャン・ヴァルジャンとミリエル司教の出会い。恋人に捨てられ売春婦にまで身を落とすファンチーヌ。権威を盲信する冷酷無情な警部ジャヴェール。
物語のテーマが本卷第一章に凝縮されている。罪人とは罪を犯した者ではない。社会に闇をつくる者である。貧困からパンを盗んだために徒刑囚となったジャン・ヴァルジャン。荒みきった彼の魂を救ったのは、ミリエル司教の慈愛だった。苛酷な刑罰では人間を救えない。人間の魂を救うのは慈愛である。
一方、恋人に捨てられた女性ファンチーヌ。悪辣なテナルディエ夫婦の本性も知らず娘コゼットを預け、女工として懸命に生きる。だが、道徳家を気取る非情な人間により、未婚の母であることを告発され、解雇されてしまう。テナルディエ夫婦からは暴利的な金の要求が絶えない。進退極まったファンチーヌは、自分の髪を売り、歯を売り、遂には売春婦に堕ちてしまう。ファンチーヌの章では、正義を振りかざす人間の残忍性が浮き彫りにされている。
ミリエル司教の導きにより改心したジャン・ヴァルジャン。一大産業を興して財を成し、市長にまで昇りつめる。慈悲に務め穏やかな日々を送る彼に、ジャヴェールの影が忍び寄る。ジャヴェールの章では、正義と権威を盲信する人間が弱者を窮地に追い込む非情さを露にしている。
波乱の展開が続く物語の第一部。私達は時々この物語を読み返し、「正義」「道徳」「権威」の残忍性と社会悪について猛省するべきだろう。何故なら、人間はとかく独善的に他人を裁きたがる生き物だからである。
2024/09/23 20:33
政治的敗北と幸福な昇天
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
暴動は鎮圧され、マリユスの革命の同志たちは次々と倒れる。マリユスだけはジャン・ヴァルジャンによって救い出され、コゼットと結婚する。ジャン・ヴァルジャンはここに至っても正直であることをやめず、「どうしてそこまで」と思うが、その一貫した善意と誠実さに頭が下がる思い。ジャン・ヴァルジャンは結局マリユスとコゼットに見守られ息を引き取る。善悪がくっきり別れているという非難もありそうだが、その類型的なところも突き抜けていてスケールが大きく深い。非情な密偵であるジャヴェールとか、卑しい悪党のテナルディエでさえとてもよく描いていると思った。感動もの。
2024/09/23 13:24
暴動の発生と恋の行方は・・・
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
第4部では次第に佳境に入り、マリユスとコゼットはとうとう出会ってプラトニックな逢瀬を続けていく。一方でテナルディエの長女エポニーヌもマリユスの周りに姿を見せては、彼への思いを持ちながら助ける。しかしマリユスはコゼットとの結婚を認められず、ジャン・ヴァルジャンは、コゼットを奪いに来た男の存在に気づきコゼットを連れてイギリスへ逃亡しようと画策する。自暴自棄になったマリユスは折しも発生した暴動の中で、ABCの友や民衆たちととバリケードに籠城する。
いつもの蘊蓄パートも快調でもはやとどまることを知らない。狙ってここまでやられれば、まあ仕方ないかと思う。マブーフ氏が気の毒で読むのがつらい。それにエポニーヌはほんとうに哀れだった。