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戦後史の解放
著者 細谷雄一
なぜ今も昔も日本の「正義」は世界で通用しないのか――国際社会との「ずれ」の根源に迫る歴史シリーズ第一弾。日露、第一次大戦の勝利によって、世界の列強の仲間入りを果たした日本。しかし、戦間期に生じた新しい潮流を見誤り、五大国から転落していく。その三〇年の軌跡を描き、日本人の認識構造の欠陥を読みとく。※新潮選書版に掲載の写真の一部は、電子版には収録しておりません。
戦後史の解放II 自主独立とは何か 後編―冷戦開始から講和条約まで―(新潮選書)
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歴史認識とは何か 日露戦争からアジア太平洋戦争まで
2015/12/20 22:41
ビジネス分野にも通じる教訓
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ビジネスの分野でも十分考えなければならない教訓が多い。
戦後史を二十世紀の全体像の中に位置づけし直して、再構築することを目的として、自由に歴史を考えていると思いながら、いろいろな形で束縛されているために、本来見えるはずのものが見えない束縛を「イデオロギー的な束縛」「時間的な束縛」「空間的な束縛」と定義し、その束縛から解放することで、現代史を考え直す。
戦前の日本が陥った問題とは、平和主義に背いて軍国主義の道を歩んだことだけではない。より致命的だったのは、国際主義的な精神が欠落して、国際情勢を適切に認識できなくなっていったことである。
【学んだこと】
・イデオロギー的な束縛
歴史的事実に基づく歴史学ではなく、自らの運動を実践するための手段として「歴史」が用いられていく
・時間的な束縛
戦後史が終戦から動き始め、それ以前の歴史と戦後史が完全に断絶しているという歴史観
・空間的な束縛
世界が存在しない日本史を学ぶとすれば、それはきわめて内向きで、孤立主義的で、閉じられた空間の戦後史
・ナイーブな歴史認識
広範な史料に基づいて、徹底的に研究を深めていけば、普遍的に受け入れ可能な「歴史的事実」にたどり着ける
そのような「歴史事実」は他国の国民とも共有可能であるという楽観的な想定
・政治的なスローガンには「誠実な正義心」「権力政治的な考慮」「冷静な国益の計算」などの思惑がある
・太平洋戦争に至る日本の迷走
1)政府が一丸となって戦争に突き進んだのではなく、むしろ誰もがそれぞれの組織的利益を優先して漂流した結果が、戦争という最悪の結果であった
2)戦争の推移が日本に有利な方向へと漂流して、アメリカ国内に厭戦的な空気が蔓延することで和平が得られるという根拠のない楽観論
3)陸軍は対米線は海軍の戦争と考え、海軍は、対米戦を名目に予算と物資を獲得した経緯から、戦争が不可能と言えば存在意義が問われるため不可避となる
・アジア太平洋戦争での犠牲者
日本:310万人(内民間人80万人) 交戦国・戦場での死者:1900万人
・自らの正義を絶対視して他国の価値を嗤い、国際社会における正義や規範を無力であると突き放し、自らの価値を絶対的で自明な正義として語ることは、戦前の国際社会から孤立していった道程と似ている
自主独立とは何か 後編 冷戦開始から講和条約まで
2018/07/31 19:41
戦後の「国のかたち」を決めたのは誰か。世界史と日本史を融合させた視点から、自主独立の意味を問い直す
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「自虐史観」や「陰謀史観」は役に立たない。「リアルな歴史」だけが未来を変える。「国のかたち」を決めたのは誰か?米ソ対立が深まる中、戦後日本の新しい「国のかたち」を巡り、近衛文麿、幣原喜重郎、芦田均、吉田茂、白洲次郎らが、マッカーサー、ホイットニー、ケナン、ダレスらと激しい駆け引きを繰り広げる。世界史と日本史を融合させた視点から、日本と国際社会の「ずれ」の根源に迫る歴史シリーズ第二弾。
自主独立とは何か 前編 敗戦から日本国憲法制定まで
2018/07/31 19:36
《「自虐史観」や「陰謀史観」は役に立たない。「リアルな歴史」だけが未来を変える。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
学校の授業ではいつも駆け足になってしまう現代史。本来ならば、最も学ばなければいけない現代史。「いつかやらなきゃ…」と思ってたみなさん、ぜひこの夏に。後編も同時出版。「1」以上に論争必至の内容。