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14件
旅のつばくろ
著者 沢木耕太郎
つばめのように自由に、気ままにこの日本を歩いてみたい――。世界を歩き尽くしてきた著者の、はじめての旅は16歳の時、行き先は東北だった。それから歳も経験も重ねた今、同じ土地を歩き、変わりゆくこの国のかたちを見て何を思ったか。本州「北の端」龍飛崎、太宰治の生家を訪ねた五所川原、宮沢賢治の足跡を追った花巻、美景広がる軽井沢や兼六園などを歩いて綴った、追憶の旅エッセイ。〈電子オリジナル版〉は沢木耕太郎撮影の写真が収録されています。
飛び立つ季節―旅のつばくろ― 電子オリジナル版
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旅のつばくろ
2020/05/29 07:19
年老いた者よ、旅に出よう
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日新聞に小さなインタビュー記事が出ていた。
そこにはあるホテルマンが、実際にはその人は女性だったからホテルウーマンというべきだろうが、どのようなきっかけでその業界に進んだかということが書かれていて、彼女は沢木耕太郎さんの『深夜特急』を読んで旅の面白さに誘われたと答えていた。
まだ若い女性だったから、沢木さんのこの本が出たばかりの頃ではなく、文庫本になってからの読者かもしれないが、一冊の本との出会いがその人の人生の行く末を照らすことも確かにあるのだと、思い知らされた。
『深夜特急』は沢木耕太郎さんが二十代の時に香港からインド、そしてユーラシアの街々を旅した旅行記だが、1986年に刊行以来、今でも若い人には人気があるという。
その旅からほぼ半世紀を経て、沢木さんが「ただその土地を歩きたいために行くという旅」をしてこなかったという日本国内の旅を綴ったのが、この本だ。
東日本への旅が多くなっているのは、もともとがJR東日本が発行している「トランヴェ-ル」という雑誌に連載されたものだから、仕方ないかもしれない。
ただ二十代の時の旅と今回のそれが決定的に違うのは、過去の自分と向き合う頻度が圧倒的に多くなったことだろう。
さすがに沢木さんも70歳を過ぎて、旅の本質が変わって当然だろう。
かつて自分を育ててくれた先輩や友達のこと、何者かになろうと悩んでいた若き日の自身、今回の旅はそんな自分との向き合う旅だ。
この旅行記を読んで若い読者は新しい旅をめざさないかもしれないが、まだまだジーンズの似合うシニアたちは旅の支度を始めるのではないだろうか。
旅のつばくろ
2020/10/13 19:22
エッセイもいい。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:クッキーパパ - この投稿者のレビュー一覧を見る
かなり昔になりますが、東京駅八重洲にある大型書店での著者のサイン会での、あの暖かな握手を思い出しながら、一編一編楽しみました。小説もいいけど、やっぱり著者のノンフィクション、そしてエッセイが好きです。
コロナという問題はありますが、旅がしたいと心からそう思いました。
旅のつばくろ
2021/06/27 12:39
旅の空への思いを軽やかに
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:第一楽章 - この投稿者のレビュー一覧を見る
JR東日本の新幹線車内誌「トランヴェール」で連載されているエッセイから選ばれた41編が収められています。「情熱についてのレッスン」と題された1編(永六輔さんのインタビューに関するもの)は、恐らく旅行か出張の折に新幹線で読んだようで、記憶にありました。それがいつの時だったかまでは思い出せないのですが、まるで旅先でのデジャヴのように感じられました。
沢木氏の文章は、無駄が削ぎ落とされ端正で切れ味もあるのにも関わらず、情景がまざまざと目に浮かび、また余韻が長いように感じられます。いや、無駄がないからこそ、なのかもしれません。向田邦子さんの文章にも同じような印象を受けます。
重苦しい、自由に旅に出られない状況がもうしばらくは続きそうです。そういう時こそ、この本の帯にあるように「つばめのように軽やかに」、本を車窓代わりに旅の記憶に思いを巡らしてみるのも良いかと思います。