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現代語訳 般若心経
著者 玄侑宗久
人はどうしたら苦しみから自由になれるのだろうか。私たちは、生まれ落ち成長するにしたがって、世界を言語によって認識し、概念を動員して理解する。それは、社会で生きる以上不可欠なものかもしれないが、いっぽうで迷いや苦しみの根源でもある。『般若心経』には、そうした合理的知性を超えた、もうひとつの「知」が凝縮されている。大いなる全体性のなかに溶け込んだ「いのち」のよろこびを取り戻すための現代語訳決定版。
現代語訳 般若心経
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般若心経 現代語訳
2006/12/09 09:32
心のお経「般若心経」
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:濱本 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
般若心経は、大般若経600巻を僅か262文字に纏めた、正に仏典のエッセンスを凝縮した教えである。それだけに無数の解説書が刊行されている。本書は、そのエッセンスを著者が解釈し、解説している。示唆に富む内容が多く、dog earを12ヶ所も付けてしまった。
本書を読んで一番感銘を受けたのは、「私」という概念を捨てる事に拠り、彼岸に達する事が出来るという事である。この「私」という概念は、物心付いた時点から、人間に付き纏い、成長に伴って、強固な頑固な存在として一個人の中で育っていくが、この「私」こそが「苦」の根源であると解くのである。本書を読んで、私は、この概念が分かるような気がした。歎異抄の教えで言えば、「他力本願」という事だと思う。自らの力を否定して、他力を頼りとする。即ち、「私」を捨てる事に通じると思う。全ての感受を「私」が感じるのでは無くて、「私という概念が入っている器」が感じていると理解出来ること。これが、彼岸への近道であるというのである。
また、「全ての物は実体のないもの」と言うのも面白い。人間として、色んな物を感じるが、それは、人間の五感で感じているだけであり、それが正しい実体であるとは、決して言えない。つまり、犬や蜂や人間、それぞれ、同じ花でも違う実体として見ていると言う事である。これは、正に事実であり、物には、実体が無い証拠である。
「全ての物は変化する」何故なら、「全ての物は、不完全である」からである。
科学の世界では、原子は原子核と電子で、原子核は、陽子と中性子で、陽子は、3つのクォークで、クォークを構成しているのは、振動するひもであるとミクロの世界を最小単位は、存在するという前提で発展してきた。しかし、東洋思想では、物質の最小単位は存在し得ないと解くのである。即ち、最小単位が合体して、次の大きさの粒子となるが、その時にくっつく側とそうでない側に分かれるでは無いか。そうするとその最小単位は、分かれるはずであるとおいう論理である。東洋思想は、科学的で無いと否定する人も居るが、西洋思想で行き詰まれば、そこで東洋思想が出てくるのは、西洋の哲学者達の著書を読めば良く分かる。西洋思想と東洋思想の融合が大切だと思う。これを凌駕しているのも「般若心経」なのである。
「無明」これが、「苦」の原因である。「無明」のさらに奥の「光明蔵」を著者は、理解していると言うが、私自身もそう思うのである。だから、何事にも「苦」を感ぜず、幸福感と感謝の心で一杯なのである。
私の親父が世を去った後、毎日、親戚が集まり、「般若心経」を唱えた。私が定年後にやろうと思っているお遍路でも訪れる88ケ所のお寺で「般若心経」を読み上げる。その意味は、深いものがあるという事を本書を読んで改めて知った。私は、ほぼ空で「般若心経」を読み上げる事が出来る。しかし、そこに意味を感じ取った今、本当の意味の「お経」として「般若心経」と付き合っていけると、読み終えて思った次第である。
般若心経 現代語訳
2021/02/15 17:06
分かりやすい
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:dsukesan - この投稿者のレビュー一覧を見る
般若心経の訳本として分かりやすい。仏教の基本知識である四諦や十ニ縁起、六根、六境についても説明がある。
また、音唱することこそが、本来の意義であることも書かれており、実践の道を示してくれる良書。
般若心経 現代語訳
2010/12/17 11:03
かなり厳しい書評となりました。著者の玄侑 宗久さん、すみません。
4人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みどりのひかり - この投稿者のレビュー一覧を見る
私”みどりのひかり”は、主に、自分の感動した本、素晴らしいと思った本について書評を書いてきました。もちろん感動もなく素晴らしいとも思えない本についても少数ながら書いています。そんな本でも読むことは勧めてきました。私がつまらないと思っても他のかたには面白く感じられる本もありますので。
で、私は「般若心経物語」という本を書きましたので、これから同種の本を読んで一つづつ書評を書いていこうと思います。感動してもしなくても書きます。興味をもたれているかたに私の般若心経物語を真っ先に読んで頂きたいからです。そのあとで中村元、紀野一義訳註「般若心経・金剛般若経」を読んで頂き、さらにその後に書評の対象となった般若心経関連の本を読むことをお勧め致します。ま、どれから先に読んでもいいのですが、私のいう順序で読むと頭が整理されて最後の本の良さも悪さもはっきりして来るであろうという特典があります。
この「現代語訳 般若心経 (ちくま新書)玄侑 宗久著」の、「はじめに」の部分に、岩波文庫の;中村元、紀野一義訳註「般若心経・金剛般若経」を参考にしたと書かれています。この本は、翻訳者の主観が入らないような配慮がされていて、自分で読み解くための素材が提供されています。それで玄侑 宗久さんもこの本を参考にしたのでしょう。
たくさんの般若心経解説の本がありますが、著者の余計な自説がしゃらくさい、そんなもの抜きに読みたいという方は岩波文庫の「般若心経・金剛般若経」を読むといいでしょう。 しゃらくさいと思わない方でも、この本は読んでおくべきでしょう。ほんものの般若心経は如何なるものかを、この本が正確に伝えているからです。
で、玄侑 宗久著「現代語訳 般若心経」は、「空(くう)」というものを著者が確実に捉えていることは間違いないでしょう。
ですが、著者が論理的思考力に優れているかというと、そうでもありません。
昔、NHKテレビで、自閉症児は、色々検査してもどこも異常はみつからない。こんなふうになったのは母親の育て方が悪かったからだと結論付けた精神科医だか、心理学者がいて、それが自閉症児親子の姿とともに、全国放送されました。
その子の母親はどんなにつらかったことでしょう。人の心を対象にして研究している者が、母親への何の配慮もなくそんな放送をしたのです。親の育て方が悪いというのは事実でもありません。当時の検査の精密さのレベルが低く、脳の異常が発見されなかっただけです。心理学者がアホだったということだけで済まされる問題ではありません。
「病は気から」とよく言われますが、何の根拠もありません。根拠まがいのことはよく言われますが、吟味するとどれも論理に明らかな欠陥があります。
「気から」、つまり「精神の持ち方」から病気に至るまでの、論理的な化学反応や物理反応(力の伝達など)の連鎖の根拠無しに、「精神の持ち方が悪いから病気になる」つまり「馬鹿だから病気になる」と言っているわけで、馬鹿げたことですが、この考え方はそうとう多くの人が支持しています。
聖書の「ヨブ記」にも、ライ病の人に対して「おまえがそんな醜い病気になるのは神を信じてないからだ」と責められる場面があります。2000年以上、そんな非論理的な考え方が続いていて今も栄えています。玄侑 宗久氏も、この考え方を立派に受けついでおられます。玄侑 宗久著「現代語訳 般若心経」には、ハイゼンベルグの量子力学なども言葉としてでてきていて、それはそれでかまいませんが、著者が論理的思考ができてない人間であることには変わりありません。
それでも感動があればいいのですが、この本からは人間的な感動は感じられません。著者は小説も書いていて芥川賞もとっているようですが、文学にしろ芸術にしろ宗教にしろ、感動がなかったら何にもなりません。(ま、これは私が読んで感動しなかっただけで、他の読者は感動したかも知れませんが)
私の「般若心経物語」の概略はこちらに書いていますので参考にしてください。
かなり厳しい書評となりました。著者の玄侑 宗久さん、すみません。
しかし、この本によって般若心経がわかった、とてもためになった、というかたが必ずいるはずです。私”みどりのひかり”は、良いという評価はしていませんが読んでみてください。これによって明るくなるかたもいるでしょう。

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