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進駐軍向け特殊慰安所RAA
著者 村上勝彦
終戦からわずか3日後の1945年8月18日、内務省警保局から全国の知事に秘密の指示が発せられた。それは、進駐軍向けの性的な慰安所を速やかに設けよという指令だった。副総理が要請し、のちに総理大臣となる池田勇人主税局長が口利きして資金を調達したと伝えられる特殊慰安所RAA。日本人客は入れないその場所で働いていたのは誰だったか。RAAが閉鎖され、街に出た女性たちが国民から疎まれることになったわけとは。占領下にあった敗戦国、その裏側史を活写する。
進駐軍向け特殊慰安所RAA
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進駐軍向け特殊慰安所RAA
2022/05/25 10:41
多くの日本人は知らない、知りたくないのか
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はNHK記者を長年務めた方が書いたものである。しかし、日本が第2次世界大戦で敗戦、無条件降伏をして、アメリカ軍等の連合軍が占領軍として入ってくるにあたり、「進駐軍向け特殊慰安所」を日本政府が率先して作ったことを知らなかったという。
たしかに、一般的な日本の近代を扱う歴史書には触れていないことが多いが、ないわけでない。ただし、これを推進する組織としてRAA(Recreation & Amusement Association)が設立され、短期間で廃止されたため、注目度が低かったかもしれない。
ようやく、新書という形で纏められたことは、将来の日本がどう進むべきか考えるにあたり学ぶ材料の一つとして捉えたい。
第1章、第2章で、日本を占領するため入ってくる進駐軍向けに、日本政府は短期間にキャバレー、ダンスホール等ともに売春施設を作ろうとする経過等に触れる。8月15日に玉音放送でポツダム宣言受諾、無条件降伏を受け入れた後、すぐに(3日後)に政府は通知を出し、RAA作りにはいる。これは、日本軍が占領地で、民間人の殺戮、略奪、強姦を繰り返していたことで、進駐軍も同じことをする恐怖と国体護持(国民を守るのではなく)のため、進駐軍向け売春施設が必要と判断したからという。これは一般的評価である。
第3章で「特別女子従業員」の仕事 として、RAAで働かされた女性がどう集められ、どんな実態であったかに迫る。売春をさせるために、国のためと言いながら、騙し、甘言を弄し、強制するなどして、女性を集めた実態が出てくる。行政機関が直接出ていくわけにいかないので、民間業者を前面に立てるやり方も明らかにする。
第4章 立ち入り禁止 で、進駐軍兵士等に限定した施設の性格を明らかにし、進駐軍も見て見ぬふりをする。しかし、アメリカ本国の受け止めは気にしながら。
結局、性病の蔓延で、RAAは短期間で廃止することになる。人権無視の挙句の果てであろう。
その後、第5章で、誰が街娼になったのかと迫る。当時の調査結果を活用し、明治維新以降の人身売買、芸娼妓解放令にも触れていく。街娼は目立つし、身近に感じてしまうので拒否感が強いが、遊郭は隔離され、目に触れないから許容するということも取り上げる。
こうしたことは、日本特有かというと、戦争で引き起こされる犯罪は、各国で見られることを、第6章の戦争と性犯罪で取り上げる。これは、バランスをとるという意味でなく、戦争が生み出す犯罪の普遍性を明らかにするものだろう。さらに、日本軍特有の精神主義に基づく、兵站不足、兵士をモノ扱いすることから生み出される犯罪等にも触れる。日本以外にも同様の国もあるかもしれないが。
第7章で真実を伝える意味を問い、まとめとする。
進駐軍向け特殊慰安所RAA
2022/03/19 19:24
「耐えがたきを耐えて、全日本婦人の盾となる」
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「耐えがたきを耐えて、全日本婦人の盾となる」、甘言、泣き落とし、ウソ、挙句の果てには連れ去り、彼女たちはRAAで働き出した。しかし、世間は冷たく、彼女たちは「パンパン」と呼ばれ蔑視された
進駐軍向け特殊慰安所RAA
2022/03/26 03:29
必要悪か、ただの悪か
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
軍隊のゆくところには、必ず生ずる
重要問題を、終戦直後の日本政府が
どう処理したのか、について書かれた本です。
感情論が先走りがちな、このような主題こそ、
冷静な筆致で淡々と綴られることが望ましいと
思いました。