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2件
夜の公園
著者 川上弘美 著
「申し分のない」夫と、二十五年ローンのマンションに暮らすリリ。このまま一生、こういうふうに過ぎてゆくのかもしれない……。そんなとき、リリは夜の公園で九歳年下の青年に出会う――。寄り添っているのに、届かないのはなぜ。たゆたいながら確かに変わりゆく男女四人の関係を、それぞれの視点で描き出し、恋愛の現実に深く分け入る長篇小説。
夜の公園
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夜の公園
2010/09/06 18:34
主人公の静かな覚悟が気持ちいい、川上弘美の「夜の公園」。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
川上弘美の恋愛小説と言えば、ちょっと斜めな感じのシチュエーショ
ンが多く、それがなかなか良かったりするのだけど、「夜の公園」はち
ょっと違う。けっこう、まっすぐな物語だ。
登場人物は、主人公の主婦リリ、彼女が好意を持つ青年の暁、リリの
夫の幸男、幸男の不倫相手春名。リリと春名が親友だったりして、なか
なか複雑だ。とは言っても、そこは川上弘美、確かにW不倫であるが、
描かれているのはドロドロとした恋愛模様ではなく、彼ら四人の心の襞。
その細部にまで入り込んでいく。そこで明らかになるのは、だれもが自
分の心を持て余しているという事実だ。それでも彼女たちは人を愛し、
人と交わり、日々を暮らして行く。その描写にウソを感じないのもさす
がである。「わたし、いったい今、どこにいるんだろう」「わたしいま、
しあわせなのかな」「どうしてわたし、今ここにいるんだろう」と幾度
となくひとりごちるリリ。不安定な中で何かを確かめるように彼女はつ
ぶやく。
小説は各章ごとに視点が変わっていき、最終章ではそれが渾然一体と
なってリリの独白にいきつく。ラスト、彼女は自らの心からも、他人の
心からも、身の回りのいろいろなものからも解き放たれたいと願う。そ
の静かで力強い覚悟が気持ちいい。
ブログ「声が聞こえたら、きっと探しに行くから」より
夜の公園
2020/08/21 09:24
数々の名作を発表しておられる川上弘美氏によるたゆたいながら変わりゆく4人の男女の関係をそれぞれの視点で描き出した長編恋小説です!
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『神様』(パスカル短篇文学新人賞)、『蛇を踏む』(芥川賞)、『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)、『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)など数々の名作を発表しておられる川上弘美氏の作品です。同書は、申し分のない夫と、35年ローンで購入したマンションに暮らすリリが主人公です。このまま一生、こういうふうに過ぎてゆくのかもしれないと思っていた矢先、リリは夜の公園で9歳年下の青年に出会います。そこから人生にいろいろな変化が現れてきます。「寄り添っているのに思いが届かないのはなぜなのでしょうか?」 たゆたいながら変わりゆく男女4人の関係をそれぞれの視点で描き出した恋愛長編小説です。