- みんなの評価
5件
リベラルとは何か 17世紀の自由主義から現代日本まで
著者 田中拓道 著
現代のリベラルは「すべての個人が自由に生き方を選択できるよう、国家が一定の再分配を行うべきだ」と考える。リベラルは17世紀ヨーロッパの自由主義から思想的刷新を重ね、第二次世界大戦後は先進諸国に共通する政治的立場となった。しかし20世紀後半の新自由主義や近年のポピュリズムなどの挑戦を受け、あり方の模索が続く。本書は理念の変遷と現実政治の展開を丁寧にたどり、日本でリベラルが確立しない要因にも迫る。
リベラルとは何か 17世紀の自由主義から現代日本まで
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
リベラルとは何か 17世紀の自由主義から現代日本まで
2021/03/02 09:42
「リベラル」という考え方は先進国の共通の立場となりはしたが、果たしてこれからの世界で生き残れるのか?といった問題意識に対して回答をしてくれる興味深い一冊です!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、政治理論、比較政治を専門に研究され、『貧困と共和国―社会的連帯の誕生』、『よい社会の探求―労働・自己・相互性』、『福祉政治史―格差に抗するデモクラシー』などの興味深い著作を発表されている田中拓道氏の作品です。同書の中で筆者は、「すべての個人が自由に生き方を選択できるよう国家が支援するべきだと考えるリベラルですが、この考え方は17世紀西ヨーロッパの自由主義を出発点として、第二次世界大戦後は先進国に共通する立場となりました」と述べられています。しかしながら、1970年代以降は新自由主義や排外主義による挑戦を受け、この考え方は苦境に陥っており、果たしてリベラルは生き残れるのだろうかという疑問を呈されています。同書では、こうした問題意識をもとにして、具体的な政策を交えつつ、歴史的な変遷と現代の可能性を論じた一冊です!
リベラルとは何か 17世紀の自由主義から現代日本まで
2021/05/22 21:28
多様性を前提とした姿勢としてのリベラル
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:第一楽章 - この投稿者のレビュー一覧を見る
リベラルとは何か、それは現代においては、「価値の多元性を前提として、すべての個人が自分の生き方を自由に選択でき、人生の目標を自由に追及できる機会を保証するために、国家が一定の再分配を行うべきだと考える政治的思想と立場」を指します。(P.i)
17世紀に誕生した自然権思想から、産業革命後の自由放任主義を経て誕生したリベラルという思想が、戦後は新自由主義、グローバル化、排外主義ポピュリズムの挑戦を経て変化を遂げていくプロセスが、わかりやすく描かれています。福祉の受益層を狭く絞り込む制度を持つ国ほど、福祉に依存する「彼ら」のために、働いて自活している「我々」がコストを負担するのは不公平だという意識が広まり分断が生まれやすく、逆に制度が普遍主義的であるほど連帯が生まれやすい、という指摘はなるほどと思いました(P.143-144)。日本では「リベラル」という言葉の意味が迷走してきたことも本書で指摘されていますが、こうした点も、リベラルな考え方が主流化していない(選択肢としてなり得ていない)背景にあるのだろうと感じました。
山口周氏の『ビジネスの未来』や(リベラルで持続可能な社会像を提示)、水島治郎の『ポピュリズムとは何か』(現代のリベラルへの大きな挑戦となっているポピュリズムというものの理解)と合わせて読むことで、それぞれの主張するところがアタマの中で補完し合い、バラバラに読むよりも深く理解できたように感じます。相乗効果が生まれる”読み合わせ”ってあるな、と思った次第です。
リベラルとは何か 17世紀の自由主義から現代日本まで
2022/05/10 20:56
リベラルと言う立場についての入門書
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:見張りを見張るのが私の仕事 - この投稿者のレビュー一覧を見る
古典的自由主義、商業的自由主義、ニューリベラリズム、福祉国家、現代リベラリズム、とリベラリズムの思想と変遷をたどり、現代リベラルと見做される人々はどういった政策的主張を行っているのか、ということを一冊で通観する。
リベラリズムがどういった思想的伝統を持ち、その変遷はどういった社会的変化によって引き起こされたものなのか勉強になる一方で、政策論の中にはうなずける部分とそうでない部分がある。著者は新自由主義に対して一貫して批判的なのだが、雇用の流動化を促進して、雇用保護を廃止してユニバーサルな福祉を、といった主張をしているが、それってネオリベに利用されて終わるんじゃないの?と思わないでもないのであった。ユニバーサルな福祉というとベーシックインカムが思いつくが、ベーシックインカムはグローバル企業のCEOなども主張している。しかしそれは、企業利益を上げるために労働者に対して賃金を払うつもりはないのだが、しかし消費者には購買力を持っていてもらわなければならないから政府支出と福祉でそれを補填しようとしているにすぎない。利用される危険とはそういうことである。