- みんなの評価
3件
朝のあかり 石垣りんエッセイ集
著者 石垣りん 著
自分の住むところには自分で表札を出すにかぎる――。銀行の事務員として働き、生家の家計を支えながら続けた詩作。五十歳のとき手に入れた川辺の1DKとひとりの時間。「表札」「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」などの作品で知られる詩人の凜とした生き方が浮かび上がる、文庫オリジナルエッセイ集。〈解説〉梯久美子
【目次】
I はたらく
宿借り/けちん坊/朝のあかり/雨と言葉/目下工事中/よい顔と幸福/日記/晴着/事務服/事務員として働きつづけて/おそば/領分のない人たち/食扶持のこと/着る人・つくる人/巣立った日の装い/試験管に入れて/夜の海/こしかた・ゆくすえ
II ひとりで暮らす
呑川のほとり/シジミ/春の日に/電車の音/器量/花嫁/通じない/女の手仕事/つき合いの芽/彼岸/コイン・ランドリー/ぜいたくの重み/水はもどらないから/愛車/庭/籠の鳥/貼紙/山姥/梅が咲きました/雪谷/私のテレビ利用法/かたち
III 詩を書く/立場のある詩/花よ、空を突け/持続と詩/生活の中の詩/仕事/お酒かかえて/福田正夫/銀行員の詩集/詩を書くことと、生きること
IV 齢を重ねる
終着駅/四月の合計/二月のおみくじ/椅子/私はなぜ結婚しないか/せつなさ/インスタントラーメン/火を止めるまで/しつけ糸/鳥/おばあさん/
空港で/八月/港区で/花の店/隣人/風景/思い出が着ている/悲しみと同量の喜び/ウリコの目 ムツの目/乙女たち/夜の太鼓
朝のあかり 石垣りんエッセイ集
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
朝のあかり 石垣りんエッセイ集
2023/05/23 16:51
石垣りん/それでよい。
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
詩人石垣りんのエッセイ集『朝のあかり』は、彼女の生前に刊行された3冊のエッセイ集の中から選ばれた71篇を収めた読むに値いする文庫オリジナルですが、唯一残念なのが、年譜がないことでしょう。
仕方がないので、岩波文庫の『石垣りん詩集』に載っている「石垣りん自筆年譜」を参考にしながら、エッセイとともにその84年の人生をたどるのがいい。
石垣りんは昭和9年(1934年)、14歳で日本興業銀行に事務見習いとして就職。
その時の幼い姿や18円の初任給に喜ぶ姿など、たびたびエッセイに綴っています。
現代の感覚でいえば、14歳で仕事に出るのは過酷な環境だったのかと思ってしまうが、そうではないと、石垣は書き残している。
「家は、子供を働きに出さなければならないほど生活に困っておりませんでしたが、(中略)私は早く社会に出て、働き、そこで得たお金によって、自分のしたい、と思うことをしたいと、思いました。」
石垣はその頃から書き溜めた文章を色々な雑誌に投稿する少女で、彼女は働くことで書く自由を求めたといえます。
しかし、もちろん働くことは楽ではなく、まして当時の社会では女性の地位も低く、そこにやるせない感情もありました。
彼女の代表作ともいえる「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」などの詩は、そういうところから生まれたといっていいでしょう。
石垣が会社を定年退職するのは昭和50年(1975年)、55歳の時でした。
その少し前、50歳の時に川辺の1DKのアパートで一人暮らしを始めます。
そこから先、亡くなるまでの小さな生活ぶりの様子は、エッセイにもうかがうことができます。
そんな石垣りんにとって、人生とは何であったのでしょう。
少し長めのエッセイ「詩を書くことと、生きること」にこう記しています。
「長いあいだ言葉の中で生きてきて、このごろ驚くのは、その素晴らしさです。」
「私のふるさとは、戦争の道具になったり、利権の対象になる土地ではなく、日本の言葉だと、はっきり言うつもりです。」
時代がどんなに変わろうが、石垣りんが問いかけたことは不変です。
だからこそ、このエッセイ集は読むに値いする一冊なのです。
朝のあかり 石垣りんエッセイ集
2023/04/25 14:28
静かながら、心にずしりと響いた。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ら君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
もの静かで丁寧な言葉のなかに激しく強い気持ちが隠されていて、引き込まれていきました。
昭和の話題なので今とは随分違うことが書いてありながら、その出来事に対する感情に、はっとさせられました。
2025/01/06 18:03
楽しい
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
詩人の石垣りんさんの生き方、考え方がよくわかり、楽しみながら読むことができました。詩との関わり方など、興味深かったです。