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オパールの炎
著者 桐野夏生 著
1999年に日本でピルが承認される約30年前に、ピル解禁と中絶の自由を訴える一人の女がいた。派手なパフォーマンスで一躍脚光を浴びるも、その激しいやり口から「はしたない」「ただのお騒がせ女」などと奇異の目で見られ、やがて世間から忘れ去られてしまう――。謎多き女をめぐる証言から、世の“理不尽”を抉りだす圧巻の傑作長篇。
オパールの炎
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2024/06/26 11:22
半世紀前のユニークな女性解放運動が、いまの社会を逆照射
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
「中ピ連」(本書では「ピ解同」)という名前は聞いたことはあったが、その内実はほとんど知らなかった。本書はフィクションだが、実在した女性解放運動家と、そのユニークなアクション、謎に包まれた末路が題材になっている。
時代に先駆けてピル解禁を訴えた女性がその後どうなったのか、雑誌ライターが関係者の証言を聞き取っていくというスタイルで描かれた小説。
主人公の塙玲衣子は、1970年代にいち早くピル解禁や中絶の自由を求め立ち上がり、派手なパフォーマンスで世間の注目を集めるが、あまりの奇抜さや過激さに、世間からは白い目で見られ、やがて仲間も離れ、社会からも忘れ去られてていく。
彼女がどんな人物で、いったい何をしたかったのか、何と闘ってきたのか。奇抜さの背景にあるものを含め、謎に迫るミステリータッチの女性史?的物語とも言える。
彼女の行動は、多くの人を傷つけ、あまりに奇抜なのだが、さまざまな人たちの証言を通して見えてくるのは、男尊女卑的な世間のジェンダー観、男社会、権力…といった今にも共通する世の中のありようだ。
色物扱いされるような女性を主人公に、本人は一度も登場させずに、これを(雑誌連載で)書き上げたのは、桐野夏生さんだからこそだろう。
連載のスタイルそのままに、ほぼ毎回別の人物の短い独白が、順番に紹介されているので、桐野夏生さんのほかの長編のような重厚さはなく、物足りなさを感じる人がいるかもしれない。
しかし、過去にこのような女性がいて、こんなユニークな活動があった、そして半世紀たっても世の中は対して変わっていない、ということを静かに突き付ける。登場人物たちの言葉にも含蓄があり、比較的短くて読みやすいのに、さまざまに考えさせられた。
2025/02/13 08:24
消息不明
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
筆者には実際の事件や実在の人物をモデルとした作品が多いのに、この作品はどこか手探りの状態と感じる。遠慮があるのではなく、筆者にもとらえがたいものがあったのか? それとも読者に問題提起を突きつけたかったか?