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13件
炎環
著者 永井路子
京の権力を前に圧迫され続けてきた東国に、ひとつの灯がともった。源頼朝の挙兵に始まる歴史のうねりは、またたくうちに関東の野をおおいはじめた。鎌倉幕府の成立、武士と呼ばれる者たちの台頭――その裏には、彼らの死にもの狂いの情熱と野望が激しく燃えさかっていた。鎌倉武士たちの生きざまを見事に浮き彫りにした傑作歴史小説にして第52回直木賞受賞作!
炎環
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炎環 新装版
2016/04/19 12:46
不朽の名作
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:上総介 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1979(昭和54)年の大河ドラマ「草燃える」の
もとです。4つの作品それぞれの主役の目線から、
鎌倉初期の権力闘争を描いた不朽の名作です。
特に北条義時が目立たぬ青年から、悪辣な権力者に
いつの間にか変貌し、ライバルたちを追い落として
いく「覇樹」は読みごたえ十分です。
炎環 新装版
2020/02/23 22:31
景時側から描いた作品はやはり魅力がある
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1964年下半期の直木賞受賞作品。やはり鎌倉幕府成立前後を題材にした小説といえば、この人の名前が真っ先に思い浮かぶ。大河ドラマの原作にもなっている「草燃える」のがこの作品なのだが、北条義時という北条時政の息子にして第2代執権のことを父・時政以上の切れ者として扱っていたということを記憶している(あのドラマで義時を演じていたのは松平健さんだった)。鎌倉幕府に登場する人物は、よくよく考えれば単純には善と悪には分けられないわけで、義経側にたてば梶原景時なぞ獅子身中の虫以外の何物でもないであろうが(日本人のほとんどは義経派だろうが)、景時には景時の考えがあって頼朝を支えていくには義経という男が邪魔だったのだろうし、それは頼朝自身の意思でもあっただろうし。景時側から描いた作品はやはり魅力がある
炎環 新装版
2022/05/24 15:50
大河ドラマ見るなら欠かせない一冊
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第52回直木賞受賞作。(1955年)
鎌倉時代の初めの頃を描いた「四章から成る長編でもなければ、独立した短編集でもない」と作者自身の言葉が残っている。
では、この4つの物語はどうなのか。
作者の言葉が残っている。
「一人一人が主役のつもりでひしめきあい傷つけあううちに、いつの間にか流れが変えられてゆく―そうした歴史というものを描くため」と。
四つの物語の主人公はこうなっている。
最初の「悪禅師」では源頼朝の異母弟の全成、次の「黒雪賦」では頼朝を補佐しながら最後は滅ぼされる梶原景時、「いもうと」は北条政子の妹でのちに全成の妻になる保子(彼女の名前はあまりよくわかっていないようで、現在放映中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では実衣となっている)、そして最後の「覇樹」は北条義時が描かれている。
この作品の直木賞選委員の選評で「鎌倉時代を知る作家には、折角の知識も、それほど高く評価されなかったが、少なくともその知識を気楽に扱えるだけ、消化し、自分のものにしていることは事実である」という今日出海氏の評や「この作者は史料の勉強家で、史料のなかから小説の題材を発見するのにすぐれた資性を持っている」という松本清張氏の評など、新しい歴史小説作家の登場に発表当時多くの期待が集まっていたことは間違いない。
そして、実際今読んでも面白い。
決してメインではない人物を描きながら、作者が言うように、確かに歴史はそういう人たちによって作られたことを忘れてはならない。