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3件
黒衣の宰相
著者 火坂雅志
家康に取り入り、幕府三百年の土台を作った男
黒衣の宰相と呼ばれた金地院崇伝は、墨染めの衣を身にまとった禅僧でありながら、徳川家康の懐刀として政治に参画した。豊臣家滅亡の切掛となった方広寺鐘銘事件を画策し、武家諸法度、禁中並公家諸法度などの基本法典を起草して徳川二百七十年の平和の礎を築き上げた希代の怪僧の生涯を描いた長篇歴史小説。解説・島内景二
黒衣の宰相
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黒衣の宰相
2006/05/01 08:22
まさに大河小説そのもの
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
京都東山にある古刹南禅寺。その境内は古刹らしい緑に囲まれた佇まいと、琵琶湖から水を引くインクラインの煉瓦とが不思議に調和している。黒衣の宰相として最も有名なのは、川越喜多院の天海僧正であろうか。この天海は徳川家に仕えた僧侶にして政治顧問であったわけだが、同時期に徳川家に仕えた顧問だった僧侶にはもう一人いる。南禅寺の住職だった金地院崇伝である。
今もある南禅寺の塔頭の一つに金地院があるが、この金地院に住していたのが崇伝である。NHK大河ドラマの『葵・徳川三代』でも、この二人は登場した。うまく特徴を捉えた味のあるキャスティングに感心した覚えがある。天海が金田龍之介、崇伝が大河内浩であった。
本書はその金地院崇伝の一代記である。通常の文庫本でゆうに二冊分はあるボリュームである。崇伝には史料として『本光国師日記』というものがあるようだが、崇伝の生い立ちはよく分かっていないようだ。そういうときこそ、小説家の腕の見せ所である。
火坂は南禅寺の若き禅僧の時代から書き進めている。様々な分野の人々との出会いが面白い。これらの人々は崇伝の将来に影響を与え、再会する場合もある。本書のボリュームと内容は将に大河小説の条件を備えているといってよい。
崇伝が若き時代を過ごしたのは、関が原の戦いの結果、豊臣の天下が終わり、徳川の時代になろうとしていた頃である。南禅寺の禅僧としては系列の破れ寺に近い末寺に派遣されて将来を悲観する崇伝であったが、崇伝の野心は僧侶には似つかわしくない。
その後、徳川の家臣に認められて自信を深める崇伝であったが、住職の手伝いで外交文書の作成作業に加わる。この頃から権力に接することになるわけである。その後、大阪冬の陣、夏の陣を経て徳川の時代が到来した。崇伝は家康の参謀役となり、種々の政策立案を成し遂げるが、好敵手が現れた。
同じ黒衣の宰相である南光坊天海である。宗派は違うし、その才も異なるのだが、参謀に僧侶が二人と言うのも気になるものである。しかし、崇伝の恋愛も絡めて火坂の筆は見事に長編物語を締めくくる。
家康の参謀を勤めていたが、家康亡き後は二代将軍秀忠に仕える道を選ぶが、取り巻きは全く異なる陣容である。そこをうまく取り入って秀忠にも仕えるあたり、崇伝はただの僧侶ではなかった。
崇伝が自分の進む道を切り開き、出世を重ねていくのだが、節々で人生の岐路に立つ。すなわち、迷い、悩む時期がある。これらも自然に描けている。歴史的な出来事とのかかわりも面白い。本当に崇伝がかかわったか否かは分からないが、小説としては興趣を盛り上げることに成功したようだ。
黒衣の宰相
2018/05/19 20:11
斬新な視点での歴史物
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
有名な方広寺鐘銘事件を起こし、武家諸法度を起草した僧侶を主人公にした歴史物。僧侶の視点からの徳川の天下取りの話が新鮮でした。いかにこの時代、政治と宗教が密接な関係にあったかがよく分かります。崇伝に捨てられた紀香に同情しましたが、最後はちょっと救われた気がします。一つの想いを持って何かを成し遂げる強さ、私には無理そうです(>_<)
黒衣の宰相
2015/12/27 23:12
あっという間に読んでしまいました
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pafupafusnow - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫としては厚みがある方だと思います。(2cmぐらい)
でも読み始めるとあっという間に読み終わってしまいました。