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12件
青が散る
著者 宮本輝 (著)
燎平は、新設大学の一期生として、テニス部の創立に参加する。炎天下でのコートづくり、部員同士の友情と敵意、勝利への貪婪な欲望と「王道」、そして夏子との運命的な出会い──。青春の光あふれる鮮やかさ、荒々しいほどの野心、そして戸惑いと切なさを、白球を追う若者たちの群像に描いた宮本輝の代表作。
青が散る(下)
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青が散る 新装版 上
2021/06/17 14:46
大学テニス部を舞台に、人の生死に触れる青春時代を描く傑作
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
新設大学のテニス部設立に関わり、部員やその他の友人との関わりを描く宮本輝氏の小説の下巻。下巻は大学3回生から卒業までを描いています。
主人公の燎平が経験する節目となる重要なテニスの試合が2試合登場します。部の規律を守り、けじめをつけるために下級生部員との退部をかけた試合、共に部の設立に関わったキャプテン金子とダブルス出場を果たした最終学年のインカレ1回戦の試合です。決して一流の選手にはなれないことを受け入れ、”一流の下よりは二流の上”を目指して研鑽を積んで行く燎平。退部を掛けた試合ではテニスの実力では格上の下級生に勝利しますが、インカレ1回戦では優勝候補に敗れ去ります。
上巻よりはテニスのプレーの描写が多いですが、プレーを通じての心理描写が細かく、前者の退部を掛けた試合も、後者のインカレ一回戦の試合も、勝敗以外にその試合にかける燎平の意地のようなものが伝わって来ます。
そして本書が単なる恋愛もの、スポーツものとは一線を画すのが、4年間の大学生活で、燎平にとって3人もの身近な人の”死”を経験することです。3人のうちの一人は燎平のテニス部の同僚なのですが、学生時代に身近な同僚を亡くすという経験は、実際にもしも自分に同じ経験が降りかかったら、どう受け止めたのだろうかと思いました。そのあたりの描写もあって、単に20歳前後の過去に対する懐かしさだけではなく、切なさとか、寂しさのような読後感でした。
誰もがこの小説の舞台のどこかに共感できる部分があるからこそ、単行本として出版されて以来30年以上も版を重ねて多くの人に読み継がれているのでしょう。20代、30代のころの自分がこの本を読んだら、どんな読後感を持っただろうか、と考えてしまいました。
青が散る 新装版 下
2021/06/14 07:35
スマホも携帯もない時代の大学テニス部を舞台にした人間ドラマ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
新設された大学のテニス部を設立し、友人を勧誘して運営してゆく主人公たちの日々を描いた宮本輝氏による小説。
舞台はおそらく1960~1970年代の関西。スマホもない、携帯もない、インターネットもない時代の大学生活。友人と意思疎通するには直接会って話をするか、固定電話で話をするしかない時代。授業の後でクラブの練習に明け暮れて、練習が終わったら行きつけの喫茶店で友人と他愛もない会話を楽しんで、三々五々別れていくというような毎日。50歳の私にとっても大学時代は携帯は無かったし、友人との連絡は固定電話のみでした。そんな大学生活を送った経験を持つ人なら、なんとなく懐かしい気持ちでこの本の世界に入っていけると思います。
テニス部が舞台とは言え、テニスをしている描写はそれほど多くなくて、だからスポーツ小説というわけではなく、主人公の燎平には憧れの女性も登場しますが、恋愛小説というわけでもなく、一人の20歳ぐらいの男の子が周囲の友人たちとの出会いや別れ、彼らの言動やテニスを通じて成長していくような姿を描いています。ストーリーに練られた伏線があったり、ドラマチックな展開があるわけではないのですが、登場人物が話す自然な関西弁、細やかな心理描写などで間延びせずに引き込まれていくのはさすが宮本輝氏という印象です。
大学時代にスマホ、携帯の無かった年代の人であれば、読者を選ばず誰でも感情移入できると思います。でも言いかえると、スマホやらSNSが友人との交流の手段として当たり前の世代にとって、この小説の舞台はどう映るのか、興味が湧いてきます。
2020/05/29 19:56
選ばなかった道の物語
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あおひこももね - この投稿者のレビュー一覧を見る
人は一本道しか歩けないけれど沢山の選ばれなかった道を鮮やかに感じ取ることが出来ました。
ドラマは東京が舞台になっていましたが、大阪版リメイクしてほしいです。