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19件
〈邪馬台国はどこですか?〉シリーズ
著者 鯨統一郎(著)
カウンター席だけの地下一階の店に客が三人。三谷敦彦教授と助手の早乙女静香、そして在野の研究家らしき宮田六郎。初顔合わせとなったその日、「ブッダは悟りなんか開いてない」という宮田の爆弾発言を契機に歴史談義が始まった……。回を追うごとに話は熱を帯び、バーテンダーの松永も教科書を読んで予備知識を蓄えつつ、彼らの論戦を心待ちにする。ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、光秀謀叛の動機、明治維新の黒幕、イエスの復活――を俎上に載せ、歴史の常識にコペルニクス的転回を迫る、大胆不敵かつ奇想天外なデビュー作品集。/【目次】悟りを開いたのはいつですか?/邪馬台国はどこですか?/聖徳太子はだれですか?/謀叛の動機はなんですか?/維新が起きたのはなぜですか?/奇蹟はどのようになされたのですか?/*本電子書籍は『邪馬台国はどこですか?』(創元推理文庫 新装新版 2024年8月30日初版発行)を底本としています。
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邪馬台国はどこですか?
2005/05/17 16:59
酒と料理と歴史バトルに舌鼓を打ちながら楽しむ大人の時間。
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いくら - この投稿者のレビュー一覧を見る
久々に一気読みをしてしまった。
本書には表題作を含む6本の短編が収録されており、それぞれ独立したお話なので、本来は一気に読む必要はないのだけど、一つのバトルが幕を閉じた瞬間に、次のバトルにまで興味が及んでしまうのです。
舞台はとあるバー。
温厚な性格の日本古代史専攻の三谷教授、才色兼備の助手、静香の2人の前に現れた、正体不明・自称「ライター」の宮田は、本職の歴史研究家である2人を前に、独自の論理を展開する。
おかげでバーはいつも激しい論争の場と化すのだが、そんな3人の様子を密かに楽しみに見守るのがバーテンの松永の日課になりつつある。
「ブッダは悟りなど開いていない」「邪馬台国は東北にあった」「聖徳太子は架空の人物だ」「光秀は謀反を企んでいなかった」「明治維新はたった一人の人物によって成し遂げられた」「キリストは本当に復活した」
これらの奇想天外に思われる宮田の説には、様々な証拠が提示され、最終的には誰もが「もしかしたら・・・」と納得させられてしまうのである。
私は歴史ミステリーを読んだことがなく・・・というより、昔っから歴史というものが大の苦手で敬遠しておりました。
今中学校で受けた歴史のテストを受けたら、下手すると0点を取れるかもしれない。
そんな歴史音痴を自負する私でも、本書は本当に面白い!
全くお堅いものではなく、聴いたことがあるかな〜?程度の知識でも、ポイントは噛み砕いて説明されていますし、バーのカウンターでの4人の会話を横で聞いている「茶(酒?)飲み話」的な感覚が本書の全てであり、小気味良い会話がテンポ良くページを捲る手を進めてくれます。
これらの会話を盛り上げてくれるのが、それぞれのキャラクター付けです。
特に自信家の静香は、宮田に対して「あなたバカ?」とどこかのアニメで聴いたことのあるような(笑)高慢な台詞を連発し、松永をハラハラさせるのだが、宮田の説の信憑性に反論できなくなった姿にちょっぴりスカッとさせられたり。
とにかく強烈な女性なのです。女のヒステリって怖いね。(^^;)
また、会話の随所に挟まれる酒のつまみがまた美味しそうで堪りません。
こんな面白い歴史バトルがみられるのなら、私も是非とも行ってみたいわ〜。
「天才」は常識にとらわれず、物事の本質のみを見定め、発想の転換ができる人間である・・・というような意味の言葉をよく聞きますが、それならばこの宮田は「天才」としか言えません。宮田=鯨総一郎なのか、それとも別に宮田なる人物が実在するかどうかは私には知りえませんが、少なくともここに本書が存在するのは現実です。
本書を専門家が読んだ時、どのような反応が返ってくるかなんてどうでもいいのです。歴史はこれほどまでに謎めいており、私達を魅了してくれる、その事実を知ることができることこそが本書の一番の価値だと思うのです。
「邪馬台国はどこですか?」の続編として「新・世界の七不思議」が刊行されています。バトル中毒症状に陥られた方は是非こちらも合わせてお読み下さいませ。
邪馬台国はどこですか?
2021/03/25 12:58
虚言も言いつのれば・・・
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヤマキヨ - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮田の語る話は、とんでもないほどの牽強付会の連続。そんなはずなない!と思いつつ読む私は、宮田の話を楽しみにするバーテンダー松永よりは、必死に反論を試みる早乙女に感情移入しているでしょうか。
邪馬台国は九州でも近畿でもない第三の場所に?聖書の奇蹟はトリック?奇想天外な見解でも、分権に基づいて言いつのられると、なぜか「そうかもしれない」と思えていてしまうから不思議。
邪馬台国はどこですか?
2001/11/24 08:29
どこまでがフィクション?
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumaOne - この投稿者のレビュー一覧を見る
「この作品がフィクションであるという保証はどこにもありません」。とにかく、こんな面白い本は読んだことが無い!
タイトルだけ見ると堅苦しい歴史の本の様だが実際は、アクロバティックな論法を用いたもうひとつの歴史的ノン・フィクション短編集。いや、ついノン・フィクションと書いてしまったが、実際はフィクションかも知れない。
作中の人物に冒頭で投げかけられる仰天解釈に、最初はバカなと思うが、徐々に話が展開していくにつれ、もしかしてと思ってしまう。見事? な論法に、いつの間にか私は史実か創作かの区別がつかなくなってしまっている。例えば、『 聖徳太子はだれですか? 』 の章では、聖徳太子は、一体誰だろう? という命題から、天皇は万世一系の名目を守る為に、日本書紀に隠された真実の発見へと移り、 最後には推古天皇 という名の謎まで発展してゆく。
他にも、『悟りを開いたのは誰ですか?』(仏陀に関する話)、『邪馬台国はどこですか?』(邪馬台国に関する話)、『謀叛の動機はなんですか?』(織田信長に関する話)、『維新がおきたのはなぜですか?』(明治維新に関する話)、『奇跡はどのようになされたのですか? 』(キリストに関する話)といった命題から、見事な論法が展開されていく。これらの事に少しでも興味があるかたならば、一読してみては如何でしょうか?
少なくとも私にはこの本を読んでからというもの、今まで習ってきた日本・世界の歴史は全て間違いじゃないかと思えて仕方が無い。それ程のインパクトを受けた。是非、歴史に詳しい方に読んで頂き、どこが嘘かを教えて欲しい!