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シュレーディンガーの少女
著者 松崎有理(著)
BMIを理由に会社を解雇された主人公の元に、政府からダイエット企画の参加者に選ばれたという通知が届く。それは“敗者は死なねばならない”というルールのデスゲームだった(「太っていたらだめですか?」)。すべての人は例外なく、65歳の誕生日を迎える前後で死ぬ。64歳になった紫は、人生の目標をほぼ達成していたが、スリの子どもから被害に遭いかけ、追いかけていったすえにその子を手元に引き取ることに……(「六十五歳デス」)。さまざまなディストピア世界を生きのびる、パワフルで勇敢な女性たちの物語。あとがきに自作解説を含む。/【目次】六十五歳デス/太っていたらだめですか?/異世界数学/秋刀魚、苦いかしょっぱいか/ペンローズの乙女/シュレーディンガーの少女/著者あとがき
シュレーディンガーの少女
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2024/09/11 16:31
リアリティラインが自由自在な6編
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
寿命の定まった世界を舞台に初っ端から惚れ惚れするような老婦人を見せてくれたかと思いきや、トンチキ与党がデブ抹殺バラエティ番組を国営メディアに生中継させたり、数学禁止令のある異世界物があったり、夏休みの自由研究にほっこりさせておきながら悲観を一つまみ加える匙加減にくだをまき、フェルミのパラドックスを文明から孤立した島に託し、表題作で締めくくる……。一見バラバラな短編集だが、最後に表題作を持ってくることで、作中に散りばめたキーワードがワッと豊かな世界か芽吹いてくるようだ。
ディストピアで生きる少女たちを描くだけあって、どの作品もどこか素直に喜びきれず、しかしビターな読後感が心地よい。絶望に寄せる薬は思いのほか豊かなのだろう。次世代へ継ぎ、皮肉に笑い、喜びに触れ、先達らの知識に触れて考え、打ちひしがれた後に諦めきれなかった人の影を追うように未来を向き、もしもに慰めを見出す。
……かなり自己陶酔しながら浮かんだ感想でお目汚しして申し訳ないが、もしこれを読むあなたの心が塞がっていて、琴線に触れるような内容があったら、ぜひ読んでみて欲しいと思う。
シュレーディンガーの少女
2023/01/15 08:54
世界は暗い予感に満ちている
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
収録作の6編はすべて、語り口は柔らかいもののバッドエンドに満ちている。
人類の寿命は定められたままだし(「65歳デス」)、人類は宇宙生物に捕食される運命だし(「太っていたらだめですか?」)、元の世界に帰ってきても数学の点数は劇的には上がらない(「異世界数学」)。
どんなに頑張っても食卓に秋刀魚が乗るわけでもなし(「秋刀魚、苦いかしょっぱいか」)、少女はブラックホールからのがれることはできない(「ペンローズの乙女」)、ゾンビの病原体はきっと世界を滅ぼす(「シュレーディンガーの少女」)。
読後感は、「何だかつれえな。」ってのが本音。
でも収穫もあった。今までどうにも謎で仕方なかった「シュレーディンガーの猫」と「ウィぐなーの友人」について明確な説明がなされていたこと。
そうだったんだという納得の説明を得られた。
2020年の発表にはまだ追いつけていないが、少しずつ勉強していこうと思う。