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20件
屍者の帝国
屍者化の技術が全世界に拡散した19世紀末、英国秘密諜報員ジョン・H・ワトソンの冒険がいま始まる。天才・伊藤計劃の未完の絶筆を盟友・円城塔が完成させた超話題作。日本SF大賞特別賞、星雲賞受賞。
屍者の帝国
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屍者の帝国
2015/02/06 20:01
ありがとうの意味。
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:AQUIZ - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊藤計劃氏、円城塔氏。
いずれも自分にとって、「大好きな作家」であるのに、刊行当初は手に取るのを躊躇った作品でした。
伊藤計劃先生亡き後、彼の残したプロットが存在していようと、永遠に彼自身によって書き上げられることはない、それだけの理由です。
伊藤・円城両先生の、いずれとも違った味の作品にもなっている筈で、これが抵抗感を後押ししたのかも知れません。
新作が出れば(伊藤先生の活躍された期間は短かったのだけれども)、すぐに手に取っていた他の作品と違い、文庫になって、ようやく読み進めることができました。
「全然知らない、未知の作家の作品だと思って読もう」と。
物語の面白さで読み進められたことが、作品の素晴らしさです。
後になってから、ようやく両先生の、どちらの作風とも微妙に違うなといった「観察結果」が生まれたに過ぎません。
歴史改変系の作品らしく、作中の事件に絡められた、多くの史実の出来事や人物。そして「軍医志願の医学生」「M」「フランケンシュタイン」「レット・バトラー」…彼らが実在する世界。そうしたパスティーシュ要素に気を取られ過ぎないよう、一気に読み進めました。
普段、著者の経歴や私的な情報が、作品に対しての感想などを左右することは無いのですが、伊藤先生が遺した「ありがとう」の意味と、これを「屍者の帝国」の中に綿密に折り込んでくれた円城先生の2人が関わったからこそ、こうした結末になったのかも知れません。
この物語を綴じる「ありがとう」の意味を、そのまま「かつて多くの物語をくれた」伊藤先生に。
そして、それを手にする機会を生んでくれた円城先生に捧げます。
屍者の帝国
2015/10/29 17:47
アニメは別物です
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:swing29 - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊藤計劃が遺した序章とプロットを元に円城塔が完成させた歴史改変スチームパンク。
劇場アニメ版はワトソンとその屍者の下僕フライデーが親友で、愛するフライデーを復活させるためにワトソンが奮闘するというBL的な物語に脚色されてしまったが、この原作にはそういう要素はほとんどない。
18〜19世紀の歴史を知っていると、ここにあの人物が出て来るかという、驚きと楽しみにあふれた歴史改変物の傑作である。
アニメ版を気に入った人も、気に入らなかった人も、とりあえず原作を読んでいただきたい。
屍者の帝国
2015/01/27 00:14
全く違う作家さんの作品ととらえるべき…?
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
フランケンシュタイン化技術が普及した近世を舞台にした小説です。伊藤計劃さんの遺稿を円城塔さんが受け継いでるんですけど、「虐殺器官」と「ハーモニー」の流れを汲んでいて、技術革新と人間性について考えさせられる傑作でした。
序章から先の部分は全て円城さんが書いているにも拘らず、その作風が前面に出てないことが驚きでした。かといって、伊藤計劃特有の無機質さが前面に出てる訳でもない。合作というよりも融合して全く違う作品になったと考えた方が良いかもしれなません。でも、本当に良く出来たSFファンタジーだと思います。