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14件
おじさんのかさ
著者 佐野洋子
りっぱなかさがぬれるのがいやで、かさをさそうとしないおじさん。ある雨の日、子どもたちの歌をきいたおじさんは、はじめてかさを広げてみました。すると……。*この絵本は文字の大きさを変えることができます。そのため紙の絵本とは文字の配置が異なります。
おじさんのかさ
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おじさんのかさ
2010/12/05 06:26
雨に唄えば
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
おじさんは少しいばっています。鼻の下のヒゲなんか、ピンと横にはって、「うっほん」とおじさんみたいにいばっています。
そんなおじさんですから、「くろくて ほそくて、ぴかぴかひかった つえのよう」な「とっても りっぱなかさ」を持っています。
でも、おじさんは少し変なのです。
でかけるときにはいつもかさを持って出るのですが、雨が降ってもかさをさそうとしません。大事なかさが濡れてしまうのが嫌なんです。ちょっとケチくさいですが、おじさんはケチともちがうような感じです。ただ「りっぱなかさ」が大事なだけです。
ある日、おじさんはちいさな男の子と女の子のこんな歌を聴きます。
「あめが ふったら ポンポロロン あめが ふったら ピッチャンチャン」。
なんとも楽しそうな歌です。それで、おじさんはその歌が本当なのか試してみようと、大事な「りっぱなかさ」をついにひろげてみます。
先日亡くなった佐野洋子さんの絵本『おじさんのかさ』は少し教訓じみています。でも、お説教くさくはありません。
そっと生きていくなかでの本当に大切なことを教えてくれています。
子どもたちはこのおじさんのことを笑うかもしれません。馬鹿にするかもしれません。だって、子どもたちだって、かさは雨の日にさすものだってわかっているのですから。
でも、佐野さんはそっと、そっと、ささやいています。
「おじさんのかさのように、使うべきところで使っていないもの、なーい?」って。
最後に描かれた、かさ立ての中の濡れた「おじさんのかさ」は、少しいばっているようにみえます。
◆この本のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。
おじさんのかさ
2010/05/20 04:00
つい 口ずさんでしまう懐かしき唄
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:蒼空猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いわずともですが「100万回生きたねこ」や「空とぶライオン」などでよく知られる佐野洋子さん。
本書も教科書に選ばれたほどの作品で、蒼く伸びやかな水彩で描かれた おじさんの傘のお話は みなさんご存知の本だとは思います。
六月も近くなり、なんだか雨が降ることが多いこの頃・・・雨がふった日の保育園の帰り道 みずたまりを見つけてはびちゃびちゃになりながら楽しそうな息子が口ずさむのは、かって 自分も確かめた あのメロディー。
「あめが降ったら ポンポロロン♪あめがふったら ピッチャンチャン♪」
本来、傘は雨の日に濡れないように使うための道具ですが、黒くて立派な傘が大事なおじさんは いそぐ雨の日はしっかり抱いて走って帰り、雨がやまないときは知らない人の傘にはいり、大雨の日には家にこもりきり・・・
だって「かさが濡れるから」!!
けれども ある日公園で出会った小さな男の子と女の子の雨の唄が気になって とうとう傘を開いてしまうのです。
見開きで大きく描かれたこのシーン。
ついに おじさんのココロが開かれた場面でもあります。
役割を受け入れ、あるがままの現状を楽しむには ちょっとの勇気やきっかけが必要かもしれません。
まちへ出ると、いろんな人たちがいろんな傘に長靴で歩いていて、雨のはねる音が上から下からいっぱい聴こえてきます。
おじさんの そのシーンのニヤリとしたうれしそうな顔といったらありません。そして家に帰ったおじさんは最後に「ぐっしょり濡れたかさもいいもんだ かさらしいじゃないか」と満足げに呟くのです。
傘は 使われて、初めて「傘」になりました。いくらきにいったものであっても 本来の目的をみうしなってしまっては 意味がないのではないでしょうか。
あめが降るといつもの景色が変わります。反射し 歪んで 光って・・・いつもと違う雨の匂いや雨の音がします。
雨でなければ出会えない虫も、雨が降ったあとにできる虹も、雨の日にしか味わえない輝きがあります。
おじさんはきっと これから雨のたびにあのメロディーを口ずさむことでしょう。
おじさんのかさ
2007/04/07 05:31
ロンドンのジェントルマンのようなおじさんの大切なかさ。初めてさしてみたら…繰り返しがなんともたのしい!
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆうたのーと - この投稿者のレビュー一覧を見る
小学一年生の教科書に載っているおはなし。長男がはじめて「よみきかせ」してくれた本です。
正確には音読しているのを聞いたんですけどね。
車で運転している最中だったので、字や絵は見られません。
純粋に耳から入ってきたおはなし。だからなおさらおもしろい。
先を知りたくて「それで、それで?」なんて声に出して聞いてしまいました。
おじさんが持っている黒くて細くてぴかぴか光ったつえのようなりっぱなかさ。
おじさんはでかけるときはいつも、このかさを持っていきました。
雨がふってもおじさんはかさをさしません。なぜなら「かさがぬれるからです。」
この繰り返しに大笑い。かなり徹底しているんですよ、おじさんったら。
おじさんはかさを見てうっとりとしてしまうほど。でも使わないんじゃ宝の持ち腐れ。
だけどロンドンのジェントルマンみたいよね。こんながんこさもいいよね。
わたし、好きです、こういう人。
このおじさん、少年時代からこんなかんじなんでしょうね。
たとえば拾ってきた石ころを大切にながめては「うっとり」していたんじゃないのかな。…想像してみると、ますます可笑しい!
だけどついに使うときがくるんです!…そしてさらにうっとり。
教科書にも挿絵はあるのですが、絵本はどんなかんじなのだろうと、早速見てみました。
「この絵、あるよ」「これ(奥さんや女の子)はない!」と、長男と見比べてみるのもたのしい作業。
いちばん好きなのは、「とうとう おじさんは、かさを ひらいてしまいました。」
下から見上げた開いたかさがページいっぱいに描かれている場面。なかなか劇的です。
最後の奥さんのセリフもとても好きです。このおじさんのこと、ちゃ〜んと受け入れてきたんだな、ということがわかります。
今回の出来事を通じて、おはなしを耳から聞くってこんなにたのしいものなのか!と再発見しました。
自分で活字を追うより数倍はおもしろい。読んでもらう身になって、実感。
子どもたちが絵本読んで〜っ!と持ってくる気持ちがよーく理解できました。
それにできるだけ応えてあげよう。なにかやっていても手を止めて。
だってこんなにたのしめるんだもの!
それに「読んで」と言ってくるのも期間限定なんですよね。まるで授乳と同じ。
親子ともに、本を読む時間、暮らしを味わいつくしたい!
この絵本を介して、そんなことをあらためて思いました。