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5件
ジニのパズル
著者 崔 実
東京、ハワイ、オレゴンと、ジニは学校からたらい回しにされてきた。ホームステイ先で彼女は、五年前の出来事を語りはじめる。在日韓国人として生まれた、朝鮮語がわからないまま、過ごした朝鮮学校での日々。居場所を見つけられず、二つの言語の間で必死に生きるなか、あの日、テポドンが発射される。第59回群像新人文学賞受賞作。第155回芥川賞候補作。
ジニのパズル
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ジニのパズル
2019/04/18 02:01
ハイセンスでフレッシュな小説
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コピーマスター - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説家。若くしてとても才能があると思う。本当に。ちゃんと物語になっていて、それが物語られている感じ。換言すればセンスがよい。いい意味で若い。熱い。
最後まで読んでふと思ひ出すのは、文学が文学たる条件といふもの。たいへんベタな表現で気恥ずかしくもあるが、いはゆるひとつの「救済」のかたちがこの小説には確かにある。人生には選べるものと選べないものがある。変えられるものと変えられないものがある。選べないもの、変えられないものといふものは時にして残酷である。そのうえで、ひとりひとりの個が、ひとりひとりの未来を切り開いていくのが人生といふものだろう。そういふことに真面目に向き合っていく力がなにやらもりもり沸いてくる小説である。本書の読者は陰鬱な調子の話がラストに至ってすべてを爽快に吹き飛ばす光をそこに見ることだろう。単行本の時に気になっていたものの買いそびれて、でも気になっていて、結局文庫本が出て即買いして読んだ。読んでよかった。。それにしてもこの西村ツチカの装画はよいなあ。個人的には、装画に関しては、文庫本の鮮やかなほうが好みかな。
ジニのパズル
2023/08/01 15:12
どうして芥川賞が獲れなかったのだろうと思ったが
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1998年、日本の遥か上空を北朝鮮のロケット・テポドンが飛んで行った、その時、チョゴリの制服を着ていた朝鮮学校の生徒たちが唾をかけられる、制服を切られるといった被害を受けたという報道をテレビ、新聞で見聞きしたことは記憶にある、もし、今の様にSNSが盛んだった時代だったら、煽る人、影響を受けて声高にヘイトクライムを繰り返す人で収拾がつかなくなってしまってたかもしれない、遠い国の出来事にさえ思っていたこれらの事件をこの小説は思い出させてくれた、オレゴンであまり友達もない東洋人の女の子の静かな日常のお話と思っていたら、金親子の肖像を窓から投げ捨てるというお話になってびっくり、どうして芥川賞を獲れなかったのかなと思っていたら、同じ回に「コンビニ人間」がいた、それは無理だ
2023/05/05 07:12
「空を受け入れる」までになる、心が痛くて、でも強い強い物語。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の少女ジニは、中学から入った朝鮮学校に馴染むことが出来ない。
そんなある日、テポドンが発射される。
制服のチマ・チョゴリを着て池袋を歩いていたジニは、見知らぬ男達に、いわれのない暴力を振るわれてしまう。
どこにも、その悔しさ、理不尽さをぶつけられぬジニ。
学校を休み悩み抜いて出した結論。それは教室に飾られた「あの肖像画」を教室の窓から投げ捨てる事だった。
「空が落ちてくる」と、そのどうしようもない閉塞感を感じた少女が、友との対話の中で「空を受け入れる」までになる、心が痛くて、でも強い強い物語。