出世と恋愛 近代文学で読む男と女
著者 斎藤 美奈子
「青春とは何か」とは男女ともに簡単には定義できない命題だが、前提として必要なのは「精神的親離れ」である。しかし青春期は、自分の将来への不安に迷い、徐々に自分の世界を見つけるが、同時に好きな人ができる時期でもある。
日本の近代文学の主人公である青年たちは、恋を告白できず片思いで終わるケースが多い。たまに恋が成就しても、ヒロインは難病や事故などで、なぜか死ぬのだ。日本の男性作家には恋愛、あるいは大人の女性を書く力がないのではと著者は喝破する。
たかが文学の話ではないかと思うなかれ、近代文学が我が国ニッポンの精神風土に落としている影は思いのほか深い。
明治期の立身出世物語が青年たちの思想に与えた時代背景は見逃せない。同時に戦争が文学に与えた強い影響も。
しかし夏目漱石『三四郎』から20年、女性作家の宮本百合子『伸子』で、「新しい女性」が恋愛や結婚に縛られない「生きる価値」を見つける時代が近代にも到来する。男女ともに時代の変遷とともに成長するのだ。
近代文学で描かれた男女の生き方は、現代日本の「人生の成功と恋愛」にかける人々の思いを読み解く大いなる鍵となる。
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出世と恋愛 近代文学で読む男と女
2023/06/30 07:17
出世も恋愛も
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おどおどさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
からっきしダメな自分だが、ドロドロしたものを見ることは好きなので、この本でいろいろと楽しみたいと思う。近代文学はリアル感があってなお楽しい。
出世と恋愛 近代文学で読む男と女
2023/09/17 06:47
愉快痛快、でもいまだに生きてるロマンチックラブ幻想にちとヒヤリ
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:***** - この投稿者のレビュー一覧を見る
斎藤美奈子さんが伐りまくる近代の名作文学に出てくる恋愛下手青年と死んじゃうしかない女たち。儒教縛りに家制度、立身出世に聞く耳持たず。何しろクニの初めから、女が先に声をかけたカップルからは障害のある子が生まれたなんて言う厳重な差別で縛り上げられているこの国。今からの私たちはどんな物語を生きて書いて読んでいけるのだろう。
出世と恋愛 近代文学で読む男と女
2023/08/23 13:08
斎藤美奈子節で斬る近代文学論
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本近代文学の名作と呼ばれる青春小説、恋愛小説を明治の『三四郎』から昭和の『伸子』まで、斎藤美奈子氏がお決まりのパターンを浮き彫りにし、美奈子節で斬っていく近代文学論。読んだことがあるものもないものも、解説ありなので、楽しめる。突っ込みつつ読める。また昔読んだ文学を読んでみたくなる。