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7件
亡国のイージス
著者 福井晴敏
在日米軍基地で発生した未曾有(みぞう)の惨事。最新のシステム護衛艦《いそかぜ》は、真相をめぐる国家間の策謀にまきこまれ暴走を始める。交わるはずのない男たちの人生が交錯し、ついに守るべき国の形を見失った《楯(イージス)》が、日本にもたらす恐怖とは。日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞をトリプル受賞した長編海洋冒険小説の傑作。(講談社文庫)
亡国のイージス(下)
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亡国のイージス 上
2005/07/23 20:59
顔亡き国家と。。。まさにその通り。
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:R2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
スパイものといってしまえば、それまで。。
そういえば、
十数年前、フリーマントル、フォーサイスを
愛読していたなーと思い出した。
日本防衛政策について物申す。
顔亡き国家と。。。
まさに、その通り。
「こちらが攻撃しないが限り、あなた方は機関銃1発たりとも
本艦に直撃させることはできない。そして我々が攻撃を開始
すれば、<うらかぜ>は反撃する間もなく沈む。」
まさに、その通り。
ロックオン時代の専守防衛。。。って何?
戦争したいわけではない。
誰でもそう。
ただ、今の日本の国防装備はどおなのと。
経済摩擦のためだけに、
アメリカ製の高価な装備を買ってるだけでしょ。
ただ、買ってるだけ。。。
おつきあい防衛政策かと。
やるべきことがわからない。
すすむべき道が定まらない。
まさに、亡国。。。
本気で装備しちゃうと、
使いたくなる(人がいつかでる)ので、
戦時下になるかともちょっと思う。
地球温暖化における異常気象や、武装、テロ。
滅びるために、生きているのかもしれない。。
なぁんてね。。。
ドキドキわくわくで、面白かった。
亡国のイージス 上
2004/02/04 15:42
右にも左にも。
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:川内イオ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「絶対行かせません。絶対止められます」
数日前、夜TVを見ていると、自衛隊のイラク派兵に反対するデモを
取材したニュースの中で、マイクを向けられた20代前半ほどの
女性が、「派遣は止められると思いますか」という、傍から見れば
デモをバカにしたような質問に、はにかみ顔でこう答えていた。
…長閑だ。私は溜息交じりの欠伸をして、床に就いた。
『亡国のイージス』は、日常という薄っぺらな表舞台とはかけ離れた、
日本・朝鮮・アメリカ、各国の闇に蠢く権謀術数を描いた作品である。
アメリカが研究開発の過程で生み出した、核を凌ぐ威力を持つ物質。
その物質の存在が、沖縄で起きたある爆発事故から明らかになる。
そしてその物質は、腐臭を放つ祖国を真の理想国家に再建するという
使命に燃え、組織を超えて暴走する北朝鮮工作員の手に落ちる。
工作員は、その物質を究極の交渉カードにして、
祖国の体制を崩壊させるために日米が画策した謀略を公式の場で
明らかにさせ、世界に衝撃を与えることで、祖国に居座る売国奴の
排除と、そのための同士の蜂起を画策する。
その「脅迫」に利用されたのが、戦域ミサイル防衛構想(TMD)に
端を発する、海上自衛隊全護衛艦イージス化計画の、一番艦として
ミニ・イージス・システムを搭載した護衛艦いそかぜであった。
信じるものをことごとく失い、狂気を宿す北朝鮮工作員。
息子を亡くし、自分自身をも見失ういそかぜ艦長。
家族に去られ、艦を奪われ、己の存在意義を自問する先任伍長。
特殊工作要員として、いそかぜ奪還の使命を負った孤独な自衛官。
いそかぜは、国家に対抗する意思を持った革命兵器として、
しかしその腹の底に自沈の可能性を内包したまま東京湾に進行する。
私は、『亡国のイージス』に掛け値なしに没頭した。
寝る時間を削って本を読んだのは、いつ以来だろう。
この本が放つ緊張感はありきたりのミステリーや
クライムノベルのものとは明らかに異質である。
そして、その異質な緊張感の正体は「危機感」にあると思い至った。
『亡国のイージス』は様々な問題を提起する。
自衛隊とは? 国家とは? 戦争とは? 平和とは?
政治とは? 国民とは? 情報とは? 命とは?
正義とは?
デモを欠伸で迎える私にも、デモに笑顔で参加する彼女にも、
共通するのは「危機感のなさ」ではなかっただろうか。
放蕩人生を歩む私も、珍しくそんなことを考えさせられた。
亡国のイージス 上
2004/11/30 21:20
惰眠を糾弾する諦念
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KOMSA - この投稿者のレビュー一覧を見る
“日本のトム・クランシー”福井晴俊の渾身作である。
この小説は男性向けだと思う。
夥しい兵器の描写や戦闘シーンなど、
それだけでひいてしまう読者もいるだろう。
しかし、この小説に横たわるのは、
人間として生きていく為には何が大切な事なのか
という作者の諦念なのだ。
防衛やテロに対して国民や政治家や官僚は惰眠を貪っていると、
福井晴俊はエンターテインメントの側面で糾弾する。
第一章を読んで涙が溢れた。
何故かはここで語らずにおくが、
作者はこのエピソードを記したくて、
この小説を執筆したのではないかと思われるほどだ。
阪本順治監督により防衛庁全面協力で映画も撮影中と聞く。
ある時期、ゴジラ映画は自衛隊のプロパガンダに堕してしまった。
イラク派兵の期限も決まらない中で、
この作品がただ格好よく自衛隊を描くだけでない事を祈りたい。