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7件
亡国のイージス
著者 福井晴敏
在日米軍基地で発生した未曾有(みぞう)の惨事。最新のシステム護衛艦《いそかぜ》は、真相をめぐる国家間の策謀にまきこまれ暴走を始める。交わるはずのない男たちの人生が交錯し、ついに守るべき国の形を見失った《楯(イージス)》が、日本にもたらす恐怖とは。日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞をトリプル受賞した長編海洋冒険小説の傑作。(講談社文庫)
亡国のイージス(下)
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亡国のイージス 上
2002/10/12 17:23
知らなかった自衛隊問題
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はな - この投稿者のレビュー一覧を見る
大抵の日本人が考えていないと思う自衛隊問題を扱った作品なので、
読んでいて納得したり、疑問に思ったりしたことが多かった。
学生の時、自衛隊問題をすこし勉強しますが、その存在の是非については何も考えなかった。
戦争には絶対反対だし、選挙やスキャンダルがある度に他国を攻めて、国民の目をそらしたり、共感を得ようとする国なんて最低だとは思うけれど、その最低な国に守られて、それに自覚のない私達はそれ以下なのかもしれない。
自分の国は自分で守らなくては、一人前の国家といえず、被保護国の事情に左右される日本の政治もしょうがないことなのかもしれない。
本当はどこの国も軍隊がなくなれば、どこの国も戦争を止めてしまえば自衛隊の問題も根本から消えてなくなるし、世界も平和になるのかも。
2016/12/05 21:51
期間限定価格!破格です
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コルダ - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなビッグタイトルが電子書籍100円で読めるなんて感激です。福井晴敏先生の作品は読んだことがありませんが、年末年始で読みたいです。
亡国のイージス 上
2005/05/21 22:11
ここにある傲慢、無批判な日本礼賛に呆然とするのは私だけだろうか。なにが惰眠だ、この平和は戦争では得ることはできないのだ、小泉総理よ息子をタレントにするなら、まずイラクに送ってみろ
32人中、31人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸川乱歩賞受賞作「Twelve Y.O.」を読んだとき、その考えの底の浅さと、文章表現の未熟さ、人間の捕らえ方の一方的なことなどについて、この作家の年齢や経歴などまでも引き出して全否定をした。実は、それに近い反応をした人はかなり多く、例えば佐野洋なども推理日記で不快感を表明している。
だから、この本が評判になっても手にする気にならなかった。前作の酷さを例に挙げ、遠慮した。ところが、この本を後日、佐野洋が推理日記で褒めていた。別人のようだ、と書いてあったかどうかは忘れたが、前作の記憶があったので、なかなか読まずにいて、というところは私と同じ。で大絶賛。あの佐野さんがである。
もうひとつ、この本に手を出すのを躊躇わせる要素がある。それはタイトルからも分かるとおり、この本、わが国の国防について扱っている。これが嫌なのだ。日本人が、世界の厳しさを認識していない、国会の議論は何だ、自衛隊とは何なのか、言いたいことはご尤も。にもかかわらず、日本人を信じることが出来ない。
この問題は原発と同じで感情論に流され、結局は現状容認、自民党政府だけがほくそ笑むというのが通常の構図だ。下手をすれば、一気に右傾化するくらいは当たり前の国。しかも、官僚を始めとした権力を握る老人たちが、それをてぐすね引いて待っている。簡単には乗りたくないのだ。個人すら、未だに確立していないこの国での国防や、国策論は本当に危険なのだ。だから読まずに来た。
暴力団と手を組んで、祖父を殺し財産を奪った実の父親。中学生の自分に心を許し、彼の絵画に対する才能を見守っていた祖父の死に、如月行は復讐の鬼と化す。海上自衛艦の艦長で、人望が厚い宮津弘隆は、1人息子の隆を交通事故で失う。宮津のもとに現れた男は、その事故の陰に自衛隊の陰謀があったという。
宮津が艦長を務めるミサイル護衛官「いそかぜ」の先任警衛海曹仙石恒史は、突然の妻からの離婚の申し出に戸惑いながら、勤務に付く。彼らの船は、アメリカ主体の防衛構想にのっとった形で、ミニ・イージス艦に改装され、現在はそのための乗組員の教育が行われている。
彼らの行く手に墜落した旅客機。そこには、在日米軍が密かに開発し、あまりの危険さに自国内に保管することが出来ず、沖縄の米軍基地に保管されていた秘密兵器を強奪した北朝鮮の工作員が、武器とともに乗り組んでいた。
まず、文章がいい。浮ついたところが無い。しかも、籠められた情報量たるや生半可なものではない。だから、読み飛ばすことが全く出来ない。そして、ここには日本が戦後、目を瞑り、誤魔化し、そして制度として破綻をきたしている政治や国防についての熱い怒りがある。それを押さえ込んで、小説にしている。それが、重い。
江戸川乱歩賞受賞作と、この作品の間には、驚くべき溝がある。情報を完全に自分のものにしているのが凄い。だから、情報小説やシミュレーション小説といった悪い印象は全く無い。武器の一つ一つの描写、ミサイルの飛行ひとつとっても、素人を沈黙させる説得力がある。
だから、この本を読むのに一ヶ月もかかってしまった。特に全体の4分の3に関しては、絶賛に諸手を上げて同意する。しかし、しかしだ、この北朝鮮に対する蔑視は何だろう。いや、アメリカに対する軽視も訳が分からない。それだけではない、何だこの結末は。これでは東宝の戦争映画ではないか。最後の日本礼賛、現行の無条件に近い肯定、一体前半の怒りに満ちた筆は何処に行ってしまったのだろう。
愕然である。少なくとも後半は蛇足だ。じつは、これがこの国の持つ国防論の限界なのだ。むしろ、私は船戸与一が見せる銃撃の後の、やりきれない静けさ、絶望の中にこそ真の人間の救いと未来を見る。何度も書くが、ここには鼻持ちなら無い外国蔑視、日本礼賛がある。私は、この作品の根底にある倣岸を認めることは無い。