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90件
S&Mシリーズ
著者 森博嗣 (著)
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。
有限と微小のパン THE PERFECT OUTSIDER
05/08まで通常1,375円
税込 963 円 8ptワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
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すべてがFになる The perfect insider
2009/06/08 19:07
科学を好きになるミステリィ
21人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にゃーる - この投稿者のレビュー一覧を見る
(1)読もうとしたきっかけ
大学に入学した頃、通学時間が往復5時間と長時間であったため読書時間にしよう思った。
どんな本がいいだろうかと考えていたとき、大学の同学部同学科の友人がこの本の作者である「森博嗣」さんを薦めてくれた。
「森博嗣」さんの作品は多くがシリーズということだったので、まずシリーズ1作目(実は4作目?)の本書を読むに至った。
(2)内容
主人公:N大助教授・犀川創平(さいかわそうへい)
女子学生・西之園萌絵(にしのそのもえ)
主人公らが偶然訪れた島にある研究所で天才工学博士が殺害される。
完全隔離された部屋での殺人――密室殺人であったこと、また、
殺害現場のパソコンのディスプレイには「すべてがFになる」というメッセージが残されていたことから、謎は深まる。
犯人・密室トリックを推理していくストーリー。
(3)登場人物
・犀川先生、萌絵共に強烈的個性のある人物。
物理、数学の知識量が多い先生に、暗記・計算に強い萌絵。
科学要素が強く出ている人物だけに、ストーリー展開も常に科学と隣り合わせ。
あまり深く考えすぎるとこっちの頭がパンクしてしまうので、「ああこういうものなんだな」と適当に流すことも必要。
とにかく天才的な2人が主人公ということで、非現実的でおもしろい。
・同じ科学人間でも、先生と萌絵は真逆の性格をしている。
おっとり?まったり?ゆっくり?している印象を受ける先生と積極的に事件に関わろうとする萌絵。
真逆の2人の会話だからこそ面白みがあるのかもしれない。
(4)本書を読み終えたら…
森博嗣さんの推理小説は大体ほとんど“理系ミステリィ”と称される。
実際、本書でも理系用語はモリモリ出てきた。
先生と萌絵の会話も理系ならではの観点が多く、読んでいて大変面白く、興味深い。
先生と萌絵が主人公のシリーズはS&Mシリーズとして全10冊ある。
全て読んだが、やはり本書を読み終えたときの感動は一番大きかったと思う。
ただ、シリーズを通しての面白さも十分あるため、シリーズ全巻をオススメしたい。
有限と微小のパン The perfect outsider
2009/01/19 16:36
舞台に幕を引く
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
萌絵の幼なじみ塙理生哉が社長を務めるナノクラフトの招待で、テーマパークを訪れた三人。空港で偶然再会した島田文子から、目的地で死体が消失するという不可思議な事件が起きていたことを聞かされる。そして実際に萌絵たちは死体が腕だけを残して消えてしまう現場を目撃する。犀川や萌絵を観客と見立てたように次々と起きる事件。その背後に見えるあの天才の影。いったい誰が何のために事件を引き起こしているのか?
シリーズを通して1話完結の形式を取りながら、作品構成としても、作中人物達にしても、それぞれに関連性を持ちながら全体として1つの作品群を作り上げたと言える。これをなしえた理由の一つとして、シリーズを一貫する思想の存在が挙げられるだろう。
すなわち、謎の全てに常に解答が用意されているわけではない、と言うこと。そして、読者は事件の直接的な観測者にはなりえないと言うこと。だからこそ、どこまでが事実でどこからが作中人物の意見なのかを見極め、解くべき課題設定を行い、事実に基づく仮定を組み立て、事実との突合せをする必要が出てくるのだ。
今はもうない Switch back
2009/01/12 21:13
認識のすり合わせ
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
避暑にやってきた笹木は、散策中に西之園のお嬢様に遭遇する。自分の別荘に戻りたくないと言う彼女を、仕方なく滞在中の別荘に連れてきたのだが、その晩に、双子姉妹が密室で死体が発見されるという事件が起きる。笹木の視点で描かれる事件後の人々。繰り出されるトリックの数々。事件の真相は?
シリーズ5作までは自己に内在する論理の発露としての事件だったのに対して、6作以降は他者から見た自己の認識に対する干渉としての事件に移り変わっているように思える。
シリーズはそれぞれ完結して事件間のつながりは全くないのだけれど、それぞれの作品が後の作品の伏線として機能している部分もあり、とても面白い関係性だと思う。