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煉獄姫
著者 著者:藤原 祐 , イラスト:kaya8
現世のひとつ下の階層に位置する異世界【煉獄】。そこに満ちる大気は有害であり、一方で人の意志に干渉して森羅万象へと変化する性質を持っている。 瑩国第一王女であるアルテミシアは、その【煉獄】へ繋がる扉を身の裡に孕む特異体質の持ち主だった。常に毒気を身に纏い近寄る者をすべて殺してしまうが故、普段は呪われた子として城の地下牢に幽閉されている。 しかし彼女は時折、外の世界へ出る。 王家の密命を受けた戦士── 煉獄の毒気を操り戦う【煉術師】として……。
煉獄姫 六幕
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煉獄姫 2幕
2011/03/21 21:46
残された強い感情が引き起こす事件
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
王弟リチャードに呼び出されたフォグは、煉術師ギルドを統括する組織・レキュリィの宴が彼を呼びだしていること知らされる。そこにいたのは、フォグと出自を同じくする、ローレン・エヌ・コーンフィールドが生み出したホムンクルスの妹だった。
一方、アルトの前には、前回の事件で友だちとなり、そして自ら葬り去ったはずの少女キリエが現れる。彼女にも意外な正体があった。そんなキリエは、フォグに恨みを持つ煉術師イパーシ・テテスを蘇らせ、アイリス・キャリエルの生み出した魔剣の一振り、アイリスの4番を与える。
キリエとイパーシ、それぞれが持つ他者への固執の念が、再び匍都に事件を巻き起こす。
なくしたり振り払った気がしていても、人間の芯に残る記憶はあって、無自覚な行動を支配するのかもしれない。今回の事件の根底にはそういったものだろう。そしてもたらされる結果は、無自覚ゆえに深く突き刺さって、致命的なものになりやすい。
こういったことを突き詰めて描きすぎると、陰惨になりすぎたりしやすいと思うのだが、今回は楽しめる範囲で止められていると思う。
今回の事件は収まったけれども、その裏側で動いていた人物、そして今回の事件で壊れてしまった人物が次にどんな仕掛けをして来るのか。その目的は何なのか。まだまだ楽しめると思う。
煉獄姫 4幕
2015/08/25 13:51
戦いの前の序曲
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
アルテミシア・パロ・ラエの妹であり瑩国第一王女のマーガレットの婚約者となる悳国第二王子ディードの暗殺計画を防いだものの、アルトとフォグには課題が残った。彼らの欠点を補い、そして互いの能力を生かすよう、わがままで他人の存在を意識したことのなかったアルトも変わり、日々、フォグとの特訓に励んでいる。
一方、瑩国に対する陰謀を企てる勢力は、互いに連絡を取り合い、協力して攻撃を実行する段階にまで達していた。法王庁の奇跡認定局に身を寄せるキリエは、ユヴィオール・カタシェレティスと図り、瑩国の貴族やその信者たちを襲い始める。ただし、彼らにはそれぞれの思惑があるのだが…。
全く防ぎようもなく、徐々に被害を拡大していく状況の中、王弟リチャードにも打つ手がない。フォグもただ待ちの状況で、焦りが募るばかり。そんなとき、レキュリィがある大胆な策を提案する。
本格的な戦いを始めるための準備的な陰謀の様子が描かれる。ゆえに、前半は派手さには欠けるかもしれないが、見えないところからじわじわと忍び寄ってくる気持ちの悪さと、互いに思惑を持ちながらも表向きは協力体制を取る攻撃者の様子、そして普通の人間が人外に落ちていく過程などが描かれる。
そしてそれがひとつの成果に結実するのがラストだ。明らかに次巻に続く良い場面で終わってしまっているのが気を持たせてくれる。
煉獄姫 1幕
2010/08/07 21:01
19世紀英国風ファンタジー
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
19世紀のイギリスの様な舞台設定。煉獄と名付けた違う世界から様々な物質を引き出す煉術が発展しつつある世界。本来なら第一王女として表舞台に立てるはずだったアルテミシアは、その身の内に煉獄への扉を宿し、そこから染み出す毒気により周囲の生物をしに至らしめるため、その存在は隠され、地下での生活を強いられていた。
そんな彼女の側にいるのは、身の回りの世話をするメイドのイオと、煉獄への完全な耐性を持つフォグという少年騎士のみ。アルテミシアとフォグの二人は、王宮付きの煉術師として、王と自分たちのの立場を守るため、様々な事件に駆り出される。
一見するとアルテミシアの特異性に目がいくが、自分の毒が自分に害をなさないのはよく考えれば普通で、そうではないのに完全な耐性を持つフォグの方が不思議。この謎は、物語の進展を通じて解き明かされる。
ヒロインを王女にすることで、物語の中心を煉術というファンタジー要素だけでなく、それを核とする政治にも関係することができるようにした感じがする。だから、技術を駆使した戦闘だけでなく、煉術というもの自体にもスポットライトがあてられるのだ。